職場の会議などで、どのプランにするか迷っているときに、「どれもが一長一短で決めかねる…」などと表現することはありませんか? 字面からなんとなく意味を想像することができるため、改めて調べたことがある方は少ないかもしれません。
そこで本記事では、「一長一短」の意味や使い方、類語を解説します。ビジネスシーンでも登場する言葉なので、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか?
「一長一短」の意味
「一長一短」は、「いっちょういったん」と読みます。意味を辞書で確認してみましょう。
長所がある一方、短所もあること。「どれも実用化の点で―がある」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「一長一短」とは、いいところもあれば悪いところもあるという意味。どんなものでも、長所がある一方で短所もあるといったように、完全ではないさまを表します。文字通り「1つ長所があれば、1つ短所がある」という意味なので、字面から意味を把握しやすい四字熟語ですね。
使い方を例文でチェック!
「一長一短」は、ビジネスシーンから日常会話まで幅広い場面で用いられます。よくある使い方を例文で見ていきましょう。
1:就職先に悩んでいたら、父から「どんな会社にも一長一短があるものだ」と言われた。
「一長一短」は、「どんなものでもいい面もあれば悪い面もある」と、諭す場面で使われます。どんなに評判のいい会社でも、給料はいいけれど、残業が多いなどメリットもあればデメリットがあることも多いもの。全ての条件が整っている仕事は少ないよと、我が子に知って欲しいのかもしれませんね。
2:新規プロジェクトのリーダーを決めたいのだが、それぞれ一長一短で人選に迷う。
「一長一短」は、相手の短所が気になり、判断に迷っている場面でも用いられます。プロジェクトを成功させるには、トップに立つリーダーの力量が大きく影響するもの。「この人なら安心して任せられる」という人がいればすぐに決まりますが、そうでない場合は判断に迷うかもしれません。誰にでも長所があり短所があるため、慎重に審査したいですね。
3:彼はとてもかっこいいけれど、服装のセンスがいまいちなので一長一短だ。
見た目はとても好みだけれど、服装がいまいちで残念だということですね。恋愛において恋人に求める条件は人それぞれ。容姿端麗である反面、女癖が悪いなど、メリットもあればデメリットもあり、付き合う相手として相応しいのか悩んだ経験がある人もいるのではないでしょうか? 言われた方は気持ちのいいことではないので、使う際は気をつけてくださいね。
類語や言い換え表現は?
長所がある一方で短所もある、ということは、意外といろいろな言葉に置き換えられて使われています。ここでは、「諸刃の剣」「一利一害」「良し悪し」をみていきましょう。
1:諸刃の剣
「諸刃の剣(もろはのつるぎ)」の意味は、以下のとおりです。
《両辺に刃のついた剣は、相手を切ろうとして振り上げると、自分をも傷つける恐れのあることから》一方では非常に役に立つが、他方では大きな害を与える危険もあるもののたとえ。両刃の剣。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「諸刃の剣」とは、非常に役に立つものの、危険性も併せ持っていることのたとえです。たとえば、「この薬を飲むとすぐに痛みは引くが、その代わり副作用がきつい」というように、自分にとって利益もあれば、損害もある可能性がある場合に用いられます。「諸刃の剣だから気をつけて」と注意喚起する時に使われることが多いですね。
(例文)
・この技を使えば高得点が狙えるが、失敗したら怪我をする可能性が高い。まさに諸刃の剣だ。
・この新商品を売れば、若い女性に受けるだろうが、原価が高くなることが避けられない。諸刃の剣とはこのことか。
2:一利一害
「一利一害」は、「いちりいちがい」と読みます。意味は以下のとおりです。
利益もあるが害もあること。一得一失。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
利益がある反面、害もあることを「一利一害」と言います。ビジネスシーンでは利益と損害を天秤にかけて、判断に迷う場面で用いられることがある言葉ですね。いい面もあれば、悪い面もあり、完璧でないさまが「一長一短」と共通しています。
(例文)
・物事には全て一利一害があるものだと上司はいった。
・このプランは一利一害あるので、利用するかどうか迷っている。
3:良し悪し
「良し悪し(よしあし)」はどのような意味でしょうか?
1 よいことと悪いこと。よいか悪いか。ぜんあく。よしわるし。「―を見分ける」「事の―をわきまえない」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
2 よいとも悪いともすぐには判断できかねる状態であること。よしわるし。「まじめすぎるのも―だ」
「良し悪し」とは、「いい面もあれば、悪い面もある」という意味。目の前のものをいいか悪いか決めきれず、選ぼうかどうか迷っている場合に、「ものの良し悪しがわからない」などと表現します。
(例文)
・祖父は、骨董品の価値の良し悪しを見分ける目を持っている。
・男の良し悪しがわからず、姉は恋愛に苦労している。
間違いに注意! 「一朝一夕」とは?
「一長一短」によく似た四字熟語に、「一朝一夕(いっちょういっせき)」があります。字面は似ていますが意味は全く異なりますので、誤用に注意してください。
《一日か一晩か、の意から》わずかな期間。短い時日。「これほどの大事業は―には成就しない」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「一朝一夕」とは、「わずかな期間や時間」のことを表します。「一朝一夕にはできない仕事だ」というように、短時間やっただけでそう簡単にできるものではない、という場合に使われることが一般的です。「一長一短」は、「長所もあれば、短所もある」という意味なので、全く異なりますよね。
「一長一短」をネットで検索すると、「一長一短にはいかない」という言葉がヒットしますが、これは誤用。正しくは、「一朝一夕にはいかない」です。先述の通り、短期間ではできないと言いたい場合に、「一朝一夕にはいかない」と表現するのが正しい使い方となります。
(例文)
・英語を話せるようになるには、一朝一夕にはいかない。
・少子化問題は、一朝一夕で解決できるものではない。
最後に
「一長一短」は、「長所がある一方、短所もあること」。ビジネスシーンから人間関係まで、さまざまな場面で用いられる言葉です。類語である「諸刃の剣」や「良し悪し」も会話の中で登場することがある表現なので、あわせて覚えてみてはいかがでしょうか?
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