「破れ鍋に綴じ蓋」とは
「破れ鍋に綴じ蓋」という言葉をご存知ですか? 「パートナー」との関係を表しますが、見ただけでは何を意味するのか想像できませんよね。本記事では「破れ鍋に綴じ蓋」について、意味や使い方などを探ります。まずは、辞書で調べた意味を一緒に見ていきましょう。
意味
破れ鍋に綴じ蓋
読み方:われなべにとじぶた
破損した鍋にもそれ相応の蓋があること。どんな人にも、それにふさわしい伴侶があることのたとえ。また、両者が似通った者どうしであることのたとえ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「綴じ蓋」とは、壊れたのを修繕した蓋(ふた)のこと。破損してしまった鍋であっても、相応に合う修繕した蓋があるという意味が転じて、誰にでもふさわしい伴侶があることや、その伴侶となる人は、似たもの同士であるということを表します。
「伴侶」とは、一緒に連れ立って行く者のこと。配偶者をイメージする人が多いかもしれませんが、仲間という意味も含みます。また、昔は「伴侶」というと妻を指しましたが、現在は夫と妻どちらについても使うと考えてください。
なお、「綴じ蓋」を「閉じ蓋」と表記するのは誤り。書き間違えないようにしたいですね。
「破れ鍋に綴じ蓋」の使い方
「破れ鍋に綴じ蓋」の使い方を紹介します。特徴や例文、「破れ鍋に綴じ蓋」を使う際の注意点を見ていきましょう。
使い方の特徴
「破れ鍋に綴じ蓋」は、基本的に自分たちのことを指して使うことが多いでしょう。謙遜のニュアンスが強いため、自分や身内以外のことに用いることはほとんどないと言えます。
使い方としては、自分たちのことを指して「破れ鍋に綴じ蓋ということ」「破れ鍋に綴じ蓋の関係」のように表現することが多いでしょう。パートナーや仲間との相性、関係性などを表す際に使うと考えてください。
例文
「破れ鍋に綴じ蓋」を使った例文を紹介します。使い方を把握する参考にしてくださいね。
《例文》パートナーとは揉めることもあるが、「破れ鍋に綴じ蓋」の言葉通り、お互いに相性のよさを感じている
どれだけケンカになっても、心の中では「この人は自分に合っている」と感じていることを表す一文です。日本では、自分のことを他人に話す際、謙遜することが多いですよね。パートナーについて「欠点は多い人だけど、私にはちょうどよい」と表現する場合に、たとえとして「破れ鍋に綴じ蓋」を用います。
《例文》結婚するなら、私に合う人がいい。理想は「破れ鍋に綴じ蓋」の関係です
例文は、結婚するなら自分と相性のよい人がいいという願望を表しています。相手に望むことはそれぞれ異なりますが、相性のよさは必須と言えるかも。似たもの同士であり、自分にふさわしい相手がよいと考える人は多いでしょう。
会話でも使える
会話でも「破れ鍋に綴じ蓋」を使うことがあります。会話での使い方を見ていきましょう。姉妹で、自分の両親について話しているとイメージしてください。
姉「うちの親って、本当によくケンカするのに、一緒にいたがるよね」
妹「あれだけ文句を言っているのに、旅行も二人で行くしね」
姉「仲が悪いのかいいのかわからないと思っていたけど、結局は相性がいいんだよ」
妹「まさしく、破れ鍋に綴じ蓋の関係だね」
ケンカは多いけれど、結局は相性がいい、つまり仲の良い両親であることがわかる会話例です。逆を言えば、彼女たちの両親は、ケンカするほど仲がいい関係性と言えるでしょう。
使う際の注意点
意味からもわかるように、「破れ鍋に綴じ蓋」は謙遜のニュアンスを含む言葉です。そのため、他の人のことを表すのには適しません。
たとえば招かれた結婚式で、新郎新婦に向かって「破れ鍋に綴じ蓋のようにピッタリな相手だね」と告げても、相手はほめられたと思えないでしょう。このことから、基本的には自分たちや身内のことに対して謙遜の意味で使う言葉だと考えてください。
「破れ鍋に綴じ蓋」の類語は
「破れ鍋に綴じ蓋」の類語を見ていきましょう。いくつかピックアップして紹介します。
「蓼食う虫も好き好き」
蓼(タデ:植物)の辛い葉を食う虫もあるように、人の好みはさまざまであるということを表す「蓼食う虫も好き好き」は、「破れ鍋に綴じ蓋」と似た意味を持ちます。どのようなクセがあっても、好きになる人はいるということを表現する言葉です。「たでくうむしもすきずき」と読みます。
「牛は牛連れ馬は馬連れ」
同類は自然と集まりやすいことを表す「牛は牛連れ馬は馬連れ」。似たもの同士が集まると、調和が取れてうまく行くことのたとえとして使われています。「うしはうしづれうまはうまづれ」と読みます。
「似た者夫婦」
夫婦は互いに性質や好みが似るということを表す「似た者夫婦」。また、そのような夫婦を指すこともあります。
人との関係を表すことわざ
「破れ鍋に綴じ蓋」のように、人との関係を表すことわざは他にもあります。いくつかピックアップして紹介しましょう。
「馬には乗ってみよ人には添うてみよ」
馬のよしあしは乗ってみなければわからず、人柄のよしあしはつきあってみなければわからないという意味を表すのが、「馬には乗ってみよ人には添うてみよ」です。何事も自分で直接経験してみようということを示します。読み方は「うまにはのってみよひとにはそうてみよ」。
「縁は異なもの味なもの」
「縁は異なもの味なもの」とは、男女の縁はどこでどう結ばれるかわからず、不思議でおもしろいものであるということの意。縁とは常識を超えたものであるという意味も持ちます。読み方は「えんはいなものあじなもの」。意外なところで思わぬ縁が生まれたり、予想だにしない形で人とつながったりすることを表現したい場合に使える言葉です。
「御前百までわしゃ九十九まで」
夫婦が、共に元気で長生きできるようにとの願いを女性の立場から言ったことを表す言葉です。「御前」は夫、「わし」は妻を指すとされており、この言葉のあとに、「共に白髪(しらが)の生えるまで」と続きます。
最後に
「破れ鍋に綴じ蓋」について、意味や使い方、似た言葉などを紹介しました。夫婦やパートナー、仲間との関係を表すこの言葉は、自分たちのことについて述べる際に使うことが多いでしょう。謙遜のニュアンスを含むことや、「欠点」の意味合いがあることから、他の人に対して使うのは避けるのが無難。使い方を誤らないようにしたいですね。
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