「答える」と「応える」は意味が違う?
返信などで「こたえる」と書くとき、「答える」と「応える」どちらを使えばいいか迷いませんか? 意味は何となく知っていると思っても、実際に使うとなると、わからなくなってしまったということは珍しくありません。
「答える」と「応える」は、同じ読み方をしますが、意味が少し異なります。その違いを正しく理解し、適切に使い分けたいですね。まずはこの2つの言葉の大まかな違いをチェックしましょう。
「答える」と「応える」、意味の違いを大まかに紹介
「答える」と「応える」は次のような意味を持ちます。
▷【答える】
1:相手からかけられた言葉に対して返事をする
2:質問や問題に対して解答を出す
▷【応える】
1:働きかけに対して、それに添うような反応を示す。応じる。報いる
2:外からの刺激を身に強く感じる
3:反響する。こだまを返す
4:心にしみわたる。しみじみと感じる
5:あいさつする。断る。告げる
いずれも《デジタル大辞典》©SHOGAKUKAN Inc.より引用
上記から、「答える」は問いに返事をすること、「応える」は相手の働きかけに対して反応を示すことを指すということがわかりますね。
「答える」について、さらにくわしく紹介
ここからは、それぞれをくわしく見ていきましょう。まずは「答える」。「答える」はどのように使うのでしょうか?
「答える」の意味
問いに返事をするという意味を持つ「答える」。「はい」と返事をすることや、問い合わせや質問に対して説明をすることを意味します。また、「解答」や「回答」という熟語があるように、試験で問題を解くことも「答える」を使います。
「答える」はどう使う?
「答える」の使い方を見ていきましょう。
・名前を呼ばれたら、「はい!」と元気に答えるよう姪っ子にお願いした
・先生からの質問に答える際、緊張で声が震えた
・アンケートに答えるため、書くものを探した
・配送料についての質問に答えたところ、お客様から感謝された
・数学の問題に答えると、勘違いしていたことがわかった
「答える」は、自分に向けて投げかけられた相手からの問いに対して、リアクションをすることを意味する際に使います。
「応える」について、さらにくわしく紹介
「応える」についても見ていきましょう。「応える」の使い方も紹介しますので、参考にしてくださいね。
「応える」の意味
「応える」は相手からの働きかけに対して反応を示すことを指しますが、その反応が行動につながる場合に用いられます。「応」を使った熟語には「順応」「応戦」「応募」などがありますが、いずれも行動が伴う言葉ですよね。
また、「応える」は単に反応することを指すのではなく、相手や周囲の期待や要望に応じるという意味も持ちます。
他にも外部からの刺激に対して、心や体が反応するという意味も存在します。この場合「痛み」や「心にしみる」のような強い刺激を意味することがほとんどです。
「応える」はどう使う?
「応える」についても使い方を見ていきましょう。
・より多くの要望に応えることができるよう、尽力したい
・お客様の声に応えるため、サービス内容の見直しをする
・ファンの声援に応えるべく、彼は入念に準備をした
・怒られたのに、全く応えることがないから驚いた
・同僚が私に気づいたが、電話中だったため手を振って応えるだけにした
また、「外部からの刺激」についての使い方は次の通りです。
・このところの暑さが身体に応える
・氷点下の寒さが骨身に応え、外に出るのが嫌になった
・お客様からの感謝の手紙に心が応えた
・近しい人が闘病中であること知り、心が応えている
・疲弊した心に、母の優しい言葉が応える
「応える」のイメージは掴めたでしょうか? 「応える」には、行動や心、体が反応したり、影響を受けたりするニュアンスが含まれるのがわかりますね。
「答える」と「応える」の使い分けは?
読み方が同じで、似た意味合いを持つ「答える」と「応える」。次のことを覚えておくと、使い分けに迷った時に役立つかもしれません。
<答える>
・相手から投げかけられたことに対して、返事・リアクションをすること
<応える>
・相手からの期待や要望に応え、行動を起こすこと
ビジネスシーンで「答える」が使われるのは、「お客様からの問い合わせに答える」「取引先の質問に答える」のように、単純にリアクションする場合です。
対して、「応える」は、「期待に応える」「ニーズに応える」のように使いますが、この言葉のあとには「尽力します」「精進します」などが続くケースがほとんど。つまり、相手に意気込みや熱意、やる気を伝える際は、「応える」を使うと覚えておくといいですね。
「応える」は、単純なリアクションに留まらず、それに伴う心の動きや行動がある場合に使われます。
「堪える」についても知っておこう
「答える」「応える」と同じ読み方の「堪える」についても見ておきましょう。「堪える」は、「応える」に似た意味を持ちます。
「堪える」の意味と使い方について
▷【堪える】
1:耐える。こらえる。がまんする
2:(多く、動詞の連用形に付いて複合語をつくる)耐えつづける。保つ
《デジタル大辞典》©SHOGAKUKAN Inc.より引用
「応える」に似た意味を持つ「堪える」は、我慢や耐えることを指します。肉体的・精神的苦痛や、経済的・物質的困難が生じても、我慢して踏みとどまるというようなシーンで使われています。
<堪える>
・ひどい状況に堪えたけれど、何とか乗り越えた
・頭痛を堪えながら、最後まで会議に参加した
・痛みを堪えていたけれど、いつのまにか眠っていた
・これだけの量があれば、半年は持ち堪えるだろう
「応える」と「堪える」の違いとして、「期待」「要望」「気候による刺激」などのニュアンスを含む場合は「応える」、「苦痛」「我慢」などが強い場合は「堪える」が適していると覚えておくといいかもしれません。
読み方は同じでも、意味が少し異なる言葉は他にもたくさんあります。なんとなく使うのではなく、随時意味を調べながら、適切に言葉を使うようにしてくださいね。
最後に
「答える」と「応える」は読み方が同じですが意味は少し異なります。相手からの投げかけに対してリアクションをするのが「答える」。リアクションに熱意ややる気を込めたり、行動を起こしたりするのが「応える」のように覚えておくといいですね。言葉の使い分けに不安がある場合は、調べることをおすすめします。都度調べ、適切な言葉を使ってくださいね。
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