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2024.05.23

「心頭滅却すれば火もまた涼し」とは? 語源や類語となる四字熟語を解説

「心頭滅却すれば火もまた涼し」とは、「どんな苦難にあっても、無の境地に至れば苦しいとは感じなくなる」という意味。本記事では、言葉の意味や由来、使い方、類語となる四字熟語を解説します。

「心頭滅却すれば火もまた涼し」という言葉を聞いたことはありますか? 字面から、火の熱さを感じさせる激しい印象がありますが、一体どのような意味なのでしょうか。本記事では、「心頭滅却すれば火もまた涼し」の意味や語源、類語を解説します。

「心頭滅却すれば火もまた涼し」の意味

「心頭滅却すれば火もまた涼し」は、「しんとうめっきゃくすればひもまたすずし」と読みます。意味は以下の通りです。

無念無想の境地に至れば、火も熱くは感じなくなる。どんな苦難にあっても、それを超越した境地に至れば、苦しいとは感じなくなるものである。甲斐恵林寺の快川紹喜が織田信長に攻められ火をかけられた時に、この偈(げ)を発したという。

『デジタル大辞泉』(小学館)より引用

「心頭」とは、「心、心の中」。「滅却」は、「消し滅ぼすこと」。心がけ次第で、熱い火も涼しく感じられるという意味を持つことわざです。

「心頭滅却すれば火もまた涼し」の語源にはさまざまな説があり、1582年織田信長の勢力によって、甲斐(山梨県)恵林寺(えりんじ)の僧たちが、山門に追い上げられ火をかけられた時、この寺の快川禅師が法衣を着て、扇子を持って端座し、この言葉を発し焼死したといわれています。

また、中国・唐の時代に活躍した詩人、杜荀鶴(とじゅんかく)の漢詩『夏日題悟空上人院詩』に書かれている、「安禅必ずしも山水を須いず、心中を滅し得れば自ら涼し」という一文がもとになったという説も。「心を静かに座禅をするのに、山や川は必要ではない、心をひとつに集中させれば、たとえ火の中であっても涼しく感じる」という意味です。

字面を見ると、どうしても火や夏の暑さなどをイメージしてしまいますが、本来は無我の境地に達すれば、どんな場所であっても苦しいとは感じなくなるという意味を表しています。

(c) Adobe Stock

使い方を例文でチェック!

「心頭滅却すれば火もまた涼し」を会話の中で使うとしたら、どのように使うことができるのでしょうか? 主な例を3つ紹介します。

1:心頭滅却すれば火もまた涼しとはいうものの、やはり炎天下での作業は辛い。

「心頭滅却すれば火もまた涼し」は、無心になれば火も熱く感じなくなるという意味を持つことから、真夏の暑さに耐え忍ぶ際に使われます。ですが、日常生活でそのような境地に至ることは少なく、必死に作業に集中してはみるものの、結局暑さに負けてしまった… ということも多いですね。

2:大会前の合宿では、心頭滅却すれば火もまた涼しという通り、不思議と暑さが気にならなかった。

暑さで集中できないことがある一方で、何かに没頭している時は他のことが気にならなくなることもあるでしょう。特に大会や試合前で追い込まれている時などは、必要なこと以外は頭にないこともしばしば。「心頭滅却すれば火もまた涼し」の境地に至ることで、限界を突破することができるのかもしれませんね。

(c) Adobe Stock

3:大変な時期ほど、「心頭滅却すれば火もまた涼し」と思い、困難に立ち向かいました。

目の前に壁が立ち塞がった時に、自分を鼓舞する言葉として、「心頭滅却すれば火もまた涼し」を使うことができるでしょう。落ち着いて精神を統一することで、自分の実力を発揮し困難を乗り越えることができるかもしれません。

類語や言い換え表現は?

「心頭滅却すれば火もまた涼し」のように、心を集中させて困難に耐え忍ぶという意味のある言葉に、「明鏡止水」「無念無想」「堅忍不抜」があります。それぞれ微妙にニュアンスが異なりますので、詳しく意味を確認していきましょう。

1:明鏡止水

「明鏡止水(めいきょうしすい)」の意味を辞書で確認してみましょう。

《「荘子」徳充符から》曇りのない鏡と静かな水。なんのわだかまりもなく、澄みきって静かな心の状態をいう。「―の心境」

『デジタル大辞泉』(小学館)より引用

「明鏡止水」は、落ち着いていて静かな心の状態を指します。曇りのない鏡も止まった水も物事を正しく映すことから、転じて澄み切った心の状態を表すようになったとされています。

雑念がなく、物事に集中している様子が、「心頭滅却すれば火もまた涼し」と似ていますね。

(例文)
・座禅をすると明鏡止水の心境になっていくのを感じた。
・その僧侶は、明鏡止水の境地に達している。

(c) Adobe Stock

2:無念無想

「無念無想(むねんむそう)」の意味は、以下の通りです。

1 仏語。一切の想念を離れること。無我の境地に入り、無心になること。
2 しっかりした考えを持っていないこと。思慮のないこと。

『デジタル大辞泉』(小学館)より引用

1番目の意味が「心頭滅却すれば火もまた涼し」と類似しています。一点に集中し、無我の境地に入ることで余計なことを何も考えないようになることです。

(例文)
・無念無想で取り組んだことで、試験に合格することができました。
・ネガティブな考えが浮かんだ時ほど、無念無想を意識しました。

3:堅忍不抜

「堅忍不抜」は、「けんにんふばつ」と読みます。今は以下の通りです。

つらいことも耐え忍んで、どんな困難にも心を動かさないこと。「―の態度」

『デジタル大辞泉』(小学館)より引用

「堅忍」は、「辛抱強く我慢すること」。「不抜」は、「どっしりとして動じないこと」。この2つの熟語を組み合わせることで、どんな困難にも固い心で耐え忍ぶ意味合いが強まりますね。「心頭滅却すれば火もまた涼し」も、集中すればどんな熱さにも耐えることができるという意味なので、似たものがありますね。

(例文)
・どんな不幸にあっても、堅忍不抜の態度で耐え忍んだ兄を尊敬します。
・堅忍不抜の精神で受験を乗り越えたいと思います。

最後に

「心頭滅却すれば火もまた涼し」とは、心がけ次第で、熱い火も涼しく感じられるという意味を持つことわざです。本来は、無我の境地に至ることで、熱さを感じなくなるという意味ですが、日常生活では、夏の暑さや困難な状況に置かれている際に使われることが多いですね。壁にぶち当たった時は、このことわざを思い出して、果敢に挑戦してみてはいかがでしょうか?

TOP画像/(c) Adobe Stock

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