ビジネスシーンでよく使う「御中」や「様」。初めての就職活動などでは、使い分けに戸惑った人もいるのでは? 基本的なルールから、応用的な使い方、例外なども解説します。使い慣れている人も、ぜひ今一度チェックしてみてくださいね。
「御中」と「様」
封筒や手紙だけでなく、メール、企画書、資料、請求書、領収書まで、幅広い書類でよく目する「御中」と「様」。それぞれ、どのように使い分けるのが正しいのでしょうか? まずは、ひとつずつ言葉の意味をチェックしましょう。
「御中」の意味は?
御中は「おんちゅう」と読み、組織に対して使う敬称です。企業名、団体名、部署名など、組織を表す名称の後につけましょう。「中」に、丁寧語の「御」をつけた言葉であり、「中の人へ」という意味があるそうです。
御中を使うケースとしては、送付先の担当者の名前が分からず、企業名や部署名までしか分からないときや、個人を特定せず、組織の中の誰かに対して送りたいときが考えられます。
例:〜株式会社御中
〜株式会社 人事部部御中
〜株式会社 人事部 採用グループ御中
「様」の意味は?
様は、「さま」と読み、個人に対して使う敬称です。年齢、性別、立場に関係なく使うことができる便利な尊敬語。様を使うケースとしては、送り先の担当者の名前を知っているとき。
基本的に個人名の後につけ、役職名の後に様をつけることは間違いですが、例外が2つ。ひとつは、送り先の役職は分かるものの個人名が分からないとき、もうひとつは自治会や町内会など、その役職に当たる人物が1人しか存在しないときには例外的に使っても問題ないと言われています。
例:鈴木花子 様
〜株式会社 人事部 採用グループ 鈴木花子様
〜株式会社 人事部長 佐藤太郎様
間違った例:〜株式会社 佐藤太郎人事部長様
例外:自治会長様
町内会長様
〜株式会社 人事部長様
また、送りたい相手が二人以上いるときは、それぞれに様をつけましょう。
◯:〜株式会社 総務部 総務グループ A様 B様
×:〜株式会社 総務部 総務グループ A B様
「御中」と「様」の使い分けは?
「御中」は企業名や部署名の後に、「様」は個人名の後につけて使い分けましょう。
使用する際の注意点
御中と様の使い分けが分かったところで、次は、使用する際の注意点もより詳しくチェック!
併用できない
御中と様は併用できません。役職名も敬称であるため、御中と併用不可です。
×:鈴木花子様 御中
〜株式会社 御中 人事部長
御中より様優先
担当者の名前を知っているときはもちろん、名前は知らないけれど、担当者がいることが分かっているときは、御中よりも様を優先して使いましょう。名前が分からないときは、「ご担当者様」、「採用担当者様」とすればOKです。
返信用封筒やはがきの宛名
返信用封筒や、返信用はがきの宛名に、あらかじめ部署名が印字されているものを見たことはありませんか? 返送先を間違えないように記載してあるものですが、「〜宛」「〜行」となっている点に注意が必要です。
「宛」は個人名の後に使う言葉なので、敬称は「様」、「行」は組織名の後に使う言葉なので、敬称は「御中」が適切。返送するときは、「宛」や「行」を二重線で消し、縦書きなら下か左に、横書きなら右に「様」や「御中」と書きましょう。
二重線は、まっすぐ引いても、斜めでもOKです。担当者の印鑑が押されていることがありますが、印鑑を二重線で消すことは失礼にあたるため、二重線で消さずに、そのまま印鑑の横に「様」と書きましょう。
そのほかの敬称もチェック!
「御中」「様」以外にも、よく使われる敬称についてチェックしておきましょう!
1:各位(かくい)
文書でもメールでも、よく目にする「各位」。各位は、特定の人物を示すのではなく、該当する人すべてに対して使う敬称です。立場に関係なく使用可能。「人事部各位」であれば、人事部に所属する人すべて、「関係者各位」であれば、文書の内容に関係する人すべてを表します。
二重敬語になってしまうため、御中と併用はできません。特定の個人に宛てないのであれば、「人事部御中」と同じでは? と感じるかもしれませんが、「各位」は、「その部署の中の一人一人」という印象を与えます。そのため、たとえば新任や退職の挨拶など、「本当は一人ずつ挨拶をしたい」という印象を与えたい内容のときは、「各位」を使うといいでしょう。
また、例外を除いて、様とも併用できません。理由は、各位が個人を特定しないのに対して、様は個人に対して使うものであることであること、また、二重敬語になること。間違った例をいくつか見ておきましょう。
×:取引先各位の皆様
×:関係者各位様
例外は、「お客様」や「お得意様」など、特定の固有名詞として成り立っているもの。
◯:お客様各位
◯:お得意様各位
特定の固有名詞として思い浮かべる「ご担当者様」や「株主様」の場合は、様を取って各位をつけましょう。
◯:ご担当者各位
◯:株主各位
2:殿(どの)
基本的に、目上の人が、目下の人に対して使う敬称です。お客様や取引先に使うと失礼になるため、気をつけましょう。そのため、目にする機会は社内文書などがほとんど。男女関係なく使えますが、堅苦しい印象があることから、最近はあまり使われないようです。
3:先生(せんせい)
専門知識を持ち、人を指導したり、技術を提供する職業についている人に対して使う敬称。たとえば、医師、弁護士、政治家、教師、カウンセラーなど。様と併用できないため、「〜先生様」は間違いです。
英語表現は?
最後に、御中や様のように使える英語表現を確認しておきましょう。
1:Dear
Dear と聞くと、友人や家族など、プライベートで使う印象がありませんか? 友人や家族に対して使えば「親愛なる」というニュアンスになりますが、組織名の前につければ、「御中」、「各位」、「様」のように使えます。
例:人事部御中 Dear Human Resources Department
鈴木花子様 Dear Ms.Hanako Suzuki
2:To whom it may concern
TOEICの勉強をされたことがある方は、目にしたことも多いのでは? 個人名は分からないけれど「ご担当者様」という意味で、よく使われる言葉です。担当者名が分からないときの表現は、他にも「Dear Sir or Madam」があります。
最後に
今回は「御中」と「様」の違いについて解説しました。普段から使い慣れていて分かったつもりになりがちですが、あらためて意味を確認すると、新しい発見もあったのではないでしょうか? 言葉は定期的に見直すと、面白い発見がありますね。
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