【目次】
・「厚顔無恥」の意味や由来は?
・厚顔無恥の正しい使い方は? 例文をご紹介
・厚顔無恥の類義語はどのようなものがある?
・厚顔無恥の対義語は?
・厚顔無恥の書き間違いには気をつけて
「厚顔無恥」の意味や由来は?
厚顔無恥の言葉の意味
「厚顔無恥」は厚かましくて恥知らずな様子を言います。
「厚顔」は文字通り、面の皮が厚い、恥知らずでずうずうしいという意味があります。一方「無恥」も、「恥が無い」という文字通り、恥を知らない、恥ずべきことを恥だと思わないという意味です。
この同じような意味のことばを重ねることで、「恥知らずで厚かましい様子」を強調する言葉になりました。
厚顔無恥の言葉の由来
「厚顔無恥」の由来は、中国最古の詩集「詩経」にあると言われています。
「巧言如簧、顔之厚矣」これは巧みな言葉で外面を取り繕い、内面の恥を隠すといった意味になります。
「厚顔」という表現が使われたのは、これがはじまりとされています。ちなみに「詩経」が由来の故事成語には、「他山の石」「壁に耳あり」などがあります。もうひとつ由来と言われているのが、中国の孔稚珪の書物「文選 北山移文」の文章です。
「豈可使芳杜厚顏、薜荔無恥」
日本では平安時代に、精神面の汚さや内面の醜さを意味する言葉として「厚顔」が使われ、その後、内面の醜さ・内面の恥という意味で定着したそうです。
厚顔無恥を英語で表現すると?
「厚顔無恥」をそのまま英訳すると「thick-skinned」となります。ただ、「恥知らず」を表す「shameless」や「厚かましい」という意味の「impudent」もよく使われます。
barefaced(ずうずうしい)
impudent(厚かましい)
shameless(恥知らずの、羞恥心のない)
effrontery(厚かましさ)
brazen(厚顔な、ずうずうしい、shamelessよりも強い意味)
unabashed(厚かましい)
thick‐skinned(打たれ強い、平然とした)
厚顔無恥の正しい使い方は? 例文をご紹介
1「あの政治家の厚顔無恥な態度と言い訳にはうんざりする」
「厚顔無恥」は人を形容する言葉としては、あまりいい意味では使われません。自分に都合のいいような主張ばかりして、迷惑をかけても平然としているような人を表す時に、よく使われます。
2「人を批判しておきながら、困った途端に泣きついてくるとは厚顔無恥も甚だしい」
「厚顔無恥な人~」というだけでなく、「厚顔無恥も甚だしい」という言い方もよく見られますが、こちらはやや強いニュアンスになります。さらに強い、非難の意味を込めて「厚顔無恥にも程がある」ということもできます。
3「厚顔無恥になりたい」という人が増えている?
「厚顔無恥」は「恥知らずで図々しい」という意味ですが、最近では「厚顔無恥になりたい」「厚顔無恥な方がいい」という意見もあります。どうやら、「世間体や周囲の目に気を使っていては、本当にやりたいことができない」「いっそ図々しい方が得だ」「厚かましい方が気楽だ」といったニュアンスで使用されているようです。
確かに人の目を気にせず自分のなりたいものを追い求めるのは素敵なことではありますが、本来「厚顔無恥」はネガティブなニュアンスを伴う言葉です。そのため、「厚顔無恥になりたい」という表現よりも、「素直に生きる」「人の目を気にせず自分らしくありたい」といった表現を使った方が、より真意が伝わるのではないでしょうか。
厚顔無恥の類義語はどのようなものがある?
傍若無人(ぼうじゃくぶじん)
人前もはばからず、勝手きままに行動すること。人を人とも思わない振る舞いをすること。
勝手気儘(かってきまま)
他人のことは気にせず、自分のしたいように行動すること
得手勝手(えてかって)
他人のことは考えずに自分に都合のよいように行動すること。わがまま放題にするさま。
いずれも「厚顔無恥」と似た意味の表現ですが、「厚顔無恥」にはずうずうしさ・厚かましさという相手に迷惑なニュアンスも含まれます。
他にも、
鉄面皮(てつめんぴ)
恥知らずで厚かましく、面の皮がまるで鉄のようであるさま。
不遜(ふそん)
へりくだる気持ちがないこと、思いあがった態度
傲岸不遜(ごうがんふそん)
おごりたかぶって人を見下すさま、思いあがって謙虚さのないさま
などもあります。
厚顔無恥の対義語は?
遠慮会釈(えんりょえしゃく)
人に対して控えめにしたり、他人の気持ちを思いやったりすること。
平身低頭(へいしんていとう)
ひれふして頭を下げ、恐れ入ること。また、ひたすらわびること。
温厚篤実(おんこうとくじつ)
穏やかで情が厚く、誠実なこと。
ずうずうしい、厚かましいの反対は、つつましい、控えめという意味になりますので、他には、
温柔敦厚(おんじゅうとんこう)
人柄が穏やかで優しく、情が深いこと
謙虚(けんきょ)
控えめで、つつましいこと
謙遜(けんそん)
控えめでつつましい態度で振る舞うこと
などが対義語になります。
厚顔無恥の書き間違いには気をつけて
「厚顔無恥」の誤りでよく見られるのが「厚顔無知」です。「むち」の読みが同じなので間違いやすいですが、「無知」は「知識や知恵がないこと」、「無恥」は「恥知らず」という意味ですから、誤用しないように。