裁量という言葉を、見聞きしたことはありますか? 「転職するなら、裁量のある仕事を探したい」などと、聞いたことがある方も、いらっしゃるかもしれませんね。また、「裁量労働制」などの言葉を、ニュースや新聞などで見たことがある方も、いらっしゃることでしょう。
ですが、普段の会話では、あまり馴染みのない言葉ではないでしょうか? 「意味や使い方を聞かれると、自信を持って答えられない」という声も聞こえてきそうですね。そこで、この記事では、裁量の意味や使い方、裁量労働制の概要などを解説します。自分のキャリアプランを考える際にも、裁量は重要なキーワードですので、ぜひチェックしてみてくださいね。
裁量の読み方と意味は?
裁量は、「さいりょう」と読みます。裁量の意味は、簡単に言うと、自分の考えをもとに、処理や決定をすること。例えば、仕事中にマニュアルに書いていないことは、その都度状況に合わせて対応するというイメージですね。
裁量の使い方は?
ここからは、裁量の使い方も例文で見ていきましょう。
1:「裁量に任せる」
「裁量に任せる」というのは、よくある使い方です。例えば、仕事でどう対応すべきか迷うことがあって、上司に相談した場面で考えてみましょう。この時、上司が、「あなたの裁量にお任せします」などと言った場合、「あなたの判断に任せます」という意味になりますよ。ビジネスシーンでよく耳にするフレーズですので、おさえておくと便利です。
2:「裁量が大きい」
自分で判断することや場面が多い場合、「裁量が大きい」と言うことも。例えば、裁量が大きい仕事は、何かの現場責任者などが多いでしょう。現場責任者は、その現場の状況を見て、ただちに判断し、部下に指示を出すことが求められますよね。いちいち「本社に確認しますね」と言っていては、なかなか難しいことも。このように、スピーディーな対応を求められるがゆえに、裁量が大きい仕事もあります。
3:「裁量がない」
裁量がない仕事だと、一切自分の判断で決めることができず、全てを上司や会社の指示によってするということになります。人事関連の仕事をしている人は、「今の仕事は裁量がないので、転職を考えています」などという言葉を、耳にする機会があるかもしれません。また、反対の意味で、「裁量がある」という使い方もおさえておくと便利です。
4:「裁量権」
「裁量権」は、自分の裁量で何かを決定、判断する権利のこと。厳密に言うと、「裁量権」は、行政庁が裁量で行政処分をする権利を指す言葉です。ですが、最近では、「アシスタントの採用については、現場職員に裁量権を与えています」などのように、一般企業でも使われているようですね。会社で言う裁量権は、「何か仕事について判断、決定する権利」と言い換えることもできるでしょう。
裁量労働制とは?
裁量労働制とは、どのような働き方なのかも見ていきましょう。裁量労働制とは、簡単に言うと、「会社が具体的な指示をするのが難しく、働く人の裁量に任せて進めた方がスムーズな仕事に対して、労使間で定めた時間分働いたことにする」という制度。
仕事によっては、会社が具体的に「〇時から〇時まで、〇〇を進めてください」というように、働く時間や、何をすべきかを指示できない業務もありますよね。特に、専門性が高い仕事や、何かを企画するような仕事は、その傾向が強いでしょう。
そこで、会社と労働者が「〇時間働いたとみなしましょう」という約束を結び、そのルールに従って、労働時間を考えるというのが、裁量労働制です。裁量労働制は、2種類ありますので、それぞれどんなものかも簡単に見ていきましょう。
1:専門業務型裁量労働制
専門業務型裁量労働制は、仕事の仕方や、時間の配分などについて、働く人の判断によるような性質の仕事に対して、導入できる裁量労働制です。この制度を使うと、あらかじめ協定で決めておいた時間分の仕事をしたとみなされることになりますよ。
なお、専門業務型裁量労働制が導入できる代表的な職業は、弁護士、公認会計士、税理士など。そのほかにも、コピーライターや、ゲームの創作などの業務があり、全部で19業種に限られています。
2024年4月1日からは、労働者本人の同意が必要になるというのもポイント。同意をしなかったからといって、労働者に不利なことをできないというのも、おさえておきたいですね。
参考:厚生労働省リーフレット「裁量労働制の導入・継続には新たな手続きが必要です」
2:企画業務型裁量労働制
企画業務型裁量労働制は、事業の運営に関わることについて、企画、立案、分析や調査などをする場合、対象になることがある裁量労働制です。
例えば、会社の本社で、経営に関わるような重要な企画などを担当している人は、「自分で判断して動きたい」という希望もあるでしょう。たしかに、会社の運営に大きく影響を与える企画などを担当していれば、その場その場で柔軟に判断する場面が増えますよね。会社が具体的な指示をするのが難しいということも、多いかもしれません。
このような状況の中で、「主体的に仕事を進めていきたい」という声に応えられるよう、「企画業務型裁量労働制」を導入するという会社もありますよ。ただ、導入するには、様々なルールも。企画業務型裁量労働制は、基本的に、会社が具体的な指示をせず、労働者の裁量で動く必要がある場合に、あらかじめ決めておいた時間分働いたとみなす制度です。
ですので、一言で企画や調査と言っても、誰でも対象になるわけではありません。例えば、会社から具体的な指示を受けて、業務に関するリサーチなどをしている場合は、対象外ということになりますよ。また、導入には細かい手続きがある上、労働者の同意も必要というのも重要なポイント。つまり、一方的に、「君は企画業務型裁量労働制だからね」なんてことはできないということですね。
参考:厚生労働省ホームページ「裁量労働制の概要」
裁量労働制にデメリットはある?
「裁量労働制」と聞くと、あまり良いイメージがないという人もいるようです。働き過ぎや、サービス残業などを連想してしまうという声も。実際に、裁量労働制で長時間労働に陥ってしまうケースも、残念ながらあるようです。
ですが、「自分の裁量で動けることに満足を感じる」という人も。自由が好きという人もいれば、かえって負担に思ってしまうという人もいるでしょう。イメージに囚われず、自分の価値観をよく考えて、働き方を選べるようにしたいですね。
最後に
この記事では、裁量の意味や使い方、裁量権や裁量労働制について解説しました。裁量は、働き方や、キャリアにも大きく関わるキーワードです。また、転職活動の際にも、よく使われる言葉ですので、使い方も含めて知っておくと便利ですよ。
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塚原美彩(つかはらみさ) 塚原社会保険労務士事務所代表
行政機関にて健康保険や厚生年金、労働基準法に関する業務を経験。2016年社会保険労務士資格を取得後、企業の人事労務コンサル、ポジティブ心理学をベースとした研修講師として活動中。HP:塚原社会保険労務士事務所 ライター所属:京都メディアライン