この記事のサマリー
・「割愛」の意味は、「惜しいと思うものを、思いきって捨てること」です。
・「省略」は、簡単にするために一部を取り除くこと。
・人事用語(公務員・大学職員)としての「割愛」は、組織間の移籍を指す言葉であり、一般的な意味とは切り離して考える必要があります。
「時間の都合上、詳細は割愛します」は何気なく使っているフレーズですが、単に「カットする」という意味だけではありません。本来の意味を知ると、情報の価値を伝えながら、相手への配慮も込めることができるエッセンスが隠されていることが分かります。
この記事では、「割愛」の意味を確認し、誤解が生じやすいポイントを整理します。
「割愛」とは何か?
最初に、「割愛」の基本的な意味を確認しましょう。
「割愛」の意味
辞書では、「割愛」を以下のように定義しています。
かつ‐あい【割愛】
[名](スル)
1 惜しいと思うものを、思いきって捨てたり、手放したりすること。
2 公務員が、他の自治体や民間企業などへ籍を移すこと。また、大学の職員が、他大学へ籍を移すこと。手続きの形式上、移籍先が「人材を割愛してほしい」と申請することから。
3 愛着の気持ちを断ち切ること。恩愛や煩悩(ぼんのう)を捨て去ること。
引用(一部抜粋):『デジタル大辞泉』(小学館)
「割愛」という言葉の意味として重要なのは、「省くのは惜しい」という気持ちが含まれている点です。単に不要だから省くのではなく、本来であれば残したい内容を、事情により手放す判断を表します。
また辞書には、「公務員や大学職員が他の組織へ籍を移すこと」、「愛着の気持ちを断ち切ること」といった意味も記されていますが、いずれも「手放す」という共通点を持っています。
参考:『デジタル大辞泉』(小学館)
「省略」と混同しやすい理由
「割愛」とよく似た意味を持つ、「省略」との違いを整理しましょう。
「割愛」と「省略」は、「内容を減らす」点で共通していますが、ニュアンスが異なります。
「省略」とは、物事を簡潔にするために一部を取り除くことです。「効率」や「分かりやすさ」を向上するため、不要な部分を削り、要点をスッキリさせるという、合理性が強い言葉だといえるでしょう。
一方で「割愛」は、「惜しみながら手放す」という判断を含みます。本当は価値があるものだけれど、制約(時間や、記載スペースなど)によって、泣く泣く削るというニュアンスです。
実務においては、「効率化のために省く(省略)」のか、「価値を認めつつも、苦渋の決断で削る(割愛)」のか、という視点を持って、どちらを使うかの判断をしましょう。
参考:『デジタル大辞泉』、『日本国語大辞典』(ともに小学館)

ビジネスシーンでの「割愛」の使い方
ここでは、実務での使い方を整理します。
「割愛します」には理由を添える
「割愛します」を使う際は、省く理由を補足しないと、その意図が伝わりにくくなる点には注意が必要です。「時間の都合上」などの理由や、「詳細は後ほど資料にて」といった補足事項をセットで伝えることで、意図が正しく伝わります。
例文:
・「詳細につきましては、時間の都合上、割愛させていただきます」
・「会議では要点のみお伝えし、具体的な数値については割愛します。必要に応じて個別にご説明します」
・「重複する内容となるため、説明は割愛させていただきます」
参考:『デジタル大辞泉』、『使い方の分かる 類語例解辞典』(ともに小学館)

公務員・人事文脈における「割愛」
「割愛」は、公務員や人事の分野では、一般的な用法とは異なる意味で使うことがあります。この違いを知らずに読むと、誤解が生じやすいので確認しておきましょう。
公務員や大学職員の間で使う「割愛」とは?
「割愛」には「公務員や大学職員が、他の自治体や組織へ籍を移すこと」という人事用語としての意味があります。
これは、移籍先の組織が、現在の所属先に対して「人材を割愛してほしい」と申請することに由来しています。
一般的な「割愛」と混同しないために
この用語としての「割愛」は、人事異動を指す事務的な言葉であり、「内容を省く」という意味は含みません。
前後の文脈を踏まえて読み取り、意味を取り違えないよう注意することが重要です。
参考:『デジタル大辞泉』、『日本国語大辞典』(ともに小学館)

「割愛」に関するFAQ
ここでは、「割愛」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「割愛」を目上の人に使うのは失礼ですか?
A. 失礼ではありません。ただし、「時間の都合上、詳細は割愛いたしますが…」のように理由を添えるのがマナーです。
Q2. 不要な部分を削る場合も「割愛」と言っていいですか?
A. 「割愛」には「惜しい」というニュアンスがあるため、明らかに不要なものや、つまらない内容を省く場合は単に「省略」や「削除」を使います。
最後に
「割愛」は、単に省略することを表す言葉ではありません。「惜しいと思いながら手放す」という気持ちを含んだ、配慮のある表現です。
だからこそ、説明や情報を省く場面で使うときには、「なぜ割愛するのか」を伝えることが大切になります。
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