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「毒を食らわば皿まで」とは
「毒を食らわば皿まで」という言葉を見て、どんなイメージを持ちますか? 「毒を食べる」の意味すら想像がつかないという人もいるでしょう。
本記事では「毒を食らわば皿まで」について、意味や似た言葉、使い方をまとめました。この言葉は会話でも使えますので、正しい意味や使い方を把握しておくといいですね。まずは意味や由来を見ていきましょう。
意味
毒(どく)を食(く)らわば皿(さら)まで
読み方:どくをくらわばさらまで
いったん悪に手を染めたからには、最後まで悪に徹しよう。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「毒を食らわば皿まで」を辞書で調べると、上記の意味を持つことがわかりました。「毒」は生命や健康を害するものを指しますが、この場合は「悪事」を表します。
毒入りの料理を食べたら、そのあとは死ぬことになるかもしれません。それなら皿まで食べ尽くしてやるという意味が転じて、いったん悪事に手を染めたら、それを途中でやめるのではなく、最後までやり通すことを表すようになったとされています。
由来
「毒を食らわば皿まで」の由来はわかっていません。歌舞伎や小説に登場しますが、どれが由来になるかは不明とされています。
小説家・丹羽文雄の著書である『菩提樹』に「毒をくわば皿まで」という一文があり、1955年の時点でこの言葉が存在したことがわかっています。
「毒を食らわば皿まで」と似た言葉
「毒を食らわば皿まで」と似た言葉を紹介します。
「濡れぬ先こそ露をも厭え」
「濡れぬ先こそ露をも厭え」とは、濡れる前は露でさえ避けるが、いったん濡れてしまうと、いくら濡れてもかまわなくなることの意。一度過ちを犯すと、もっとひどい過ちを平気で犯すようになることをたとえる際に使われています。読み方は「ぬれぬさきこそつゆをもいとえ」。
「毒を食らわば皿まで」と似た意味を持つので、言い換える際に使うことができます。
《例文》私の半生を言葉にするなら「濡れぬ先こそ露をも厭え」。なぜあんなにひどいことばかりしたのか、毎日後悔している
「毒を食らわば皿まで」の使い方:特徴と注意点
「毒を食らわば皿まで」の使い方を見ていきましょう。まずは特徴と注意点を紹介します。
特徴
「毒を食らわば皿まで」を使うのは、悪事に手を染める、つまり悪いことをはじめたとき、もしくは、悪に手を染めようとしているときが多いでしょう。
たとえば、不正を行うと、それを隠すために嘘を重ねたり、さらに不正をしたりする必要が生じますよね。いったん悪事に手を染めると、そこから抜け出るのは容易ではありません。「毒を食らわば皿まで」はそのことを教えてくれていると解釈できます。このことから、「毒を食らわば皿まで」は戒めの言葉として使うことが多いでしょう。
また、悪事に手を出したことを後悔する際に用いることもあります。
注意点
「毒を食らわば皿まで」は、その言葉のイメージから、嫌いな物を食べる際に使うと思われることがあります。たとえば、嫌いな食材がおかずに入っていたときに、「毒を食らわば皿までと覚悟して食べた」のように使うのはNG。誤用となりますので、注意してください。
「毒を食らわば皿まで」の使い方:例文
ここからは「毒を食らわば皿まで」の具体的な使い方を見ていきましょう。例文を紹介します。
《例文1》一瞬心が揺れ動いたが、「毒を食らわば皿まで」という言葉を思い出し、踏みとどまることにした
何かしらの誘惑に一瞬惑わされたけれど、「毒を食らわば皿まで」の意味を思い出して手を出さなかったことを表す一文です。「毒を食らわば皿まで」は、戒めの言葉として使うことが多いでしょう。よくない誘惑にかられた際、思い出すといいのかもしれません。
《例文2》「毒を食らわば皿まで」と覚悟して不正に手を染めたが、今あるのは後悔だけだ
不正をする際に覚悟を決めたのに、残ったのは後悔だけということを表す例文です。悪事に手を染めてしまうと、最後は何も残らず、ただただ後悔する羽目になることがわかりますね。
「毒」と関連する慣用句
「毒を食らわば皿まで」にもある「毒」と関連する慣用句を紹介します。さまざまな表現がありますので、ぜひチェックしてください。
「聞けば気の毒見れば目の毒」
「聞けば気の毒見れば目の毒」とは、知らないでいればそれで済むことも、見たり聞いたりすれば欲望が起こって心身の害になることを意味します。読み方は「きけばきのどくみればめのどく」。知ることはいいことばかりではないことを表す言葉といえるでしょう。
《例文》「聞けば気の毒見れば目の毒」というから、SNSを見るのは必要最低限にとどめるようにしている
「毒にも薬にもならない」
害もなく役に立つこともないという意味で使われているのが「毒にも薬にもならない」です。邪魔になることはないけれど、たいして役に立つこともないということを表す際に用いられています。「どくにもくすりにもならない」と読みます。
《例文》彼女は自分の活動を大々的にPRしているが、実際は毒にも薬にもならないようだ
「毒を以って毒を制す」
「毒を以って毒を制す」とは、悪を除くのに、他の悪を利用することのたとえ。「どくをもってどくをせいす」と読みます。解毒をするのに他の毒を用いるという意味ですが、これが転じて、悪人を滅ぼすのに他の悪人を使うことや、難病を治すために強力な薬を使うことをいいます。
《例文》治療法はあるけれど、毒を以て毒を制すで、かなり強力な薬剤を使うようだ
「毒気を抜かれる」
びっくりさせられて呆然となることや、度肝を抜かれることを「毒気を抜かれる」と表します。読み方は「どくけをぬかれる」。予想外の相手の行動や話に気がそがれるさまを表現する場合に用いられています。
《例文》彼女はよく嫉妬されるが、対応が上手く、相手は毒気を抜かれるようだ
最後に
「毒を食らわば皿まで」について、意味や似た言葉、使い方をまとめました。いったん悪に手を染めたからには、最後まで悪に徹するということを意味します。しかし視点を変えると、悪事にかかわることの危険性を表しているとも解釈できます。一度悪事に手を染めると、抜け出すことが難しくなるという現実は確かにありますよね。悪事にかかわることを警告する言葉といえるでしょう。
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