「自然淘汰」とは
スピーチなどで使われている「自然淘汰」という言葉。最近はビジネスシーンでも登場しますよね。しかし、この言葉の正しい意味を調べたことがない人は多いのではないでしょうか?
この言葉の由来は、「進化論」で有名なダーウィンだとされています。意味や使い方とともに、由来も見ていきましょう。
意味を確認
【自然淘汰】読み方:しぜんとうた
[名](スル)
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
1:「自然選択」に同じ。→人為淘汰
2:時の経過とともに、優良なものが生き残り、劣悪なものがひとりでに滅びていくこと。「俗悪な雑誌は—される」
「淘汰」とは、簡単に言うと「選択」のこと。不適当なものや不必要なものを除き去り、よいものを取ることを指すと考えてください。「自然淘汰」は、時間の経過とともに、自然と選択がされていくことを意味すると言えるでしょう。
意味の「1」の「自然選択」についても見ていきましょう。
「自然選択」の意味と由来
【自然選択】読み方:しぜんせんたく
生物の生存競争において、少しでも有利な形質をもつものが生存して子孫を残し、適しないものは滅びること。ダーウィンが品種改良で行われる人為選択(人為淘汰)から類推して提唱。自然淘汰。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「自然選択」はダーウィン(Charles Robert Darwin:イギリスの博物学者)が発表した進化論で主張した言葉。英語のnatural selection(ナチュラル・セレクション)を日本語訳にしたのが、「自然選択」「自然淘汰」にあたります。厳しい自然環境において、環境に適合したものが生存し、その他は滅びたことを示しています。
「人為淘汰」って?
「自然淘汰」「自然選択」の意味にもある「人為淘汰」。この言葉についても意味を調べてみました。
【人為淘汰】読み方:じんいとうた
動植物の個体群の中から、人間の役に立つ形質をもつ個体を選んで交配し、その形質を一定の方向に変化させること。家畜や作物の品種改良に用いられる。人為選択。→自然淘汰
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「人為淘汰」とは、「自然淘汰」「自然選択」の対義語にあたります。自然に選択されるのではなく、人工的に生物の品種改良を行い、目的にかなった固体だけを選んで残すことを指すと考えてください。
食べ物や植物などは、実際に「人為淘汰」が行われることがあります。
「自然淘汰」の具体的な使い方
ここからは「自然淘汰」の使い方を見ていきましょう。特徴や例文を紹介します。
特徴は?
「自然淘汰」という言葉は、競争や生き残りなどに関連して使われることが多いでしょう。生物はもちろん、企業や技術、文化、人に対しても用いられています。ビジネスシーンや学術的な場面以外に、日常で使うこともあるでしょう。話し言葉と書き言葉、どちらで用いても問題ありません。
言い回しはさまざまですが、「自然淘汰される」「自然淘汰されない」「自然淘汰だ」「自然淘汰により」といった使い方をすることが多いでしょう。
例文をチェック
具体的な使い方を例文で見ていきましょう。3つ紹介します。
《例》時代に対応できない企業が消えるのは、ある意味自然淘汰だろう
「自然淘汰」はビジネスシーンにおいてもよく使います。企業や技術が主語になることがあれば、人が主語になることも。例文は、スピーディーに変化する時代に適応できない企業は、自然と消滅していくという考えを表現しています。
《例》自然淘汰により生き残った生物は、運がよかったのだ
長い歴史の中でくりかえされてきた生存競争に勝ち残ったのが、今いる生物たち。さまざまな理由で生き残ってきたわけですが、ざっくり言うと、例文の示す通り「運がよかった」のかもしれませんね。
《例》知らない間に辞めた彼は、仕事ができない上によく嘘をついていた。ある意味これも、自然淘汰なのかもしれない
環境に適応できないと生き残れないのは、人間の社会も同じですよね。例文は、人に対して「自然淘汰」を使った一文。生存競争が厳しいのは、社会も自然も同じです。
「自然淘汰」に似た言葉
ここからは「自然淘汰」に似た言葉を紹介します。それぞれの言葉の意味と、「自然淘汰」とのニュアンスの違いをチェックしてください。
「適者生存」
「適者生存」は、生存競争で環境にもっとも適したものだけが生き残り、子孫を残すことを指す言葉。イギリスの哲学者であり、社会学者でもあるスペンサー(Herbert Spencer)による造語「survival of the fittest」を日本語訳した言葉で、「てきしゃせいぞん」と読みます。「自然淘汰」と意味が近いので、言い換えの際に使うことができるでしょう。
《例文》華やかに見える世界ほど、適者生存が厳しい
「優勝劣敗」
力の強い者が勝ち残り、劣っている者が負けることを意味する「優勝劣敗」。特に、生存競争で強者や適者が栄え、弱者や不適応者が滅びることを表す際に使われます。読み方は「ゆうしょうれっぱい」。
この言葉も「自然淘汰」と似ています。言い換えの表現として、把握しておくといいかもしれません。
《例文》毎年たくさんの人が起業するけれど、生き残るのはわずか。ビジネスは優勝劣敗の世界と言えるだろう
「弱肉強食」
「弱肉強食」とは、弱者が強者の犠牲になることの意。強い者が弱い者をえじきにして栄えることを表す言葉です。読み方は「じゃくにくきょうしょく」。自然のことだけでなく、勝負やビジネスに関連することでも使われています。
この言葉は「自然淘汰」と少しニュアンスが異なります。「自然淘汰」には犠牲の意味は含みませんので、その点は注意したいところ。言い換えの際は、違いを意識することをおすすめします。
《例文》ビジネスも自然界も弱肉強食の世界。残酷で見ていられないことがある。
「自然淘汰」の英語表現
ダーウィンの唱えた言葉でOK
「自然淘汰」を英語で表現する場合は、ダーウィンが唱えた「natural selection」を使うといいですね。例文を見ていきましょう。
《例文》Living things continue to evolve through natural selection.
→生き物は自然淘汰により進化し続けます
最後に
「自然淘汰」について、意味や語源、言葉の使い方などを紹介しました。ダーウィンの進化論が語源とされるこの言葉は、学術的な場面以外に、ビジネスシーンでもよく使われています。「自然淘汰」はある意味残酷な面もありますが、その流れは止められないことが多いかもしれません。
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