「三位一体」という四字熟語を聞いたことはありますか? あまり日常生活で馴染みのある言葉ではないため、どういう意味なのかよくわからない人も多いでしょう。本記事では、「三位一体」の使い方や言い換え表現についても詳しく解説します。
「三位一体」の読み方と意味
「三位一体」は「さんみいったい」と読みます。意味は、「三つのものが一つになること。また三者が心を合わせること」。
ここで豆知識。三位を「さんみ」と読むのは日本の古くからの習慣で、連声(れんじょう)といわれる、発音しやすくするための音の変化です。平安時代などで貴族の位を従三位(じゅさんみ)と言ったりするのを聞いたことがあるのでは? 現代ではこの習慣はほぼなくなり、三位はそのまま「さんい」と読むようになりました。
キリスト教における「三位一体」とは?
「三位一体」は、意外にもキリスト教を語源とする言葉。もともと三位とは、父(神)・子(キリスト)・聖霊(神と子をつないでいる存在)のことで、ひとつの神が3つの姿となって現れたもの、つまり元来は一体であるとする教理です。
三者が合体して神となるのではなく、聖書における唯一神が3つのペルソナ(人格、位格)を持って現れている、という点で、四字熟語の「三位一体」とはニュアンスが異なりますね。
使い方を例文でチェック!
「三位一体」は、ビジネスシーンをはじめ政治や日常生活などさまざまな場面で使われます。三位が表す3つのものも決まりがないので、状況によって使い分けることができますよ。
1:「ヒット商品を送り出すには企画開発部・営業部・広報部が三位一体となる必要がある」
ビジネスにおける「三位一体」の例文です。企画・開発した新しい商品を浸透させるには、当然、マーケティング力が大きくものを言いますよね。
2:「このプロジェクトではライバルであるはずの3人が三位一体で行動してくれている」
普段はライバルとしてしのぎを削っている3人が、ここぞというときに団結してくれるのは、会社にとってもとても心強いことでしょう。
3:「考え方がまったく違うのだから三位一体の行動は無理だろう」
3人で団結して事に当たってほしいけれど、そうはうまくはいかない、という意味。「三位一体」というのはなかなか難しいようです。
4:「産学官が三位一体となって研究を推進しています」
よく産学連携といわれますが、それは産業界(民間企業)と大学などの研究機関のこと。これに官公庁を足して「三位一体」です。国にとって有意義な新しい技術の開発や新事業の創出、莫大な時間と予算のかかる基礎研究などは、産学官が一体となって推進している例が少なくないようです。
5:「学校・地域・家庭が三位一体となって子どもをサポートしよう」
こちらは教育における「三位一体」の例文です。
6:「三位一体の連携プレーが実に鮮やかだったね」
たとえばパス回しなど、3人それぞれが見事な技をみせ、結果、得点や勝利に結びついた、というようなイメージの例文です。
7:「ランチは甘い・辛い・酸っぱいの三位一体が魅力のタイ料理にしましょう」
トムヤムクンに代表されるタイ料理は、甘い・辛い・酸っぱいが調和した味わいが魅力です。ほかにも、香り・味わい・食感、味覚・嗅覚・視覚、煎りたて・挽きたて・淹れたて、などさまざま組み合わせで使えます。
類語や言い換え表現は?
ビジネスや人間関係において、別々のものがひとつになる、心や力を合わせる、という意味を持つ言い換え表現を紹介しましょう。
1:一心同体(いっしんどうたい)
「三位一体」の類語として親しみがある言葉は「一心同体」でしょう。意味は、「2人以上の人が心をひとつにして行動すること」。たとえば「あの夫婦は一心同体だ」と仲の良さを表現したりします。ビジネスシーンでも、「チームが一心同体となってプロジェクトを成功させよう」などのように使うことができます。
2:渾然一体(こんぜんいったい)
「渾然一体」は、「すべてのものが溶け合ってひとつになる様子」。渾然は「溶け合って区別がない」ことで、さらにそれらが調和している状態を表します。例として、「映像と音楽が渾然一体となった舞台」「山や川が渾然一体となった風景」などの表現があります。
ビジネスでも、「社員が渾然一体となって売上目標を達成しよう」のような使い方をします。混然一体と書き間違えをしやすいので注意しましょう。
英語表現は?
「三位一体」はキリスト教の教えがもとになっています。その宗教的な意味を持つ名詞が、「trinity」。ビジネスシーンでも応用でき、たとえば「We work together as a trinity.」「私たちは三位一体となって働きます」のように表現できます。
また「三位一体の」(形容詞)は、「triune」これを使って、「We will be triune on this project.」「私たちは三位一体でこのプロジェクトに取り組む」という表現もできます。
どちらの例文も、それぞれの人格を持つ3人が心を合わせて取り組むという意味になります。
最後に
四字熟語といえば仏教や中国の古典に由来するものが多いなかにあって、「三位一体」はキリスト教に関連する珍しい例。宗教的なことはよくわからなくても、「三本の矢」や「三人寄れば文殊の知恵」のように、3人、あるいは3つのものや組織が団結することが大きな力になるという考え方は、洋の東西を問わず共通しているようです。
ビジネスにおいても、三位一体になることで乗り切れることは多そうですね。
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