「反面教師」の意味とは?
反面教師という言葉を聞いたことがある方は多いでしょう。ドラマや日常会話の中でよく使う表現です。ここでは改めて意味を確認していきましょう。
「反面教師」とは、簡単にいうと悪い見本となる人のこと。本来「教師」というのは、人間を教育し、正しい道へ導く人のことを言いますよね。「反面教師」はその反対で、悪い見本として学ぶべき人のことを指します。つまり、その人の言動から「こんな風にはなってはいけない」と戒めの教訓を得るのです。
ドラマで、「反面教師にさせてもらうから」とか「反面教師にしてやる!」というセリフを聞いたことはないでしょうか? これは「あなたみたいにはならないようにする」という皮肉を込めた意味です。「反面教師」は決して褒め言葉ではなく、悪い意味で使うということを覚えておきましょう。
ちなみに「反面教師」は、中国の政治家、毛沢東による演説から生まれた言葉だと言われています。彼は、組織に間違った考え方の者がいても追放するのではなく、悪い見本として見せつけるべきだと唱えました。そうすることで、周りの人々がそれを戒めに正しい道へ進むようになると。このように、毛沢東は人々を良い方向に導くために、あえて戒めの材料となる反面教師の役割を重視したのです。
使い方を例文でチェック!
「反面教師」は意外と誤用の多い表現です。「悪い見本」を意味するため、くれぐれも褒め言葉や良い意味で使わないように気をつけましょう。以下ではいくつか例文を紹介していますので、参考にしてみてくださいね。
1:後輩に責任を押しつける上司を反面教師にして、仕事を全うする
あなたの職場にも、苦手な人や合わないと感じる人がいるかもしれません。その人の嫌なところばかりを見てしまうと、自分自身がストレスを感じてしまいますよね。「この人嫌だなぁ」で終わらせるのではなく、「自分は絶対こんなことはしないように気をつけよう」と、自分への教訓として捉えてみると良いでしょう。
2:ろくに勉強をせず、受験に落ちた姉を反面教師にして、真面目に勉強を続けた
親や兄弟など、身近な存在は「反面教師」にたとえられることが多いです。身近にいる人からの影響は思っている以上に受けやすいもの。家族が何か失敗を起こした場合には、反面教師にして、あなたも注意しておくべきでしょう。
3:流されるんじゃなくて、相手の悪いところは反面教師にするべきだよ
「反面教師にする」とは、悪い見本から学ぶことを言います。ただ悪いところを見つけるだけではなく、そこから何か自分にとって学べることを見つけるまでが大切でしょう。友達でも恋人でも、長い間一緒にいると相手の嫌なところが見えてしまうかもしれませんね。そんな時は、それを反面教師にして自分を成長させることを考えれば良いのです。
4:父の姿が反面教師となり、私はお酒を控えるようになった
親を反面教師にするというパターンは、多いですね。例えば、自分が子供の時にされて嫌だったことを、親となって子育てをする時に気をつけている方は多いのではないでしょうか? 兄弟で比べないよう気をつけたり、何事も否定しないように意識したりと、子育てで実親を反面教師にすることもあるようです。
「反面教師」の類語や言い換え表現を紹介
次は「反面教師」の類語や言い換え表現を解説していきます。語源となった中国では「反面教員」「反面教材」と言われることもあるのだそう。日本では、似ている言葉として「他山の石(たざんのいし)」「人を以て鑑となす(ひとをもってかがみとなす)」「人の振り見て我が振り直せ(ひとのふりみてわがふりなおせ)」の3つが挙げられます。
1:他山の石(たざんのいし)
「他の山から出た、自分の石を磨くのに役立つ粗悪な石」という意味から転じて、「他人の悪い言動でも自分の正しい行いの参考になる」という意味で使います。質の悪い石でも、自分を磨くのには役立つというニュアンスが込められたこの表現。しかし最近では、「他人の良い行いが自分の手本となる」という誤った意味で使う人が増えているそう。
間違った使い方をしないよう、本来の意味をしっかり理解しておきましょう。
2:人を以て鑑となす(ひとをもってかがみとなす)
意味は、人の発言や行動を自分のことに当てはめて考え、正しい生き方をすること。「反面教師」と同じように、他の人を見て自分の戒め・教訓とすることを言います。唐の政治家、魏徴(ぎちょう)が亡くなった時に、唐の太宗が「鑑(見本)を失った」と嘆いたことが由来となっているそうです。
3:人の振り見て我が振り直せ(ひとのふりみてわがふりなおせ)
この表現は、知っている方も多いのではないでしょうか? 他人の良いところは見習い、悪いところは自分の戒めとすることです。他人の欠点に気がついても、それを自分に置き換えて考えることは難しかったりします。この言葉を胸に留め、少しでも自分を良い方向に変えていきたいものですね。
「反面教師」を英語で表現すると…?
日本語では日常会話でもよく使うこの言葉。英語ではなんと表現するのでしょうか? 最後に「反面教師」の英語表現について解説していきます。
1:a teacher by negative example
直訳すると「悪い例を教える人」となります。「negative example」や「bad example」というように「悪い例・見本」とシンプルに表現しても良いでしょう。
2:a good example of what not to do
「すべきでないことの良い例」というような意味になりますね。「a good example」で「ちょうど良い例」というニュアンスを表現します。「an example of what a person should not be」も同じように使うことができるでしょう。
3:a negative exemplar
「exemplar」は「手本・鑑」という意味をもつ単語。つまり「negative exemplar」で「悪い見本」を表します。
最後に
誰しも他人の欠点を見つけると、非難したくなるものです。しかし、自分に置き換えて反面教師にできる人は、減ってきているようにも感じます。しかし、自分の言動を過信しすぎず、「もしかしたら自分も相手に嫌な思いをさせているのかもしれない」と客観的に考えることは非常に大切なことです。他人の嫌な部分を見つけた時こそ、自分を省みる機会だと思って言動を見つめ直してみると良いでしょう。
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