目次Contents
この記事のサマリー
・「泣きっ面に蜂」は「ついてない時に、さらに悪いことが重なる」という意味のことわざです。
・「泣きっ面に蜂」と「泣き面に蜂」はどちらも正解。
・似たことわざには、「踏んだり蹴ったり」「弱り目に祟り目」があります。
「すでに落ち込んでいるのに、さらに悪いことが…」そんな場面に思わず口をついて出てしまうのが「泣きっ面に蜂」ということわざ。でも、「実際にはどのような意味があるの?」と、迷うこともあるはず。
本記事では、「泣きっ面に蜂」の意味や由来、ビジネスシーンや日常会話での使い方、英語での表現方法まで、わかりやすく解説します。正しい知識を一緒にアップデートしていきましょう。
「泣きっ面に蜂」の意味とは?
まずは、「泣きっ面に蜂」の意味から確認していきます。
「泣きっ面に蜂」の意味
「泣きっ面に蜂(なきっつらにはち)」とは、痛かったり悲しかったりして泣いているところで顔を蜂に刺されて、一層つらい思いをする…。ただでさえつらい状況が、もっと痛いものになってしまう。その感覚を、シンプルかつ強烈に表現しています。
辞書では次のように説明されていますよ。
泣(な)き面(つら)に蜂(はち)
泣いている顔をさらに蜂が刺す。不運や不幸が重なることのたとえ。
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
筆者自身にも、まさにこの言葉がぴったり当てはまる出来事がありました。原稿の提出期限が迫るなかで風邪をひき、さらにパソコンが突然のフリーズ。「泣きっ面に蜂って、こういうことか…」と、思わず心の中でつぶやいたものです。

「泣きっ面」と「泣き面」、どちらが正しい?
「泣きっ面に蜂」と「泣き面に蜂」、どちらも見聞きしますが、結論から言うとどちらも正解です。
『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)によると、江戸時代後期には「泣きっ面を蜂が刺す」「泣く面を蜂が刺す」など、両方の形が見られたそうです。実際、「江戸いろはかるた」では明治前期まで「泣く面」の形が使われていたといいます。
しかし、20世紀に入る頃から「泣き面に蜂」の表現が優勢となり、現代ではほとんどの文献や辞書でこちらが主流となっています。
なお、話し言葉では古くから「泣きっ面を蜂が刺す」というように「っ」が入る形が使われていたようです。
参考:『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)
実際の使い方を例文でチェック
意味を知っていても使えなければ、もったいないですよね。ここでは、具体的な例文を挙げて、使い方を確認していきましょう。
社内プレゼンで資料の誤字を指摘された直後、突然の停電で発表が中断。泣きっ面に蜂とはこのこと…。
ビジネスシーンで、ひとつのミスに続けて予想外のアクシデントが発生。このように、「さらに追い打ち」という構図が「泣きっ面に蜂」の典型です。
寝坊して階段を走っていたら転んでしまった。しかも、そのとき財布を落としたらしい…。泣きっ面に蜂って、こういうことなんだな…。
朝からツイていない展開が連続し、「焦り・痛み・損失」が重なった状況。日常の中での「ちょっとした災難続き」を振り返るように使うと、共感や笑いに変える効果もあるかもしれません。
雨に降られてびしょ濡れ、さらにスマホが壊れた…。#泣きっ面に蜂な午後 #ついてない日
SNSでよく見られる、日常の不運を共感ネタとして投稿する一文。「びしょ濡れ」+「スマホ故障」というWショックを、ハッシュタグで「言語化して消化する」使い方です。
類語や似たことわざは? 違いも紹介
「泣きっ面に蜂」と同じように、不運が重なる様子を表すことわざは他にもいくつかあります。ここでは代表的な類語と、「泣きっ面に蜂」との違いを整理してみましょう。

踏んだり蹴ったり
何度もひどい目にあうことを指します。「踏んだり蹴ったり」の方が、「泣きっ面に蜂」よりも不幸が重なるイメージが強いでしょう。
弱り目に祟り目
ただでさえ弱っているときに、さらに災難や不幸が重なること。「泣きっ面に蜂」と近い意味を持つといえるでしょう。
対義語や反対の意味を持つ言葉は?
「泣きっ面に蜂」が「悪いことが重なる」というネガティブな状況を表すなら、思わぬ救いが訪れるポジティブな言い回しもいくつか存在します。ここでは、対比として使えることわざを紹介します。
地獄で仏(に会ったよう)
絶体絶命の中で、思いがけない助けに出会うことを表すことわざです。まさに「もうダメかも…」という瞬間に差し伸べられる救いの手。「泣きっ面に蜂」とは真逆の希望に満ちた表現です。
渡りに船
必要なものや望ましい条件がたまたま揃うことを意味します。偶然の幸運が味方してくれる様子を表す、前向きで軽やかな言葉です。仕事や人間関係でも「タイミングのよさ」を表現するときに使えます。
捨てる神あれば拾う神あり
一方では見放されても、別の場所には救ってくれる存在がいる。人とのつながりや希望を感じさせるこのことわざは、人生の浮き沈みに寄り添ってくれるような温かさを持っています。
英語でどう表現する? 英語のことわざを紹介
「泣きっ面に蜂」と同じように、不運が重なる状況を表す英語表現もいくつかあります。なかでも代表的なのが、次のことわざです。
Misfortunes seldom come singly.
この表現は、「不幸はたいていひとつでは済まない」という意味。日本語の「泣きっ面に蜂」に近い感覚で使われています。
参考:『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)

「泣きっ面に蜂」に関するFAQ
ここでは、「泣きっ面に蜂」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1:子どもにわかりやすく説明する場合、どう言えば伝わりますか?
A:「すでに悲しいことがあったのに、さらに悪いことが起きることだよ」と説明するとわかりやすいです。
例えば「転んで泣いていたら、さらに友だちにからかわれた」など、身近な例を出すと伝わりやすいでしょう。
Q2:「泣きっ面に蜂」はポジティブに使うこともできますか?
A:基本的にはネガティブな意味に限定される表現です。
ユーモアを込めて自虐的に使うことはできますが、ポジティブな状況に使うと違和感を与えるため注意が必要です。例えば「うれしいことが続いて“泣きっ面に蜂”だね」は誤用になります。
Q3:NGな使い方はありますか?(使い方の地雷)
A:他人の不幸に対して軽く使うのは避けたほうがいいでしょう。
例えば、深刻なトラブルに見舞われている人に「まさに泣きっ面に蜂ですね」と言うと、軽んじているように受け取られる可能性があります。このことわざは、あくまで「自分の不運」に対して使うのが安全です。
最後に
「泣きっ面に蜂」のような日でも、言葉の力でちょっとだけ気持ちを軽くできる。そんな風に言葉があなたの味方になる場面が増えることを願っています。
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