「道に迷って右往左往した」というように使われる、「右往左往」という言葉。字面から、いろんな方向を行ったり来たりしているイメージが湧いてきますが、正しい意味を説明できますか? 本記事では、日常生活でも時々登場する「右往左往」の意味や使い方、言い換え表現などを解説します。
「右往左往」の意味
「右往左往」は、「うおうさおう」と読みます。辞書に意味は以下のように記載されています。
[名](スル)《「うおうざおう」とも》うろたえてあっちへ行ったりこっちへ来たりすること。あわてふためいて混乱したさまをいう。「会場を探して―する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
慌てて右へ行ったり左へ行ったりすることを「右往左往」と言います。また、混乱して秩序がない様子のことを指しますね。「往」という漢字には、「行く」という意味があり、「往復」(行きと帰り)という言葉にも使われています。辞書によっては、「大勢の人があちこちに入り乱れること」と記載されていますが、1人で慌てている場合に使っても問題ありません。
使い方を例文でチェック!
どのようなシチュエーションで「右往左往」が使われるのか、一緒にチェックしていきましょう。
1:時間が迫っているのに面接会場が見つからず、ビルの中を右往左往してしまった。
道に迷ってしまい混乱した時にも、「右往左往」を使います。特に初めてきた場所だと勝手が分からず、どの道を進んだらいいのか迷ってしまうこともありますね。慣れない場所に困惑して、建物内をぐるぐる回っている様子が想像できます。
2:「これから彼女を実家に連れて行くよ」と兄から連絡があり、母はいきなり部屋の中を右往左往し始めた。
いきなり予期せぬ出来事が起きて、混乱している時に「右往左往」を使います。急に家にお客さんが来ることを知り、慌てふためいて落ち着かない様子がイメージできますね。家が散らかっていたり、面会する心の準備ができていなかったら、なおさら慌ててしまうでしょう。
類語や言い換え表現は?
「右往左往」と同じような意味を持つ言葉には、「二転三転」「てんやわんや」「あたふた」などが挙げられます。ビジネスシーンなどで話がコロコロ変わる場合には、「二転三転」。混乱している状況を伝えたい場合には、「てんやわんや」「あたふた」を代わりに使うといいでしょう。意味と使い方を紹介します。
1:二転三転
「二転三転(にてんさんてん)」の意味は、以下の通りです。
[名](スル)物事の内容・状態・成り行きなどが、何度も変わること。「話が―して申し訳ありません」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
一度決まったにも関わらず、その後何度も変更点が出てきてしまった際には、「話が二転三転してしまい、申し訳ありません」と謝罪することもあるでしょう。「右往左往」にも、「混乱する」という意味がありますが、どちらかというと実際に人が動いている状況に重きが置かれています。
そのため、話の内容や会社の方針が何度も変わることを言いたい場合には、「二転三転」の方が適切だと言えるかもしれませんね。
(例文)
・会議で意見が二転三転して、結局結論が出なかった。
・部長の意見はよく二転三転するので、正直困っています。
2:てんやわんや
「てんやわんや」は、話し言葉として使われる言葉ですね。意味をみていきましょう。
[名・形動]大勢の人が秩序なく動き回り、ごった返すこと。また、そのさま。「宴会の準備で台所は―だ」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
大勢の人が寄ってたかって何かをしている時に、「てんやわんや」を使います。例えば、年末セールで、多くの人々がデパートの中でごった返している状態は、まさに「てんやわんや」。「右往左往」以上に、状況が混乱して、収拾がつかないさまが想像できますね。
(例文)
・引越しで家の中は、てんやわんやの大騒ぎだ。
・事故の影響で電車のダイヤが乱れ、駅の中はてんやわんやの状態になった。
3:あたふた
会話の中でよく使われる表現ですが、改めて辞書で意味を確認してみましょう。
[副](スル)慌て騒ぐさま。「支度もそこそこに―(と)家を出た」「―するな」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
大いに慌てて騒がしい様子を「あたふた」と言いますね。例えば、寝坊して学校に遅刻しそうになり、慌てて支度をしているさまを「あたふたと支度をし始めた」などと表現します。特に、時間に追われて急いでいる時や、隠し事がバレそうな時に使われる傾向がありますね。
(例文)
・母は、忘れ物をとりにあたふたと家に駆け込んだ。
・彼女に、プレゼントを用意していることがバレそうになって、あたふたしてしまった。
対義語
あちこちへ行って落ち着きのないさまを表す「右往左往」。反対の意味を持つ言葉としては、「泰然自若」が挙げられます。早速意味を見ていきましょう。
「泰然自若(たいぜんじじゃく)」の意味は、以下の通りです。
[ト・タル][文][形動タリ]落ち着いていて物事に動じないさま。「―として騒がず」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「泰然自若」とは、「落ち着いていて、物事に動じないさま」を表す四字熟語です。たとえ、予期せぬ出来事が起きても、どっしりと落ち着いていて慌てることはありません。冷静に今、何をすべきか対処法を考えることができるでしょう。
(例文)
・彼は、父に何を言われても泰然自若としていた。
・弟はまだ若いのにいつも泰然自若としているので、将来大物になるかもしれない。
最後に
うろたえて、あっちへ行ったりこっちへ来たりすることを「右往左往」というようですね。「うろたえる」という言葉がついていることから、何か予測できない出来事が起こったことが原因でパニックになってしまった時に使われます。
ビジネスシーンにおいて、会社の状況や方針がコロコロ変わり、謝罪をしたい場合には、「右往左往」よりも「二転三転」の方が、より的確に意味を伝えることができるでしょう。言い換え表現の1つとして、覚えてみてはいかがでしょうか?
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