「衣錦之栄」の読み方と意味
「衣錦之栄」は「いきんのえい」と読みます。読み方からすでに難しいと感じる方もいるかもしれませんね。
「衣錦之栄」は中国からきた言葉ですが、明治や大正時代の小説に用いられるほど、古くから使われている四字熟語です。
「衣錦之栄」の意味は?
「衣錦之栄」は、「成長し、立派になった姿で故郷に戻ってくる」という意味です。「衣錦」とは豪華な着物のことを指し、成功したことを表します。故郷を出た時とは比べ物にならないほど立派な姿で、誇らしげに戻ってくる様子を表した言葉です。
「衣錦之栄」の由来は?
「衣錦之栄」は、先述のように中国の古い書物が由来です。中国・北宋時代、文学者で歴史学者でもあった欧陽脩(おうよう・しゅう)がまとめた「相州昼錦堂記」という書物に「衣錦之栄」がおさめられており、それが日本に伝わったとされています。
欧陽脩の書物には「衣錦之栄」以外にも多くの四字熟語や格言が優れた言葉としておさめられており、日本に伝わっているものもたくさんあります。
「衣錦之栄」を使った例文
「衣錦之栄」の例文としては、以下のようなものがあります。
・腕に高価な時計をつけている同級生を見て、衣錦之栄という言葉を思い出した。
「衣錦之栄」の類義語
「衣錦之栄」の類義語としていくつかの四字熟語が挙げられます。「衣錦之栄」だけではイメージしにくいかもしれませんが、類義語を知っておくと、正しい使い方を身につけることができます。
故郷へ錦を飾る
社会に出て大成し、遠く離れた故郷に立派な姿で帰ってくる様子を表した言葉です。「錦」は豪華な衣服や立派な身なりを指しますが、成長した心や風格、出世した様子などを衣服や身なりにたとえています。
衣錦還郷
「衣錦之栄」とほぼ同じ意味の四字熟語で、「いきんかんきょう」と読みます。「帰郷」という言葉が入っているように、「衣錦之栄」よりも、「遠く離れた故郷に長い歳月を経て戻ってきた」というニュアンスが強く込められている言葉ですね。
捲土重来
「けんどじゅうらい」または「けんどちょうらい」と読みます。一度敗北した者が、策を変えて戦いに戻り復讐を果たす」という意味の四字熟語です。
最初よりも成長した姿で帰ってくる、という意味では「衣錦之栄」と同じように使われますが、リベンジなど挑戦や闘いの意味が強い言葉でもあります。
「衣」を使った四字熟語5つ
「衣」は、日本人にとって身近な言葉であり、多くの四字熟語に使われています。「衣錦之栄」意外に、「衣」を使った四字熟語をご紹介します。
衣冠盛事
「名家や大富豪の子として生まれ、後継ぎとして事業をさらに発展させる」という意味の言葉で、「いかんせいじ」と読みます。事業を発展させた本人を表す言葉としても用いられます。「衣冠」は恵まれた生まれ育ちや豊富な財産を表し、盛事は「家業をさらに盛り立てる」という意味。
衣帯不解
「衣帯不解」とは着替えを一切しない、という意味。「いたいふかい」と読みます。不潔やズボラという意味ではなく、着替えのわずかな時間すらも惜しむほど専念・没頭する、という意味で、不眠不休などの言葉とも似通った意味で使われます。
衣鉢相伝
「衣鉢相伝」は「いはつそうでん」と読みます。もともとは「弟子が師匠から教えや奥義を受け継ぎ、ものにすること」という意味を持つ仏教の言葉です。これが転じて、親や先代の事業をそのまま受け継ぐことを表す言葉として使われるようになったそう。
「衣冠盛事」と意味がよく似ていますが、「衣鉢相伝」は教えや事業を受け継ぐ行為そのものがより重視されています。
衣食礼節
「衣食礼節」は、「住まいや食が満ち足りてこそ人としての礼節が身につく」という意味で「いしょくれいせつ」と読みます。書き下し文で「衣食足りて礼節を知る」と書かれることもあります。
礼儀や教養を身につけるためには普段の生活が大切だという、日本人らしい言葉ですよね。
一衣帯水
「一衣帯水」は「いちいたいすい」と読み、「さわれば届くほど密接な距離にある関係」という意味の四字熟語です。「衣帯」とは帯のことでひと筋の帯ほどの狭い川や水路を指し、細い水路によって隔てられた陸地が語源。「先生と私は一衣帯水の間柄だ」などのように、人と人との距離感を表します。
まとめ
「衣錦之栄」は立派な姿で故郷に帰ってくるというポジティブな言葉です。家族や古い友人の立身出世を称える意味を持つので、生まれ故郷を大切にする日本人らしい四字熟語ですね。
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コマツマヨ
WEBサイトライティングをメインに、インタビュー、コラムニスト、WEBディレクション、都内広報誌編集、文章セミナー講師など幅広く活動。