許せない怒りに駆られたり、途方もない悲しみに襲われた時、あなたはどうしますか? 気持ちに任せて感情をぶちまけるという方もいらっしゃるかもしれませんね。そんな方には「隠忍自重」を知っていただきたいです。本記事では、その意味や読み方、自分を律する名言を紹介します。
「隠忍自重」の読み方と意味は?
「隠忍自重」は、「いんにんじちょう」と読みます。「いんにんじじゅう」とは読みません。意味は、怒りや悲しみをじっとがまんし、自分の行いを慎んで、軽々しく動かないこと。
「隠忍」は、苦しみを外部に表さないで、じっと耐え忍ぶことを言います。または、本当の気持ちを心に秘めて、こらえ忍ぶこと。目立たずに控えめな態度をとることを意味します。「自重」は、言動を慎んで、軽はずみなことをしないこと。感情や衝動を抑え、冷静かつ理性的に行動すること。
「隠忍自重」という言葉は、他人に対して謙虚であることや、感情や行動を適切に抑えることが重要であるという考え方を表していると言えます。
ビジネスにおいては、怒りっぽくならず、状況に応じて適切な態度を保つことが求められますね。「隠忍自重」を心に留め置くことで、自分の感情の暴走や他者への影響を最小限に抑え、良好な人間関係を築くことができるでしょう。
「隠忍自重」の例文は?
「隠忍自重」はどんな使い方をするのでしょうか。ここでは3つ紹介します。一緒に見ていきましょう。
1:組織内で対立が起きた時、隠忍自重して冷静に問題解決に取り組んだおかげで、今の成功がある。
組織の中では様々な対立や葛藤が生じることがあるでしょう。気持ちを抑えることができず、たった一度の無謀な行動で、人生を棒に振ってしまうこともあります。自分の感情に振り回されることなく、冷静に対処することが大事です。
2:彼女は彼の浮気に怒り、隠忍自重できず、おろかな行動に走ってしまった。今はとても後悔しているようだ。
相手のことを想えば想うほど、裏切られた時の悲しさや悔しさは怒りへと向かってしまうのではないでしょうか。そんな時でも、一時の自分の感情に振り回されないように。気持ちを落ち着かせて対応しましょう。
3:彼は部下の失敗に対して、直ちに叱責するのではなく、隠忍自重して手を差し伸べた。
部下に対して怒りや失望が芽生えるのは、相手に期待しているからこそではないでしょうか。言いたいことをグッとこらえ、相手が何でつまずいたのか、冷静に見極めることが大切です。部下の成長には、上司の理解と理性的な行動が必要と言えるでしょう。
「隠忍自重」の類語
「隠忍自重」に似た意味を持つ言葉はいくつかあるようです。ここでは読み方と共に2つ解説しましょう。
1:克己復礼(こっきふくれい)
自制して礼儀を守るようにすることを言います。「克己」は自分の感情・欲望・邪念などにうちかつこと、「複礼」は礼をふむこと。自分の気持ちを抑えて、慎んだ行動をとるという意味合いでは、「隠忍自重」に似た言葉と言えるでしょう。
2:自戒自重(じかいじちょう)
自分の衝動や欲望を自分の意志で抑え込むことを言います。「自戒」は自分の言動を自分で戒め慎むこと。おごり高ぶらないように自戒する、という使い方をします。こちらも自制した行動をとることを表す言葉として「隠忍自重」と似た意味を持ちますね。
「隠忍自重」の対義語
「隠忍自重」と反対の意味を持つ言葉も読み方とともに紹介。これを機に覚えておきましょう。
1:軽挙妄動(けいきょもうどう)
深く考えずに、軽々しく行動すること。軽挙妄動を戒める、という使い方をします。「軽挙」は軽はずみな行い、「盲動」は考えもなくむやみに行動すること。「隠忍自重」とは、正に反対の行動と言えるでしょう。思いつきや軽はずみな行動は慎むようにしたいですね。
2:短慮軽率(たんりょけいそつ)
考えもなくむやみに行動することを言います。「短慮」は考えが浅はかなこと、また、思慮の足りないこと、「軽率」は物事を深く考えずに軽々しく行うこと。あれこれ考えず、思い切って行動することが必要な時もありますが、後悔しないように、一旦立ち止まってみることも大事です。
自分を律する名言
人生において成功するためには、より所となる心構えが必要なことも。今回は、自分を律する名言を四字熟語で紹介します。
1:万能一心(まんのういっしん)
何事をするにも一心にしなければならない、また、あらゆる芸能に通じていても、一つの真心がなければ役に立たない。万能よりも一心が大切、そこから転じて、真心を込めてすることを言います。どんなことでも、心を込めて取り組むことが大事ですね。
2:初志貫徹(しょしかんてつ)
最初に思い立った志を最後まで貫き通すこと。耳なじみのある四字熟語ですね。「貫徹」とは、意志・方針・考え方などを貫き通すこと、最後までくじけずに続けることを言います。一度立てた目標やゴールは、最後までやり遂げたいものですね。
3:精励恪勤(せいれいかっきん)
任務や職務などに一所懸命に勤め励むこと。「精励」は、勉学や仕事などに精を出して、励むこと、「恪勤」は、怠けずに真面目に勤めることを言います。自分に与えられた任務や目標に対して、前向きに真摯に取り組むことが、成功への道しるべになるでしょう。
最後に
本記事では「隠忍自重」について解説しました。怒りを感じた時やこらえきれない悲しみにおそわれた時、自分を抑えきれなくなることもありますよね。そんな時は、「隠忍自重」を思い出してみるといいかもしれません。どんなことがあっても自分の感情を表に出さず、冷静に対処することは、優れたビジネスパーソンの心構えの1つと言えるのではないでしょうか。
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