日常会話よりも、ビジネスシーンで使われることが多い「前者」「後者」という言葉ですが、使い方に戸惑ったことはありませんか? 説明の繰り返しを省略することができ、便利な言葉です。「前者後者」について、より詳しく見ていきましょう!
前者後者とは?
「者」は人を表すことが多い漢字ですが、「前者後者」の場合はどうでしょうか? まずは、改めて言葉の意味をおさらいしておきましょう。
意味
「前者後者」は「ぜんしゃこうしゃ」と読み、「前者」とは二つあるもののうち「前のもの」、「後者」は「後のもの」という意味です。「者」という漢字が使われていますが、対象は人以外にも使えます。
使う際の注意点
ビジネスで使われることからも、「前者後者」という言葉には若干かしこまったイメージがありませんか? 使う際の注意点もチェックしておきましょう。
1:3つ以上のものには使わない
「前者後者」は、比較するものが2つある時、先に説明したものを「前者」、後に説明したものを「後者」と言い表します。そのため、比較するものが3つ以上の場合は使えません。
2:セットで使う
「前者」と「後者」は2つでワンセット。先に説明したものを「前者」と言い表した場合、後に説明したものを「後の〜」「2つ目に説明した〜」など、「後者」以外の表現で言い表すことはできません。
さらに、言い換え表現の項目で詳しくお伝えしますが「前述後述」「前記後記」など、似たような言葉もあります。それぞれ「前者後者」の類語ですが、混同して使うことはできません。気をつけましょう!
3:会話よりも書面がベター
「前者後者」は、2つのものの説明が長くなり、繰り返しを避けるために使われる言葉です。読みづらさや見づらさ、何度も長文を書く煩雑さを解消してくれます。会話よりも、「前者」と「後者」がそれぞれ何を示しているのか確認しやすい、書面やメールで使うことに適しているといえるでしょう。
4:何を示しているのか明確に
長い説明を繰り返さなくてすむため、非常に便利な言葉ですが、その分、「前者」と「後者」がそれぞれ何を示しているのか、明確に書き記す必要があります。
比較される2つのものを対象としていることが多いため、前者は「人」の説明なのに、後者は「状況」の説明など、比較できないちぐはぐな内容にならないように気をつけたいですね。
使い方を例文でチェック!
「前者後者」の意味や使い方の注意点を確認したところで、さっそく具体的な例文を見てみましょう!
「人は2つのタイプに分けることができる。ひとりで過ごすことを好み、じっくりと物事に取り組み、外に刺激を求めないタイプと、人と交流することを好み、飽きっぽく、外に刺激を求めるタイプだ。前者を内向型と呼び、後者を外向型と呼ぶ。」
この例文では、人は「内向型」と「外向型」の2つのタイプに分けられると説明しています。内向型と外向型の説明が長いため、次の文で「前者後者」を使うことで、全体の文章がスッキリしますね。
類語や言い換え表現は?
「使う際の注意点」でも軽く触れましたが「前者後者」には、同じような意味を持つ類語がいくつかあります。この機会にチェックしておきましょう。
1:前述と後述
「前述(ぜんじゅつ)」とは前に述べること、「後述(こうじゅつ)」とは後で述べることです。「前述」に似た表現に「前出(ぜんしゅつ)」という言葉もありますが、何が違うのでしょうか?
2つの間に大きな違いがあるわけではありませんが、「前出」は「前出の人」「前出の話」「前出の件」というように使い、人や事物などを指す場合に使われている傾向が見られます。「前述」は経緯や内容に指す時に使われているようです。
2:前記と後記
「前記(ぜんき)」とはその文章より前に書くこと、「後記(こうき)」とはその文章より後に書くこと。類語には「上記(じょうき)」「下記(かき)」「右記(うき)」「左記(さき)」という言葉もありますね。
上記、下記、右記、左記はそれぞれ文字通り、上に書かれたもの、下に書かれたもの、右に書かれたもの、左に書かれたもの、という意味。基本的に「上記下記」が使えるのは横書きの場合のみで、縦書きの場合は「右記左記」を使います。「前記後記」はどちらでも使えると思うと便利ですね。
英語表現は?
日本語での類語や言い換え表現を確認したところで、英語表現も一緒に確認しておきましょう!
1:前者と後者
「前者」は「the former」、「後者」は「the latter」と英語で表現します。「前者より後者の方がいい」と言いたい時は「The latter is better than the former」と書けるでしょう。
2:前述と後述
「前述」は「above」、「後述」は「below」を用いて表現することが多いです。「前述」は「above-mentioned」や「aforesaid」、「後述」は「below-mentioned」など。これらは形式張った表現で、よりシンプルに「see above」「described later」と表現することもよくありますよ。
また、「前記後記」は、英語表現にすると「前述後述」と同様になることが多いです。
最後に
「前者後者」という言葉について、言葉の意味や使い方、言い換えや英語表現まで紹介しました。「なんとなく」知っている言葉は、改めて意味や使い方を調べる機会がないもの。 「前者後者」への理解を深めてみてください。
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