生兵法は大怪我のもととは?
「生兵法(なまびょうほう)は大怪我のもと」とは、半端な知識に頼った行動に対する警告を表す言葉です。ではこの言葉は、どのような警告を意味しているのでしょうか。
ここでは「生兵法は大怪我のもと」について、言葉の意味や由来について解説します。
生兵法は大怪我のもとの意味
「生兵法は大怪我のもと」は、人生の教訓のようなことわざです。「中途半端な技術や知識に頼りきって行動すると、何も知らずに行動するよりも大失敗をする」という意味で用いられます。
たとえば技術の未熟な剣士が、自身の技術や能力を過信して強い相手に挑んだとしましょう。言うまでもなく、実力差から大怪我をする可能性が高いです。反対に技術がない人は、その状態のままむやみに強者に挑んでいくことがないため、大怪我することはないでしょう。
つまり「中途半端な力で無謀な戦いに挑んでしまうと、ロクなことにならない」という教えが込められています。
生兵法は大怪我の基
出典:小学館 デジタル大辞泉
少しばかりの知識や技術は、それに頼ったり自負したりして、かえって大失敗をすることのたとえ。生兵法は大疵(おおきず)のもと。
生兵法は大怪我のもとの由来
「生兵法は大怪我のもと」の由来には、諸説あります。代表的なものは『清水物語(きよみずものがたり)』と『吾吟我集(ごぎんわがしゅう)』の2つとされており、ともに江戸時代に書かれました。
『清水物語』は、わかりやすく儒教の思想や政治論、道徳を説いた書です。そのなかに「なま兵法は大疵のもとゐ」といった一節があり、これが言葉の由来となっているという説があります。
『吾吟我集』は、作者である石田未得(いしだみとく)が四季や世間などを自作の狂歌としてまとめた書物です。「生兵法は大怪我のもと」の由来は、「中々にやめようさぎのなま兵法いぬにかまるるきずのもとひぞ」という一節からであるとされています。
生兵法は大怪我のもとの使い方
「生兵法は大怪我のもと」は、日常生活ではなかなか耳にしない言葉かもしれません。そのため、いざ使ってみようと思っても、使い方がわからないケースもあるでしょう。ここでは「生兵法は大怪我のもと」の使い方として、会話例や例文を解説します。
会話の例
「生兵法は大怪我のもと」を会話のなかで使うためには、以下の会話例を参考にしてください。
A:「パソコンの調子が悪いな…でも何が原因なのかわからないよ」
B:「パソコンなら任せて! 」
A:「プロに頼んだ方がよいんじゃない?」
B:「これくらいなら、僕が直せるよ! どれどれ…あれっ」
A:「ちょっと、フリーズしたじゃない! どうしてくれるの?」
B:「ごめん…まさしく、生兵法は大怪我のもとだね…」
Aさんの言うとおり、プロに依頼すれば適切に直ったかもしれません。しかし、知識の浅いBさんが触ったことでより深刻な不具合が生じてしまったともいえるでしょう。
例文
「生兵法は大怪我のもと」を文章のなかで使うためには、以下の例文を参考にしてください。
・「生兵法は大怪我のもと」と言うように、素人がインターネットで得た知識だけで精密機器を扱うのはよくない
・少し投資の本を読んだだけで投資家を気取ると、大損失を出してしまう。まさしく「生兵法は大怪我のもと」だ
・初段で師匠に挑戦するのはやめるべきだ。「生兵法は大怪我のもと」だろう
・インターネットの掲示板で中途半端な知識を披露すると、嘘つき呼ばわりされてしまう。これは「生兵法は大怪我のもと」と言わざるを得ない
生兵法は大怪我のもとの類語・言い換え表現
「生兵法は大怪我のもと」と似た意味を持つ言葉は、ほかにも複数あります。
ここでは、「生悟り堀に落ちる」「生兵法は知らぬに劣る」「生物知り川へはまる」の3つの言葉を解説します。ニュアンスの違いを理解した上で、こちらもあわせて覚えておくとよいでしょう。
生悟り堀に落ちる
「生悟り堀に落ちる(なまざとりほりにおちる)」という表現の「生悟り」は、浅はかで中途半端な悟りを指し、堀に落ちるというのは失敗や大きな危険を意味します。
つまり、「安易に得た悟りや不完全な理解では、後に大きな失敗や損害を招く」という警告を含む言葉です。
生兵法は知らぬに劣る
「生兵法は大怪我のもと」とほとんど同じ意味で用いられる言葉が、「生兵法は知らぬに劣る」という表現です。「なまびょうほうはしらぬにおとる」と読みます。
「生兵法は大怪我のもと」と同じく、「生兵法」という表現を使う言葉です。「わずかな知識や技術に頼って何かをしようとすると、大きな災難に見舞われる」ことを意味します。両者を比較すると「生兵法は知らぬに劣る」の方が、よりストレートな表現に感じられるかもしれません。
生物知川へはまる
「生物知(なまものしり)」とは、「いい加減な知識しか持たないのにもかかわらず、知ったかぶりをする人」のことです。「川へはまる」とは、文字通り「失敗する」ことを意味します。
つまり「生物知り川へはまる」とは、「多少の知識を頼りに振る舞い、しくじる」という意味です。
生兵法は大怪我のもとを正しく使おう!
「生兵法は大怪我のもと」とは、浅い知識や中途半端な能力を頼りに行動することは、どちらもない人よりも大怪我をするといった意味で用いられる言葉です。
自分の力を過信しすぎないようにという、教訓めいた表現といえるでしょう。
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