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この記事のサマリー
・「思う」と「想う」は、どちらも辞書にあり、一般的に使用します。
・ただし、「想う」は常用漢字表にない読み方になります。
読みが同じ「おもう」という言葉でも、「思う」と「想う」のどちらの漢字を使うべきか迷った経験はありませんか?
ビジネス文書やSNSの投稿、あるいは心からの感謝や恋愛感情を伝えるときなど、場面に応じて適切な表記を選ぶことは、意図を正確に伝える上で重要です。
本記事では、辞書の情報をもとに、「思う」と「想う」の表記の違いを整理し、用途や使い方を分かりやすく紹介します。
「思う」と「想う」の違いを正しく整理する
「おもう」という言葉は日常で頻繁に使いますが、漢字の使い分けには迷いやすい側面があります。最初に、辞書に基づいた意味と表記の傾向を確認し、その違いを整理します。
辞書が示す「おもう」の4つの表記
『デジタル大辞泉』(小学館)では、「おもう」の表記として「思う」「想う」「憶う」「念う」の4種類が示されていますが、これらの使い分けについて辞書に厳密な規定はありません。
ただし、「想う」には「▽」のマークがついています。これは『デジタル大辞泉』(小学館)において、「常用漢字表にない音訓」を表します。つまり、「想う」は常用漢字表外にはない読み方です。
おも・う〔おもふ〕【思う/▽想う/▽憶う/▽念う】
[動ワ五(ハ四)]
1 ある物事について考えをもつ。考える。
2 眼前にない物事について、心を働かせる。
3 願う。希望する。
4 心にかける。心配する。気にする。
5 慕う。愛する。恋する。
6 ある感じを心にもつ。感じる。
7 表情に出す。そういう顔つきをする。
引用(一部抜粋):『デジタル大辞泉』(小学館)
「おもう」の主な意味は「考える」「願う」「心にかける」「慕う・恋する」「感じる」など、広範囲に及びます。
「思う」と「想う」は何が違うのか?
「思う」と「想う」の違いは、「思う」は常用漢字表にある読み方であり、「想う」は常用漢字表にない読み方だということです。
したがって、公的な文章やビジネスシーンでは、「思う」を使うことをおすすめします。

「おもう」は、どの漢字を使うべきか?
ここでは、ビジネスメール・SNS・恋愛表現という3つの場面で、どちらの漢字を使うべきか整理します。
ビジネスメールでは「思う」を推奨
前述の通り、公的文書やビジネスメールでは、「思う」の使用をおすすめします。
例文:「この件は、慎重に進めるべきだと思います」
SNSや私的文では「思う」でも「想う」でもOK
SNSやメッセージ、手紙など、感情を込めて気持ちを伝えたい場面では、「思う」でも「想う」でもはたまた「憶う」や「念う」を使ってもいいでしょう。
場面に合わせた漢字を選び、「おもい」を強く伝えてみてはいかがでしょうか。
例文:「あのときのことを、今でもふと想う瞬間があります」
恋愛表現では「想う」が定着傾向
恋愛に関する表現、特に相手への気持ちを届けたい場面では、「想う」を用いることが多い傾向にあります。「想」という漢字には、「思いを寄せる」という意味があるからかもしれませんね。
例文:「あなたを想うだけで、心が穏やかになります」
参考:『デジタル大辞泉』、『新選漢和辞典 Web版』(小学館)

具体例と迷わず選べる比較一覧
どの表記にしようか迷ったときにすぐ判断できるよう、それぞれの特徴と使い方の例を整理しました。
「思う」「想う」「憶う」「念う」の違い
「思う」
「思う」は、考える・判断する・予測するなど幅広い意味で使える、一般的な表記です。公的な文書やビジネスシーンでは「思う」を推奨。
関連語例:「思案」「思想」「思慮」「意思」
「想う」
心の中で感じることや、しみじみとした感情を表すときには「想う」を選ぶことが多い傾向があります。感情を伝える恋愛、私信、SNSなどに向いています。
関連語例:「想像」「想定」「理想」「感想」
「憶う」
記憶や追想を意味する、やや古風な表記が「憶う」です。詩や文学作品などで用いられることがありますが、日常的な使用は少なく、ビジネス文書には不向きです。
関連語例:「憶念」「記憶」「憶測」「追憶」
「念う」
「念う」は、「心に強く願う」という意味で使います。仏教的・宗教的な文脈や、古典的な表現で見られるものの、現代文ではほとんど使われていません。
関連語例:「念願」「念書」「念力」「信念」
すぐ使える例文
【ビジネス】
・「この提案は実現可能だと思います」
・「早急な対応が必要だと思います」
【SNS・私的な文】
・「今もあなたの言葉を想っています」
・「ふとした瞬間に、君を想い出しました」
【恋愛表現】
・「あなたを想う気持ちは、ずっと変わりません」
・「大切に想う気持ちを、きちんと伝えたいです」
参考:『デジタル大辞泉』『日本国語大辞典』(ともに小学館)

「思う」と「想う」の違いに関するFAQ
ここでは、「思う」と「想う」の違いに関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 公的な文書やビジネスメールではどちらを使うべきですか?
A. 「思う」をおすすめします。「想う」は常用漢字表外の読み方となります。
Q2. 辞書には「想う」を恋愛に限定する定義がありますか?
A. そうした規定はありません。ただし、「想」という漢字には「思いを寄せる」という意味があります。
Q3. 「想い出」と書くのはNGな使い方ですか?
A. NGではありませんが、「思い出」の方が一般的でしょう。
最後に
「思う」と「想う」の違いは、常用漢字表にある読み方か否かでした。ビジネスシーンでは「思う」をおすすめしますが、私信やSNSなどでは、自由に漢字を選びたいですね。
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