目次Contents
この記事のサマリー
・「怖い」と「恐い」はどちらも同じ意味を持ちます。
・「怖い」は常用漢字です。
・「怖がる」「恐れる」「恐怖」など派生語を整理すると、使い分けがより明確になります。
漢字で「こわい」と書くとき、手が止まることはありませんか? 例えば、苦手な上司について話すときは「恐い」を使うべきか、「ホラー映画」の感想を述べるときは「怖い」で統一すべきか…。迷ってしまうものですよね。
本記事では、この二つの漢字が持つ意味と、ビジネス文書や日常の会話で迷わずに使うためのポイントを、具体例を交えて紹介します。
「怖い」と「恐い」の違いを正しく理解する
まずは、「怖い」と「恐い」の意味を確認していきましょう。
「怖い」と「恐い」の意味と成り立ち
最初に、「怖い」と「恐い」の意味を辞書で確かめましょう。
こわ・い〔こはい〕【怖い/▽恐い】
[形][文]こは・し[ク]《「強(こわ)い」と同語源》
1 それに近づくと危害を加えられそうで不安である。自分にとってよくないことが起こりそうで、近づきたくない。「夜道が―・い」「地震が―・い」「―・いおやじ」
2 悪い結果がでるのではないかと不安で避けたい気持ちである。「かけ事は―・いからしない」「あとが―・い」
3 不思議な能力がありそうで、不気味である。「習慣とは―・いものだ」
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
「怖い」と「恐い」は、どちらも「おそれ」や「不安」を表し、意味の区別はされていません。
ビジネスシーンでは「怖い」がおすすめ
「怖い」は、常用漢字です。一方、「恐い」は常用漢字表にありません。公的な文章やビジネス文書では、常用漢字を使うことが推奨されています。
そのため、ビジネスシーンでの使用は、「怖い」で統一することをおすすめします。
日常会話での使い分け
友人との会話や日記、私的なSNS投稿では、どちらを使ってもいいでしょう。ただし、一文の中では、どちらかの表記に統一することをおすすめします。
例文
「ホラー映画って本当に怖いよね」
「この場所、なんだか恐い…」
参考:『デジタル大辞泉』、『日本国語大辞典』(小学館)

「怖い」と「恐ろしい」との違い
日常会話では同じように使いがちな「恐ろしい」という表現があります。「怖い」との違いを確認しながら、その使い分けの基準を整理してみましょう。
「怖い」
「怖い」は、話し手が主観的に感じる恐怖を示すときに使います。例えば、「私は雷が怖い」「夜道が怖い」といった表現は、自分の感覚や、身近な対象に対する、ぞっとするような気持ちを伝えています。
「恐ろしい」
一方で、「恐ろしい」は、対象の危険性を客観的に述べる場面に適しています。
「あの事故は恐ろしい」と言う場合、その事故は自分だけでなく、多くの人にとって重大で危険な出来事だ、という客観的な事実を表しています。
また「恐ろしい毒蛇に出会った。怖かった」と言えば、その毒蛇は誰にとっても命の危険を及ぼす存在であることを強調しています。それと同時に、話し手自身が強い恐怖を体感したことも伝えています。
それぞれの「恐ろしい」「怖い」を入れ換えることは、不自然です。
つまり「恐ろしい」は、個人の感覚というよりも、対象そのものが持つ危険性や深刻さを伝えるときに使う言葉です。
さらに「恐ろしい」は、「恐ろしく寒い」「習慣とは恐ろしい」というように、程度が甚だしいことを示す用法もあります。
「使い分けのポイント」
「怖い」と「恐ろしい」の使い分けのポイントは、「誰の視点か」です。主観的なおそれを表すときは「怖い」を、客観的な危険性を表すときは「恐ろしい」を使うと、表現がより明確になります。
参考:『デジタル大辞泉』(小学館)

「怖い」「恐い」に関連する言葉の違いを理解する
「怖い」「恐い」から派生した言葉は他にもあり、形容詞・動詞・名詞の違いによって少しずつ使いどころが変わります。ここを整理しておくと、使い分けがより分かりやすくなりますよ。代表的な関連語を見てみましょう。
動詞|「怖がる」と「恐がる」
動詞の「怖がる」と「恐がる」は、いずれも「こわい」と感じて身をすくませる動作を表します。
例文:「子どもが注射を怖がる」
動詞|「恐れる」
「恐れる」は「怖い」という感情を含みますが、それだけでなく「心配」や「畏敬」といった幅広い気持ちを表す動詞です。
・「失敗を恐れる」=失敗を不安に思う、懸念する
・「神仏を恐れる」=近づきがたいものとして、畏敬の念を持つ
参考:『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館)
名詞|「怖さ」
「怖さ」は恐ろしいことを表す名詞です。「災害の怖さを実感する」など、身近な感情を表す場面で使えます。
参考:『日本国語大辞典』(小学館)
名詞|「恐怖」
「恐怖」は、怖いという感情そのものを表す名詞です。「恐れ」よりも不安を感じさせる事柄が具体的で、程度が強い際に使います。
例文:「飛行機が大きく揺れて、強い恐怖を感じた」
参考:『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館)

「怖い」と「恐い」の違いに関するFAQ
ここでは「怖い」と「恐い」の違いに関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「怖い」と「恐い」の意味に違いはありますか?
A. ありません。
ただし、「怖い」は常用漢字であり、「恐い」は常用漢字ではありません。ビジネスシーンで使用するときは、「怖い」の使用をおすすめします。
Q2. 「怖い」と「恐ろしい」は同じ意味ですか?
A. 使い方に違いがあります。
「怖い」は主観的な恐怖感を伝えるときに使います。「恐ろしい」は対象の危険性を客観的に述べるときや、「恐ろしく寒い」のように程度が甚だしい意味にも使います。
最後に
「怖い」と「恐い」の意味に、違いがないことがわかりました。ただし、ビジネスシーンでは常用漢字である「怖い」を使うことをおすすめします。
一方で、小説やSNSなどでは、あえて「恐い」を選んで伝えたい気持ちを強めるのも手ですね。
TOP画像/(c) Adobe Stock



