「思う」とは?
日常的に使う「思う」という言葉。「思う」が持つニュアンスはたくさんあります。「ある物事について考える」「目の前にない物事について考えを及ばせる」「希望する」「気にかける」「愛し、慕う」「感じる」「表情にだす」。これらすべては「思う」に当てはまります。
ところが、「おもう」は「思う」という漢字だけではありません。皆さんは、いくつ思い浮かぶでしょうか? 「想う」がぱっと思い浮かんだ人が多いかもしれませんね。
本記事では、「思う」と「想う」の違いやその他の「おもう」について見ていきましょう。記事の後半では英語表現についても紹介します。
「おもう」には何種類の漢字があるの?
「思う」と「想う」の違いを説明する前に、そもそも「おもう」には何種類の漢字があるのかを紹介します。
『デジタル大辞泉』の見出しには4種類の漢字を扱っています。以下のように記述されているので、参考にしてみてください。
おも・う【思う/想う/憶う/念う】
なお、『デジタル大辞泉』では、それぞれの漢字の使い分けについて言及されていません。「ある物事について考える」「目の前にない物事について考えを及ばせる」「希望する」「気にかける」「愛し、慕う」「感じる」「表情にだす」という意味をまとめて説明しています。
「思う」と「想う」の違い
「おもう」という言葉や漢字の辞書的な意味合いについて説明しましたが、では「思う」と「想う」に違いはないのでしょうか? 一般的に、「思う」はどんなときでも使える万能的な漢字で、「想う」は恋愛対象に向かって使う漢字という認識を持っている人が多いようです。
そこで、「思」と「想」の漢字そのものが持つ意味について見てみましょう。
思う
「思」は「おもいめぐらす」「こまごま考える」というニュアンスを持つ言葉です。それは「思考」や「思案」「思慮」などの単語に用いられていることからもうかがえますね。汎用性が高く、漢字の書き分けに迷ったら、この「思う」を使うことをおすすめします。
「急用を思い出したから、後から行きます」「私は〇〇さんの意見も一理あると思っている」などと言うように、プライベートでもビジネスシーンでも使うことができる言葉です。
想う
「想」も「思」と同様に「考える」というニュアンスがありますが、その他に「思い浮かべる」「なつかしむ」「願う」「~のようである」という意味合いも含まれています。
また、「想」という漢字は、「心」と「相」が組み合わさっている漢字であり、「相」には「相手を見る」という意味があるため、「相」には相手を見て考える、思いを寄せるというニュアンスもあるのです。
例えば、「15年まえに抱いていていた彼への想いを、ついに本人に伝えることができました」などというように使われます。
「思う」と「想う」の違い─まとめ
それぞれの漢字の意味から、「想う」にはただ考えるだけでなく、人やある物事を心に思い浮かべるというニュアンスが強いということが分かったのではないでしょうか。懐かしいと感じたり、人や物ごとに強く思いを馳せたりするときに「想う」という漢字を用いることが多いようです。
その他の「おもう」について
「おもう」には「思う」や「想う」のほかにも「憶う」や「念う」などがあります。この二つのニュアンスについても、それぞれの漢字から深掘りしてみましょう。
憶う
「憶」は「心にとめる」「思い出す」という意味があります。「記憶」「追憶」などの言葉を想像すると納得しやすいのではないでしょうか。心にとどめて忘れない思いを表すときに使いますが、「憶う」として使う機会は少ないかもしれませんね。
「遠くに故郷の山を見て、何年も会っていない両親のことを憶う」などと使います。使うとしても口頭で、書くことはあまりないかもしれませんが、ひとつの参考にしてみてください。
念う
「念」には「気持ち」「心配り、注意」「かねてからの望み」などのニュアンスがあります。また、仏教の言葉として「心の働き」や「記憶する働き」「非常に短い刹那の時間」「あるものに向かって集中すること」という意味も持つ言葉です。
「人に施(ほどこ)しては慎みて念うこと勿(なか)れ」ということわざがあります。「人にした恩恵は、つとめて忘れようとしなければならない」という意味です。人から与えられた恩恵は忘れずにいながらも、自分が人に施したことは見返りを求めずにすすんで忘れるべきだという利他的な美徳を表現しています。
「思う」の英語表現とは
ここまで見てきたように、「おもう」にはさまざまなニュアンスがあります。英語でもいくつかの表現の仕方があるので最後に押さえておきましょう。
1:think
「思う」に相当する英語が「think」にあたります。考慮するというニュアンスで「consider」が使われる場合もあるようです。
2:suspect
「彼女がしたんじゃないかって、怪しいと思っているんだ」というような「訝しく思う」ニュアンスには「suspect」を用います。「I suspect that he did it」でこのニュアンスを伝えられますよ。
3:be in love(with)
恋愛において、相手のことを「想う」というニュアンスを「be in love(with)」や「fall in love」で表すことができます。仕事や物事などに愛着があるというときにも、この表現が使えますよ。ただし、人間関係において「be in love(with)」を使う場合には、ニュアンスに肉体関係も含まれるため、注意が必要です。
最後に
「おもう」という言葉には、「思う」「想う」「憶う」「念う」などさまざまな漢字が当てられています。口頭の会話では必要ありませんが、文章などにする際には書き分けが必要な点が、日本語の難しさであり、表現の幅の広さという魅力でもあるのです。
本記事では、「思う」と「想う」の違いや、その他の「おもう」のニュアンスの違いについて紹介しました。英語表現もいくつか紹介していますので、ぜひひとつの参考にしてみてください。
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