「君子豹変」とは
「君子豹変」という言葉の意味を、正確に知っているという人はあまりいないかもしれません。漢字を見て、なんとなく意味を推測できるという人も、正確な意味や使い方を一緒にチェックしていきましょう。
「君子豹変」は「君臣は豹変す」の四字熟語。まずは「君臣は豹変す」の意味を紹介します。
「君子豹変」とは「君臣は豹変す」のこと
君子(くんし)は豹変(ひょうへん)す
読み方:くんしはひょうへんす
《「易経」革卦から》君子は過ちを改め、善に移ることが際だってはっきりしている。俗に、態度や考えが急変するたとえにもいう。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「君子」は、学識と人格がともにすぐれた立派な人を指します。「豹変」は、人の態度や性行がガラリと変わることの意。本来はよい方へ変わることに用いる言葉でしたが、現在はよくない方へ変わる場合に用いられることが多いでしょう。
「君臣豹変」「君子は豹変す」は「自分の過ちを認めてよい考えを取り入れ、よりよい態度になる」ことと、「考えや主張、態度がガラリと変わる」という意味を持ちます。
言葉の由来
「君子豹変」の由来とされるのが、中国の書物『易経』です。これは占いに使われていた本であり、儒教の古い経典の一つ。登場する言葉は現代にも受け継がれ、活用されています。
この中にある「君子豹変、小人革面、征凶」という一節があります。これは「君子は過ちをあらためて、善に移るのがきわめてはっきりしている。しかし、小人(度量や品性に欠ける人)は、外面のみ変わる」という意味。この一節から、「君子豹変」が使われるようになりました。
「君子豹変」はどう使う?
ここからは「君子豹変」の使い方を見ていきましょう。どのようなシチュエーションで使うのかをイメージしながら、使い方をチェックしてみてくださいね。「相手をほめるとき」と「相手を非難するとき」に分けて紹介します。
相手をほめるとき
相手をほめるときに、「君子豹変」を用いる場合を見ていきましょう。例文を紹介します。
《例文》私が上司を心から尊敬する理由の一つに、「君子豹変」の精神で業務に取り組まれているということがあります。私も見習って、上司のような人になりたいです
立場が上になったり、地位が上がったりすると、自分の過ちを素直に認めてあらためるということがなかなかできないというイメージがありませんか? だからこそ、それができる人がいかに素晴らしいかわかりますよね。
例文では、そんな上司を持つ部下の思いを表現しています。心から尊敬できる上司に出会えた部下は、とても幸運と言えるでしょう。
相手を非難するとき
相手を非難する意味でも「君子豹変」を使うことができます。どのような使い方をするのか、例文を見ていきましょう。
《例文》あなたの能力の高さは評価するけれど、その「君子豹変」なところはどうかと思うよ
意見や主張、態度がコロコロと変わる人がいると、周囲は振り回されがちです。周りのことを考えず、急に態度を変えるのは考えもの。また、行き当たりばったりで仕事をしていると、非難の要因になりやすいでしょう。
例文は、能力は高いけれど、態度をコロコロ変える人に忠告するさまを表しています。注意や忠告をしてもらえたら、よい意味で「君子豹変」する自分でいたいですね。
使い方の注意点
紹介した使い方からわかるように、「君子豹変」は「ほめる」「非難」両方の意味で使える言葉です。そのため、使う際のシチュエーションはしっかりと見極めたいですね。
「豹変」という言葉のイメージから、悪い意味で捉える人もいるかもしれません。その点を意識して、使うようにしてください
「君子豹変」と似た言葉
「君子豹変」と似た言葉を見ていきましょう。「大人虎変」と「手のひらを返す」の2つを紹介します。
「大人虎変」
すぐれた人は、時代に合わせて常に自己改革するという意味を表すのが「大人虎変」です。読み方は「たいじんこへん」。この言葉も、『易経』が由来とされているんですよ。
「大人」とは、徳がある人格者のこと。地位の高い人を表すこともあります。「虎変」は、明らかに変化することを指す言葉。「君子豹変」と近い意味を持つと言えるでしょう。
《例文》「大人虎変」というように、偉大な人ほどあっさりと自分の過ちを認めて言動をあらためる
「手のひらを返す」
言葉や態度などが、ガラリと変わることを表す「手のひらを返す」。「手の平を返す」「手の裏を返す」ということもあります。
「昨日と今日ではまったく言うことが違う」「親切だったのがいきなり冷淡になる」といったことを表す場合に使える言葉です。「手のひらを返すような態度」「手のひらを返して言うことが違う」のように用いられています。
《例文》やさしい人だと思っていたのに、手のひらを返すような態度にがっかりした
「君子豹変」と反対の意味を持つ言葉は
「君子豹変」と反対の意味を持つ言葉を紹介します。「言うことが変わらない」「考えや方針を貫き通す」ことを表す3つの言葉を見ていきましょう。
「首尾一貫」
方針や考え方などが、はじめから終わりまで変わらず、筋が通っていることを表すのが「首尾一貫」です。読み方は「しゅびいっかん」。制作や行動に対しても用いられています。「首尾一貫した論理」「首尾一貫している」のように使うことが多いでしょう。
《例文》彼の首尾一貫した論理は説得力があり、感心するばかりだ
「終始一貫」
「終始一貫」が示すのは、態度や状態などが、はじめから終わりまでずっと変わらないこと。「しゅうしいっかん」と読みます。「首尾一貫」の類語であり、使い方もほぼ同じと考えていいでしょう。
《例文》彼女の主張は終始一貫していて、やはり信頼できる人物であると思いました
「貫徹」
「貫徹」とは、意志や方針、考え方などを貫き通すという意味を持ちます。読み方は「かんてつ」。最後までくじけずに続けるという意味でも使われる言葉です。「初志貫徹」「要求を貫徹する」のように用いられます。
《例文》私のモットーは「初志貫徹」。簡単には諦めません。
最後に
「君子豹変」について、意味や由来、使い方などをまとめました。もともとは「自分の過ちを認めてよい考えを取り入れ、よりよい態度になること」の意味で使われていましたが、現代では「よくない方向へ態度や考えを変える」の意味で用いられることも。このことを意識し、「君子豹変」の使い方には注意を払いたいですね。
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