そもそも「前略」や「結び」とは?
手紙やハガキを書くとき、どのように始めてどのように結ぼうかと迷ってしまうことはありませんか? ルールやマナーがあると聞けばなおさら敷居が高く感じますが、大人の女性の心得としてはぜひともマスターしておきたいもの。まずは親しい相手に対して、気軽に用件のみを伝えたい場合の「前略」の使い方、そして最後にビジネスシーンやフォーマルに使える他の頭語・結び(結語)についても紹介します。
「前略」の意味
「前略」は手紙やハガキ、メールなどの冒頭に使う頭語のひとつです。この字の通り、「前の文章を省きます」という意味で、いわゆる時候のあいさつなどを省略して、伝えたい内容を書き始めることができます。ただし、簡略化された手紙やメールになりますので、送る相手は親類や親しい人たちであると覚えておきましょう。
「前略」の結び(結語)は「草々」
頭語には必ず対になる結語があります。「前略」には「草々」です。「草々」を辞書で調べてみると、以下のような意味がありました。
1・簡略なさま。粗略なさま。また、もてなしや待遇が不十分なさま。「―に説明を終える」「お―でございました」→御草草(おそうそう)
2・「匆匆(そうそう)」に同じ。「―に引き上げる」
3・手紙文の末尾に、急ぎ走り書きをしたことをわびる意で、書き添える語。「前略」「冠省」などと照応して用いる。匆匆。
≪デジタル大辞泉≫Shogakukan Inc.より引用
草々は野生の草を表し、粗末な、というような意味合いになりました。
「前略」と「草々」は、「時候のあいさつを省いて用件のみを急ぎ走り書きし、粗略にて失礼しました」と告げる組み合わせなのです。
女性なら「かしこ」も有効
「前略」の結語には「かしこ」もあります。「かしこ」は女性だけが使える結語で、前文を省いている手紙でも時候のあいさつから始まる手紙でも、どんなときでも使うことができて便利。古語の「かしこし(畏し)」に由来し、恐れ多い、もったいないという意味があります。やさしい印象になり、相手に敬意を払うとこともできますので覚えておきたい言葉です。
「前略」を使う際の注意点
「前略」は、手紙等の前文を書かずに済み、簡略化したいとき、親しい相手に送るときにはとても便利。でも、使い方には少々注意が必要です。
使える場面と使えない場面がある
まず、前文をカットしているのでケースによっては失礼あたり、特に目上の方には使わないのがマナー。例外として、お見舞いの手紙では「前略」を使い、「とにかく心配している」という気持ちを表しましょう。
ビジネスシーンでも、社外文書や送付状に「前略」を使うのは基本、辞めておいた方がいいでしょう。前文として「いつもお世話になっております」「貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます」などのあいさつを記すといいですね。火急の際には「前略失礼いたします」で問題ありません。また職場内の同僚など親しい相手に文書を送る場合も「前略」でOKです。
「前略」を使わない方がいい場面
・目上の方やお世話になった方への手紙など
・ビジネスシーン
上記の場合で例外的に「前略」を使える場面
・お見舞いの手紙など
・親しい同僚への文書
・ビジネス上で火急の場合は「前略失礼いします」とする
「前略」の使い方を例文で紹介
具体的に前略の使える場面を例文で紹介します。結語はいずれの場合も「草々」です。
1:「前略 先日はおいしいお菓子をありがとう。家族みんなでいただきました」
「前略」は親しい人や友人に対して使うのが一般的。前文なしで気楽に、用件のみを伝えたいときに役立ちます。
2:「前略失礼いたします。取り急ぎご報告したいことがあります」
ビジネスシーンでも至急に報告したいことのある場合は、冒頭のあいさつは抜きで本題に入ります。
3:「前略失礼いたします。先ごろご入院されたとお聞きしました。心よりお見舞い申し上げます」
目上の方に対しても、お見舞いの場合は冒頭のあいさつは必要ありません。相手を思いやる気持ちを、まずはしっかりと伝えます。
「前略」「草々」以外の頭語と結び(結語)を紹介
ここでは、フォーマルに使える頭語・結語を紹介します。使う際は、時候のあいさつや相手の健康を気づかう気持ちなどの前文を必ず記しましょう。
1:「拝啓」「敬具」
手紙やハガキで、まず失敗のない組み合わせ。「拝啓」の拝はおじぎを表し、啓は「申し上げます」。つまり、「謹んで申し上げます」という意味です。「敬具」の敬は「うやまう」、具は「ととのえる」という意味があり、「謹んで申し上げました」となります。「敬具」の代わりに「敬白(けいはく)」でもOKです。
ビジネスシーンではあまり使われませんが、移転のお知らせやお礼を伝えるときなど、用件をていねいに伝えるときに使いやすい組み合わせです。
2:「一筆申し上げます」「かしこ」
拝啓と同じように使える頭語ですが、主に女性が用います。ゆえに結語は「かしこ」。さらにていねいにするなら「謹んで一筆申し上げます」という使い方も可能です。
3:「謹啓(きんけい)」「謹白(きんぱく)」
「拝啓」「敬具」よりさらに敬意の程度が上がります。特に目上の方にしっかりと敬意を示したいときに利用。「謹白」に代わり、「敬白」「謹言」でもOKです。
ビジネスにおいても、社名変更や移転、新社長の就任、式典への招待など、特別な出来事をていねいに取引先へ知らせるとき、また契約書など重要な書面にはこの頭語・結語がよく使われます。
最後に
「前略」「草々」は親しい人に用件のみを伝えたいときやお見舞い、火急の用のときに有効です。前文を考える手間もなく、気持ちや用件がストレートに伝わるのもメリットですね。一方で、プライベートでもビジネスでもフォーマルな手紙などには別の頭語・結語を用いること。この基本をしっかり押さえ、印象のよい、「できる人」を目指したいものですね。
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