働き方を見直したい
「働き方改革」というと、具体的にどのようなものをイメージしますか? まさに今、自分の働き方についてお悩みの方や、働き方を見直したいという方もいらっしゃるかもしれませんね。
この記事では、社会保険労務士の塚原美彩さんと⼀緒に考えていきましょう。
先日、Oggi.jp ブレーンの⽅からこんなお悩みをいただきました。
「畑違いの部署に異動し、責任も重くなりました。今までのバックグラウンドを活かすことが難しい仕事です。うまくいかないことと、責任の重圧で、軽い睡眠障害があります。悪くなる前に、メンタルクリニックやカウンセリング等に行くか悩んでいますが、どこに相談するのが良いかわかりません。
また、残業が一定時間を超えると産業医面談があるのですが、そこで相談したら、評価が下がるのかも不安です」(Hさん・37歳・女性/東京都)
これまでの経験が活かしにくい環境で、責任も重いとなると、かなりのプレッシャーですよね。塚原美彩さんにお話をおうかがいしました。
「かなり心身に負担がかかっている状況と思われます。睡眠障害が出てきているというのも、特に心配ですね。
はじめにお伝えしたいのは、産業医との面談についてです。相談して良いのだろうかと、不安になってしまう気持ちもありますよね。ですが、会社は労働者による産業医への相談に対し、評価を下げるなど、不利益なことをしてはならないとされています。
また、産業医以外にも、『上司や人事へ相談したら、評価が悪くなるのでは』という心配もお持ちかもしれませんね。しかし、これは相談のタイミングと、伝え方次第と言えるでしょう。
例えば、よくある事例が、一人で抱え込んでしまい、ある日突然出社できなくなってしまうパターンです。業務の引き継ぎが出来ないまま、休職になってしまうことも少なくありません。この場合、会社に与える影響がどうしても大きくなってしまいますよね。
一方で、不調を感じた初期段階から相談した場合、それだけで評価が悪くなることは考えにくいでしょう。この時、特に伝え方が重要ですので、次の3つのポイントを押さえるようにすることがおすすめです。
・話す内容をあらかじめ書いておく
相談内容を前もって書いておくことで、感情的になりにくく、伝えたいことが整理しやすくなります。
・自分の状況を冷静に伝える
あくまで『今の自分の業務や心身の状態を、冷静に伝えること』を念頭に話すことを、お勧めします。例えば、会社への不満や愚痴などは、マイナスの印象を与えてしまう可能性がありますので、気を付けたいポイントですね。
・極端な考えを控える
辛い時は、『もう辞めるしかない』だったり、『自分が悪い』もしくは、『会社が悪い』という考えになってしまうこともあるかもしれませんね。ですが、早めに相談すれば、会社は業務配分や分担の見直しなどを考えることができます。
もちろん、会社側の事情もありますが、『会社と相談して現実的な方向性を見つけていく』という意識で話に臨めば、状況を改善しやすくなるでしょう。
とはいえ、『いきなり会社に相談するのは不安』ということもあるかもしれません。その場合、まずは厚生労働省の相談サービスである、『働く人のこころの耳』などを利用してみるのも、良いかもしれません。誰かに話を聞いてもらうことで、頭の中や気持ちが整理されることも多いのではないでしょうか。
また、『働く人のこころの耳』は、医療機関ではありませんが、必要に応じて適切な機関へつなぐ役割も持っています。睡眠障害について、医療機関を探す際の参考にしてみてはいかがでしょうか」(塚原さん)
このように、仕事によって、心身のバランスを崩してしまう方は、少なくないようですね。ですが、最近では働き方改革などの流れもあり、働く人の心と身体の健康に配慮する動きも徐々に広まってきているようです。
では、働き方改革とは、具体的にどのようなものなのでしょうか? ここからは、働き方改革関連法について解説します。ご自身の今後の働き方を考える際、参考にしてみてくださいね。
働き方改革はいつから?
働き方改革は、いつから始まったのでしょうか?
働き方改革は、2019年4月から順次スタートした、労働に関する法律の改正のことです。この背景には、少子高齢化による労働力不足や、過労、育児、介護など、様々な課題があるようですね。
では、具体的にどのような変更があったのか、働き方改革関連法についても見ていきましょう。
働き方改革関連法とは?
働き方改革関連法は、多岐に渡ります。ここでは、特におさえておきたい、主な変更点を解説します。
1:時間外労働の上限規制
法律上の労働時間は、原則1日8時間以内、1週40時間以内となっています。この基準を超える場合は「法定時間外労働」となり、これを「残業」と呼ぶことも。働き方改革による法改正により、残業時間には次のような上限が設けられました。
・原則:月45時間以内・年360時間以内
・例外(年6回まで):月100時間未満(休日労働を含む)・年720時間以内
なお、例外のパターンでも、複数月の平均が月80時間以内(休日労働を含む)になるようにしなければなりません。
2:年5日有給休暇取得の義務化
2019年4月から、従業員に年5日の有給休暇を取らせることが、会社に義務付けられました。
「有給休暇を取りにくい」という人が多かったことが、背景にあるようですね。なお、対象になるのは、年10日以上の有給休暇が発生する人。会社の義務とすることで、休みやすくするという目的があるようです。
今後の働き方改革の動きは?
今後予定されている働き方改革の動きは、どのようなものがあるのでしょうか? ここでは、特に押さえておきたい「残業代」に関しての変更点を見ていきましょう。
原則、月60時間を超える残業(時間外労働)は、50%の割増賃金率で計算することが、義務になっています。ただし、中小企業はこの義務が猶予されており、25%の割増で良いこととされていました。
ですが、2023年4月以降は、この猶予がついに廃止されます。残業代の負担が、これまでより多くなりますので、中小企業も残業を減らす動きが出てくると予想されますね。
最後に
この記事では、働き方改革関連法の概要や、今後の動きについて解説しました。働き方改革は、働く人にとってもはや切っても切り離せないトピックですので、おさえておくと安心ですね。
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※本記事はOggiブレーン会員に対して、2022年10⽉に⾏った「働き⽅アンケート」に回答いただいたOggi読者の回答をもとにしています。
塚原美彩(つかはらみさ)さん 開業社会保険労務士
2016年社会保険労務士資格を取得。趣味は日本酒酒蔵巡り。現在は独立開業し、企業の人事労務コンサル、ポジティブ心理学をベースとした研修講師として活動中。
ライター所属:京都メディアライン