傍若無人とは? 意味や読み方
傍若無人とは、人のことなどまるで気にかけず、自分勝手に振る舞うことやその様子を指す言葉です。「ぼうじゃくぶじん」と読みます。
なお、傍若無人のように「若」を「じゃく」と読む熟語としては、次のものが挙げられます。
・若年(じゃくねん)
・若輩者(じゃくはいもの)
傍若無人の由来とは?
傍若無人は、中国の史記のなかの「刺客伝」に由来する言葉です。皇帝の刺客として雇われた荊軻(けいか)は、酒席では人が変わることで知られていました。まるで周囲に人がいないかのように大声で騒いだり、音楽に合わせて踊ったりしたため、「傍若無人(そばに人がいないかのようだ)」と評されたようです。
なお、傍若無人の書き下し文は「傍(かたわら)に人無きが若(ごと)し」です。ほとんどの人は人目を気にした振る舞いをしますが、荊軻は人がいないかのように遠慮せず振る舞ったのでしょう。
傍若無人の使い方を例文で紹介
傍若無人は、次のように使います。
・彼女の傍若無人な態度には、同僚だけでなく役員たちも呆れている。
・彼は普段から傍若無人に振る舞う男だが、今日はさらにひどい。
・傍若無人な父親は、もはや家族からも相手にされていなかった。
「傍若無人な態度」や「傍若無人な振る舞い」のように、「傍若無人な〇〇」と使うことも多いです。日常会話でも用いますが、小説などの書き言葉としても使われます。
傍若無人の言い換え表現
傍若無人は、たとえば次の言葉と言い換えられます。
・唯我独尊(ゆいがどくそん)
・横柄(おうへい)
・厚顔無恥(こうがんむち)
いずれも傍若無人と似た意味で用いられますが、まったく同じというわけではありません。それぞれの使い方やニュアンスを、例文を通して紹介します。
唯我独尊(ゆいがどくそん)
唯我独尊(ゆいがどくそん)とは、自分一人が特別にすぐれているとうぬぼれることや、ひとりよがりなことを示す言葉です。
・彼女は常に唯我独尊の態度だ。自分以外はすべて間違っていると思っているのだろう。
・唯我独尊では、誰の信頼も得られませんよ。
唯我独尊は、「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)」を略した言葉でもあります。これは「わたしは世界のうちで最もすぐれた者」という意味で、釈迦が生まれてすぐに四方に七歩歩み、右手で天、左手で地を指して語ったといわれています。
横柄(おうへい)
横柄(おうへい)とは、いばって、人を無視した態度を取ることです。無礼なことや無遠慮なことを指すこともあります。また、横柄以外にも「押柄」や「大柄」と記載することがあります。
・彼女は若いけれども横柄な態度を取っている。人間は年齢ではなく能力で評価すべきが口癖だが、だからといって年配者に敬意のない態度を取るのはいかがなものだろうか。
・横柄に振る舞っているが、内心はびくびくしているようだ。
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厚顔無恥(こうがんむち)
厚顔無恥(こうがんむち)とは、ずうずうしくて恥知らずなことやその様子のことです。無恥厚顔(むちこうがん)と表現することもあります。なお、ずうずうしいを「図図しい」と書くのは当て字です。
・厚顔無恥にも、彼はわたしの家に乗り込んで居候を決め込んでしまった。
・よくもまあ、そのような厚かましいことをいえたものだ。厚顔無恥とは君のことだよ。
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傍若無人の反対の意味を持つ表現
傍若無人と反対の意味で使う表現としては、次の言葉が挙げられます。
・遠慮会釈(えんりょえしゃく)
・謙虚(けんきょ)
・韜晦(とうかい)
それぞれの使い方やニュアンスについて、例文を通して見ていきましょう。
遠慮会釈(えんりょえしゃく)
遠慮会釈(えんりょえしゃく)は、周囲の人を思いやり、控えめかつ遠慮深い態度を取るという意味の言葉です。
しかし、そのまま使うよりは、「遠慮会釈もない」と打ち消して使うことが多いようです。遠慮会釈もないとは、相手の意向を考えないで強引に物事を進める様子を指します。たとえば、次のように使います。
・遠慮会釈もなく、反対勢力を批判した。
・彼女には遠慮会釈という考えはないのだろうか。他人の心のなかまで土足で入り込む行為を繰り返している。
謙虚(けんきょ)
謙虚(けんきょ)とは、控えめで、つつましい様子です。また、へりくだって素直に相手の意見などを受け入れることやその様子を指すこともあります。
・彼女はどのようなときでも謙虚に批判を聞き入れている。そして次の演技に活かしているから、いつまでも進化し続けられるのだ。
・彼の謙虚な態度は、一体どこから来たのだろうか。彼の父も母も横柄さで知られているのに。
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韜晦(とうかい)
韜晦(とうかい)とは、自分の本心や才能・地位などをつつみ隠すこと、身を隠すことを指す言葉です。自己韜晦(じことうかい)と表現することもあります。
・なぜ君は自分をそこまで韜晦していられるのか?
・彼は韜晦しているが、素晴らしい才能の持ち主であることは明明白白だ。
また、身を隠すことや姿をくらますことを指して使うこともあります。
・わたしの母親は先月から韜晦している。
・彼女は数週間ほど韜晦していたようだが、駅前の本屋で見かけたという噂が聞こえてきた。
傍若無人な振る舞いに注意しよう
傍若無人は、周囲に人がいないかのように自分勝手に振る舞うことです。よい意味で使われることはめったにないため、「傍若無人な人だ」といわれることがないようにつつしみを持って行動したいもの。
また類似する意味の言葉である「唯我独尊」「横柄」「厚顔無恥」も、あまりよい意味で使われることはありません。社会は人と人との関わりで成り立っていることを理解して行動を取るよう意識したいところです。
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