「せっかく、データをまとめたのに、保存し忘れた!」、「渾身の企画書を作成したのに、パソコンの電源が落ちてしまった!」。きっと、このような経験をお持ちの方もいらっしゃるはず。 元の木阿弥は、努力したものが無駄になってしまった場合に使うことわざです。
本記事では、読み方や意味、その由来や例文を交えた使い方を詳しく解説します。
元の木阿弥の意味や読み方は?
「元の木阿弥」は、「もとのもくあみ」と読みます。一旦良くなったものが、再びもとの状態に戻ることを言います。努力してきたものが無駄になってしまった、積みあげてきたものがなくなってしまった、という状態を表す時に使います。
せっかく今まで頑張ってきたことが、全て水の泡になってしまうと、やる気がなくなってしまいますよね。費やした時間や情熱や思い入れを考えると、虚しさも感じることでしょう。しばらくは、何も手につかなくなってしまうかもしれませんね…。
そんな時は、リフレーミングを取り入れてみましょう。リフレーミングとは、対象の枠組みを変えて、別の感じ方を持たせること、です。これにより不満や不足といった感じ方を、満足や喜びといった感じ方に変えることができます。
「もう一度、自分が成長する機会を得られた」、「新しい発想でチャレンジしてみよう」と切り替えることもできるはず。変化と成長を受け入れ、困難な状況でも前向きに捉え直してみるといいでしょう。
元の木阿弥の由来って?
元の木阿弥の由来は、いくつかの説があるようです。歴史に関するものや生活に関するものがあります。ここでは、諸説ある中から3つ選んで紹介します。
1:戦国時代の武将にまつわる説
大和国(やまとのくに)、現在の奈良県を治めていた武将、筒井順昭(つついじゅんしょう)が病死した際。順昭の跡継ぎとなる、子の順慶(じゅんけい)がまだ幼かったため、遺言により、順昭の死を隠し、順昭と声のよく似た木阿弥という男を寝所に寝かせて、順昭が病床にあるように、来客を欺いていたそうです。
順慶が成長すると、順昭の死を公表したため、木阿弥はもとの身分に戻った、という故事が語源になったという説があります。
2:怠けてしまった僧侶にまつわる説
ある人が妻を離縁して出家し、木食(もくじき)という、木の実や草などを食べて修行をし、木阿弥や、木食上人(もくじきしょうにん)と呼ばれ、まわりから尊敬されていました。ところが、年数を経るにつれ、木食の修行も怠りがちになり、結局、離縁した妻のもとへ戻ってしまうことに。
積み重ねてきた修行が無駄になってしまったことを、周囲がからかって「元の木阿弥」と呼んだことが由来になっているようです。
3:名前を買った村人にまつわる説
木工兵衛という村人が、僧侶に献金して、某弥阿(なにがしのあみ)という、ありがたい名前を得ました。しかしながら、まわりの村人は新しい名前で呼ぶことなく、たまに呼んでも、旧名にひかれて木工阿弥と呼ぶため、せっかく名前を買ってもむなしく終わってしまった、という話が語源である、という説もあります。
類義語にはどのようなものがある?
元の木阿弥に似た意味合いの言葉もあるようです。読み方も紹介します。一緒に見ていきましょう。
1:骨折り損のくたびれ儲け(ほねおりぞんのくたびれもうけ)
「苦労しても疲れるだけで、少しも成果が上がらないこと」を言います。「骨折り」は苦労すること、「くたびれ」は疲れること。似た意味を持つ言葉と、「損」と「儲け」という対立する言葉を取り合わせています。成果のあがらないことを行った他者に対して、ユーモアを交えて評する際に使います。
2:徒労に終わる(とろうにおわる)
徒労とは、無駄なことに力を費やすことを言います。徒労に終わるとは、一生懸命行ってきたことが、報われることなく、終わってしまうこと。時間やエネルギーを費やしたにも関わらず、何の成果も得られない状況を表現する言葉です。
3:振り出しに(へ)戻る(ふりだしに(へ)もどる)
物事の初めの状態に戻る、出発点に戻ることを、言います。振り出しとは、物事の始めや出発点を表す言葉です。ビジネスにおいては、計画やプロジェクトがうまくいかなかったり、事業目標が変更されたりする場合に使われることが多いようです。
「元の木阿弥」の使い方は?
由来や意味が理解出来たら、その言葉を使ってみたくなりますよね。実際に例文を紹介します。
1:新規取引先との信頼を構築してきたのに、上司の失言のせいで、元の木阿弥になってしまった。
こちらは、積み重ねてきたものが無くなってしまった場合に使う例文です。せっかく取り付けた大事な顧客ですが、何気ない上司の失言で、一気に離れてしまう可能性があります。顧客訪問の際は、上司との打ち合わせをしっかり行いましょう。
2:チーム一丸となって進めてきたプロジェクトが、経営方針の転換で、元の木阿弥に。
努力したものが無駄になってしまった場合に使う例文です。プロジェクトを成功させるためには、メンバーが協力し合い、連携して進めていきます。一方で、会社を存続させるため、急な経営方針の転換も致し方ない場合もあります。
目の前のことに集中するのも大事ですが、広い視野で状況判断することも大切だと言えます。
3:失敗から学び、元の木阿弥として、新たな挑戦を始めます。
元の木阿弥はネガティブなイメージが強いですが、前向きに捉える時にも使えます。一度行ったことには、改善点もたくさんあるはず。時には0からスタートすることが、大きな成長へとつながると言えるでしょう。
最後に
今回は元の木阿弥について解説しました。今まで積み重ねてきたものが、無駄になるなんて、残念なことですね。一方で、その挫折や困難から立ち直り、リスタートを切るためのポジティブな言葉と捉えることもでるのではないでしょうか。あらゆる状況を肯定的に受け入れ、成長や前進を追求する機会にしていきましょう。
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