「あの2人また喧嘩か。見ていてハラハラするね」。そういう同僚や友人、カップルがいたら、「犬猿の仲」な間柄といえます。どうして不仲を象徴する言葉なのでしょうか。本記事では、「犬猿の仲」の意味や由来、英語表現や類義語を紹介します。
「犬猿の仲」の読み方と意味は?
「犬猿の仲」の読み方は「けんえんのなか」です。何かにつけて、いがみ合っているような、仲の悪い関係を表します。単に仲が悪いだけでなく、取っ組み合いの喧嘩に発展してしまうような間柄の例えです。
単なる喧嘩や意見の違いよりも、より深い対立や葛藤を指すことが多いと言えます。仕事で、異動した時や、新しいプロジェクトが立ち上がった時、メンバーを見ると、犬猿の仲のマネージャーがいた、となればやる気がなくなってしまいますね。
しかしながら、ビジネスにおいて、仲がいい悪いは仕事を進める上では関係ありません。成果を収めるためには、個人的な感情は横に置き、目の前の職責を全うすることに集中しましょう。
「犬猿の仲」の由来は?
童話「桃太郎」の中では、キジと共に鬼退治をする仲間なのに、仲が悪い象徴になっているのはなぜでしょうか。諸説あるようです。その中から3つ紹介しますので、一緒に見ていきましょう。
1:干支の順番争い
今では誰もが知っている十二支ですが、昔、十二支が神様への挨拶を巡って、動物たちが競い合いをしたそうです。これにより多くの動物たちが神様の所を目指しました。
犬と猿は、最初は仲良く神様の所を一緒に目指していたのですが、途中で喧嘩をしてしまいます。その喧嘩の仲裁に入ったのが鳥だったのですが、喧嘩が収まらず、仲裁に入ったまま神様の所に着いたため「猿」「鳥」「犬」という、間に鳥が入る順番になりました。
これがきっかけとなり、犬と猿はお互い顔を見合わせれば、喧嘩するようになり、「犬猿の仲」の由来となった説になります。
2:狩猟での犬と猿の出会い
昔は猟師が山へ猟をしに行く時、一緒に犬を連れて山へ入ることが当たり前でした。猟の最中に、山の中で猿に会うことはしょっちゅうのこと。猿は縄張り意識が強いので、山の中に入ってきた犬に対して、激しく威嚇をします。それを見た猟師が「犬と猿は仲が悪いのだ」と思ったことが、「犬猿の仲」の由来となったという説です。
3:戦国時代の大親友の「犬」と「猿」
動物のエピソードではない説もあります。豊臣秀吉と前田利家はご存じの方も多いはず。豊臣秀吉のあだ名は「猿」で、前田利家の幼名は「犬千代」。2人はとても仲がよく、お互い「猿」「犬」と呼ぶ間柄だったそうです。2人は尾張出身で昔から「尾張の言葉はきつい」と言われています。
この2人が普通に会話をしていても、他国の人から見ると、2人がいつも大喧嘩をしているように見えたそう。「犬と猿はいつも喧嘩をしている」、それが「犬猿の仲である」と言われるようになったのが由来だという説です。
「犬猿の仲」の英語表現
「犬猿の仲」の英語表現も見ていきましょう。「仲が悪い」「いがみ合っている」という意味合いで用いられる表現には、「猫と犬」(cats and dogs)を引き合いに出している例えがあります。これを機に覚えてみてください。
1:fight like cats and dogs
「激しく口論する、喧嘩する」という意味です。「They always fight like cats and dogs.」(彼らはいつも喧嘩している)
2:lead a cat-and-dog life
「(夫婦が)喧嘩ばかりして暮らす」という意味です。「That couple lead a cat-and-dog life, constantly arguing over small things.」(その夫婦は犬猿の仲で、いつも些細なことで口論をしている)
「犬猿の仲」にならないカップルの特徴
好きな人といる時は、穏やかに過ごしたいもの。「犬猿の仲」にならないカップルには、共通の特徴があるようです。
1:共通の目標や興味を持っている
一緒に過ごす時間だけでなく、共通の目標や興味を持つことが挙げられます。共に成長し、お互いの夢や目標をサポートし合うことで、関係がより深まると言えるでしょう。共通の趣味があると、ストレスを軽減し、リフレッシュする効果も。日常生活の中でのプレッシャーや疲れを忘れ、楽しい時間を共有することで、ストレスも和らぐのではないでしょうか。
2:オープンでコミュニケーションが円滑
「犬猿の仲」にならないカップルは、お互いに素直に感情や意見を伝えることができるといえます。相手の立場を理解し、話し合いを通じて誤解や対立を解決。そうすることで、健全な関係を保て、喧嘩をすることもほとんどありません。
3:対立を冷静に解決する
対立が起きたときには、冷静に話し合い、問題解決に取り組むのも「犬猿の仲」にならないカップルの特徴です。感情的になることなく、なぜそうなるのか、問題の原因を明確にし、一緒に解決策を見つけ出します。より充実したパートナーシップを築いていくでしょう。
「犬猿の仲」の類義語
ここでは、「犬猿の仲」と似た意味を持つ類義語を例文と共に、2つ紹介します。
1:水と油
水と油が互いに溶け合わないように、性質が合わず、しっくり調和しないこと。異なるもの同士の相性が合わずに、反発しあったり、関係性が悪い様子を表します。
・彼女たちは姉妹でも水と油で、会えばいつも喧嘩になる。
・部長と課長は水と油で、意見が揃わず、いつも現場が困惑している。
2:不協和音
不調和な関係の例え。双方の関係に不和が生じている様子を意味します。
・チーム内で不協和音が生じているので、プロジェクトに遅れが出てきた。
・おしどり夫婦だったあの2人は、彼の浮気が原因で、不協和音が生じた。
最後に
「犬猿の仲」について解説しました。仲が悪い人同士を例えて使う、よく耳にする言葉ですね。気が合わない人もいますが、できれば、円滑に人間関係を構築していきたいもの。まずは、自分から話しかけ、心をオープンに相手とコミュニケーションをとるように心がけましょう
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