店の看板や張り紙などで、「千客万来」の文字を目にしたことはありませんか? なんとなく縁起のいいイメージのある言葉ですが、具体的にどんな意味なのかあまりよくわからないという人が多いかもしれませんね。本記事では、「千客万来」の意味や使い方、商売繁盛などの類語を解説します。
「千客万来」の意味
「千客万来」は、一般的には「せんきゃくばんらい」と読みますが、「せんかくばんらい」という読み方もあります。意味を辞書でみていきましょう。
入れ替わり立ち替わり、多くの客が来ること。せんかくばんらい。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
たくさんのお客さんが次々と来ることを「千客万来」と言います。「千客」は、多くのお客さん、「万来」は、たくさんの人が来ることを表します。どちらもたくさんの人という意味があるので、2つの言葉を組み合わせることで、ひっきりなしに人がやってくるという意味が強調されますね。
使い方を例文でチェック!
「千客万来」は、商売の祈願や店の客入りについて話すときに使われます。ここでは、「千客万来」おなじみの場面を3つ紹介します。
1:週末のグルメイベントは大盛況で、千客万来の忙しさだ。
企画したイベントは大盛況だった場合、このように表現することができますね。店の前にたくさんの行列ができていたり、イベントが入場待ちになっているなどの状態は、まさに「千客万来」といえるでしょう。多くのお客さんで会場が溢れかえっている様子がイメージできますね。
2:今日は千客万来で、食事をする暇もなかったよ。
お客さんがひっきりなしに訪れるので、店員は休む暇もないということですね。「千客万来」はいろんな職種で使うことができますが、中でも飲食店でなじみのある言葉です。食事を終えたお客さんが帰り、次のお客さんが入ってくることが繰り返されることが、「千客万来」のイメージと重なるからかもしれませんね。
3:新規オープンした寿司店の千客万来を祈った。
「千客万来」は、商売をする人がお店の繁盛を祈願する時に使われることも多いです。千も万もお客さんが来ますようにと縁起を担ぐ言葉ですね。ビジネスを始める前に、千客万来のご祈祷を受けたり、店の中に招き猫や恵比寿様などの商売繁盛の置物を置くなど、日本に古くからなじみのある慣習ですよね。
類語や言い換え表現は?
たくさんの人が来て、縁起の良さも併せ持つ言葉は他にもあります。ここでは3つの類語を見ていきましょう。
1:商売繁盛
「商売繁盛(しょうばいはんじょう)」を辞書でみていくと、
商いがうまくゆき、大いに利益を得ること。「―の秘訣(ひけつ)」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
となります。飲食店や小売店では、神社で商売繁盛を祈願したり、店に招き猫を飾る店も多いですよね。特に新しく商売を始める時や、売り上げが不調な時などには、商品がたくさん売れて、儲かるようにと縁起を担ぐことは現代でも多く行われていますね。
(例文)
・父は初詣で、商売繁盛と家内安全を毎年祈願している。
・海外の観光客が来て、うちの土産屋は商売繁盛している。
2:満員御礼
ニュースや広告などでもよく目にする「満員御礼」は、もともと大相撲の本場所で入場者が一定の人数に達した時に出す言葉なのだとか。現代では、相撲に限らず、イベント会場や演芸場、サッカースタジアムなどで人が一杯来た時に「満員御礼」を掲げられますね。
(例文)
・そのアニメは大ヒットして、映画館は毎日満員御礼の状態だった。
・福袋を買うお客様が殺到して、本日は満員御礼でした。
3:門前市を成す
「門前市を成す」は、「もんぜんいちをなす」と読みます。意味は以下のとおりです。
門前に人や車馬が群がり集まる。権力や名声を慕い、出入りする者が多いたとえ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「門前市を成す」とは、門の前にたくさんの人が集まるように、多くの人が来訪すること。当人の地位や名声を慕って、教えを乞うたりする人々がひっきりなしに往来している様子です。
(例文)
・監督が引退するという噂を聞いて選手・関係者たちが門前市を成した。
・選挙に当選し、田中議員の家は、門前市を成す盛況ぶりだ。
対義語はある?
「千客万来」と反対の意味を持つ言葉に「門前(もんぜん)雀羅(じゃくら)を張(は)る」があります。意味を辞書で確認してみましょう。
《白居易「寓意」から》訪れる人がなくて、門の前には雀(すずめ)が群れ遊び、網を張って捕らえられるほどである。訪問する人もなく、ひっそりしていることのたとえ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「雀羅」とは、すずめなどの鳥を捕まえる網のこと。店に訪れる人もなく、閑散としている様子を表します。多くの人でごった返している「千客万来」とは全く異なる状況ですよね。
英語表現は?
四字熟語である「千客万来」の意味を、端的に表す英語表現はないため、「多くのお客さんが来る」「繁盛していて忙しい」という意味を英語で表現してみると良いでしょう。例えば、お店が忙しくて「千客万来で食事をする暇もなかったよ」と言いたい場合には、「I had so many visitors,I hardly had time to eat.」と言います。
また、他の店を見て、「あの店はとても繁盛しているね」と言いたい時には、「That store is always crowded with customers.(あの店は千客万来だ)」と表現することができますよ。ぜひ、参考にしてみてくださいね。
最後に
「千客万来」とは、入れ替わり立ち替わり、多くの客が来ること。お店やイベントなどにたくさんのお客さんが来て、非常に商売が繁盛している場面で使われる言葉です。昔から多くのお客さんを呼び込むために、商いをする人はいろんな祈願をしていたのかもしれませんね。日本らしい縁起のいい言葉として「千客万来」を覚えてみてください。
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