「狐につままれる」の意味とは?
「狐につままれたようだ」という表現は、なんとなく聞き覚えがありますよね。昔話などで聞いたことがあるかもしれません。比喩表現を用いたこのことわざ。実は正しい意味を理解できていないという方も多いのではないでしょうか? 改めて意味を確認しておきましょう!
「狐につままれる」とは、何が起こったのか原因や過程も分からないまま、ぽかんとすること。思いがけない出来事が急に起こった時、頭が真っ白になるような状況のことをいいます。例えば、いつも通り家に帰ったら妻の荷物だけがきれいさっぱりなくなっていた時、「狐につままれたような気分になった」と表現できるでしょう。実際に使う時は「狐につままれたようだ」とか「狐につままれたような気分になる」など、比喩表現として用いることが多いです。
間違えやすい表現として「狐に包まれる(つつまれる)」がありますが、このような表現は存在しません。「つままれる」と「つつまれる」を間違えないように注意しましょう。
「狐につままれる」の由来って?
「狐につままれる」と聞くと、狐がつまむってどういうこと…? と不思議に思う方もいるでしょう。「狐につままれる」は漢字で表記すると「狐に抓まれる」となります。「抓む」は、狐などが人をだます、または化かすというような意味。ではなぜこのような漢字が使われているのでしょうか?
狐は、昔からずる賢い生き物の象徴として語られることが多いでしょう。『イソップ物語』やフランス中世の『狐物語』では共通して、悪知恵を働かせて人をだましたり、人間に化けたりする狐が描かれています。なぜそのように描かれるかというと、それは昔から人間と狐の精神的な結びつきが強かったからなのだそう。
このような、狐は人間をだますというイメージが「狐につままれる」の語源となっています。「狐に抓まれたよう」というのは、「狐にだまされた時のように人々が唖然とする様子」を指しているのです。そのため、同じ読み方でも「摘まむ」と表記してしまうと全く別の意味になってしまうので、漢字表記もしっかり覚えておくと良いですよ。
使い方を例文でチェックしてみよう!
では実際に「狐につままれる」を使った例文をいくつか見ていきましょう。先ほども述べたように、このことわざは比喩表現であるため、「狐につつまれる」よりも「狐につままれたようだ」のように使うのが一般的です。ここで使い方をマスターしてしまいましょう!
1:急に異動が決まって、狐につままれたような気分だ。
「狐につままれる」は、思ってもいないことが突然起こった時によく使います。ビジネスでの人事異動は、唐突に切り出されることもありますよね。現実をすぐには受け入れられないという場合に、使えることわざでしょう。
2:飲み会で盛り上がっていたはずなのに、朝目が覚めたら誰も部屋にいなかった。まるで狐につままれたようだった。
昨日まで大人数で盛り上がっていたのに、寝ている間に皆帰ってしまって一人取り残されてしまうというようなシチュエーション。頭の中では楽しくて賑やかな記憶が残っているのに、現実では誰もいない虚無感というギャップがまさに「狐につままれたようだ」と表現できるでしょう。
皆さんは、お酒を飲んで何か失敗したエピソードはあるでしょうか? その場では楽しい気分になれても、後から苦い経験をしないように気をつけたいものですね。
3:迷子センターにやってきた小さな男の子は、ぽかんとしていて狐につままれたような様子だった。
迷子になった子供の中には、自分が迷子になったという自覚がなかったり、何が起こっているか理解できていなかったりする子もいるでしょう。迷子センターにやってきたものの、ぽかんとした表情を浮かべる子も多いのではないでしょうか? このように、「狐につままれる」は他人の表情や様子を表す表現としても使うことができます。
4:デート中に彼氏から不意に別れを切り出され、まさに狐につままれたようだった。
いつも通りデートしていたのに、突然彼氏から「別れたい」と言われた時、まさに何が何だか分からなくて狐につつまれたような気分になりますよね。何が原因だったのか、いつから気持ちがすれ違っていたのかなど、何も分からないまま唖然としてしまうでしょう。このような状況も「狐につままれる」を使って表現することができます。
「狐につままれる」の類語表現を3つ紹介!
最後に「狐につままれる」の類語表現について見ていきましょう。ここでは、類語として「狐に化かされる」「寝耳に水」「鳩が豆鉄砲を食ったよう」の3つを取り上げて解説していきます。ぜひ参考にしてみてくださいね。
1:狐に化かされる(きつねにばかされる)
「狐につままれる」とニュアンスは同じで、狐にだまされたかのように唖然とすること。狐ではなく、狸(たぬき)であるケースも。
2:寝耳に水(ねみみにみず)
思いがけない知らせや出来事が起こって驚くことをいいます。元来は、眠っている時に水が流れる大きな音がして、あわてふためいたことが由来とされていました。しかし、いつしか「寝ている間に水が耳に入る」という意味で解されるようになったのだそうです。
3:鳩が豆鉄砲を食ったよう(はとがまめでっぽうをくったよう)
突然のことに驚き、あっけにとられてきょとんとしている様子を表すことわざ。「鳩に豆鉄砲」と省略して使うこともあります。「急な出来事で、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた」というように、主に表情について用いることが多いでしょう。
最後に
「狐につままれる」のように、そのまま読んでも理解しがたい比喩表現のことわざは多く存在しますよね。そのような言葉は意味だけでなく、由来を調べてみるとさらに理解が深まることが多いでしょう。気になることわざがある方は、ぜひ語源についても調べてみてくださいね。
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