朝、二度寝してしまう… 考えられる原因は?
質の高い睡眠を取れていない
内科医の成田亜希子先生によれば、単に長時間睡眠を取るだけでは「質の高い睡眠を取った」とは言えないそう。
「私たちの睡眠にはサイクルがあり、おおよそ90分の間隔で『レム睡眠』と『ノンレム睡眠』を繰り返しています。
まず、私たちが眠りに落ちると、『ノンレム睡眠』が引き起こされます。ノンレム睡眠は深い眠りで脳と身体をしっかり休める睡眠であり、45分ほど続くと次は『レム睡眠』へと移行します。レム睡眠は身体は休んでいるものの脳は活動している状態であるため、眠りが浅い状態です。
そして、45分ほどのレム睡眠が続くと再びノンレム睡眠の層に移行していくのです。このため、身体も脳もしっかり休めるには十分なノンレム睡眠をとる必要があり、朝すっきりと目覚めるにはレム睡眠の最中に起きるのがよいとされています」(成田先生)
医学的に「睡眠の質」というものは定義されていないそうですが、一般的には以下の3つを満たす睡眠が「質の良い睡眠」と言えます。
・速やかに寝付けること
・途中で起きずにぐっすり眠ること
・眠気なくすっきりと起床できること
長時間寝た! と思っていても、実はちゃんとした睡眠が取れず睡眠不足状態になっている人は多いようです。
精神的なストレス
悩みや精神的なストレスが二度寝につながっている可能性も。
たとえばストレスやうつ病など、精神疾患がある場合は入眠障害に陥りやすいと言われています。他にも早朝覚醒や熟眠障害などを発症する可能性も。
こういったストレス・過度な緊張などが睡眠に影響し、睡眠の質を低下させて朝起きられないことにつながっているかもしれません。
低血圧
医学博士の増富健吉先生によると「低血圧」は身近で深刻な問題だと言います。
「血圧が低いと文字通り『テンションが上がらない』。そう、血圧が低いとなんとなく元気が出ないんです。若い女性を中心に血圧の低めの人たちが多いのです」(増富先生)
【医師監修】朝が苦手・だるい・めまい… 低血圧の症状を軽くするためのセルフチェック
二度寝をするとどんなデメリットがある?
生活リズムが狂う
人間は日光を浴びることでその日のリズムを整えると言われていますが、二度寝をすることでこのリズムが乱れてしまう可能性が。
リズムが乱れ体内時計が狂ってしまうと、朝起きたばかりなのにずっと眠いと感じたり、夜寝る時間が遅くなったり、平日の睡眠不足を解消しようと休日にまとめて眠ったり、リズムがどんどん乱れていくという悪循環に陥ってしまいます。
美容にも悪影響が…
二度寝の原因が睡眠不足だった場合、改善しなければ美容にも影響が。ダイエットカウンセラーの及川美由紀さんによると、肌荒れや太りやすいといった弊害が出るそう。
「睡眠中は『成長ホルモン』が多く分泌され、日中の活動でダメージを受けた細胞を修復・再生・肌のターンオーバーの正常化を促します。疲労回復や肌を綺麗に保ち、アンチエイジングには欠かせないホルモンです。
子どもの成長に必要なものと思われがちですが、大人になっても分泌されていて、睡眠が不足すると成長ホルモンは十分に分泌されません。別名『若返りホルモン』とも呼ばれます。この成長ホルモンによって肌は新陳代謝を起こし、古い角質や汚れを落として新しい肌へと生まれ変わります。
肌のターンオーバーには周期があり、約6週間かけて細胞が入れ替わります。しかし、睡眠不足でターンオーバーのサイクルが遅くなると、肌が荒れてしまうため注意が必要です。寝不足になると肌がカサつくのは、新陳代謝が落ちている証拠です」(及川さん)
「睡眠時間が短いと『レプチン』という食欲を抑えるホルモンの分泌が低下します。レプチンの分泌が低下すれば食欲を抑える働きが落ちて、つい食べ過ぎることになります。睡眠時間が短くなるほど、レプチンの分泌が減少する一方、食欲を高める『グレリン』というホルモンが増えます。
その結果、必要以上に食べてしまい、肥満になりやすく、生活習慣病のリスクも高まります。起きている時間が長ければ、活動している時間も増え、その分痩せそうに思いますが、実は結果は真逆なのです」(及川さん)
肌がカサカサなのは「若返りホルモン」が少ないせい!? ○○不足が原因かも…
専門家が推奨する二度寝しない方法とは
日常生活の習慣を改善する
二度寝防止のためには、質の良い睡眠をしっかり取ることが大切。そのためには、日常生活の習慣を改善することがまず優先したいこと。
成田先生によると、まずは起床時間と就寝時間を規則正しく整えることが大切だそう。これによって良質な睡眠に関与する「メラトニン」の分泌を安定させることができるのだとか。
成田先生は他にも、食事は就寝時間の3時間前までに済ませたいと言います。
「就寝前に食事を摂ると、入眠時に胃や腸が活発に動いた状態となるため、睡眠が浅くなってしまうことがあります。また、脂肪分が多い食事は消化に時間がかかるため、夕食時はほどほどにすることも大切です。食事は、就寝の3時間前までに済ませ、入眠時は心身ともに休める体制を整えましょう」(成田先生)
さらに、ストレスを溜めない工夫も心がけることを推奨するそう。
「ストレスは交感神経を刺激して入眠や熟眠を妨げることがあります。日常生活からストレスを完全に排除することはできませんが、ストレスを発散できるような趣味を持ったり、就寝前にアロマを焚くなどして心を穏やかに就寝できるよう心がけましょう」(成田先生)
ブルーライトをできるだけ遮断する
増富先生によると、ブルーライトは人間の体に多大な影響を及ぼしていると言います。
「青色LEDから放たれるブルーライトは、光の中でも、とりわけ、人間の眼から入り脳に伝わる刺激としては、『強い刺激』になるのです。
眼から入る刺激は、そのまま、脳への刺激となります。その昔、太陽光や月の光しかなかった時代は、人間の眼から入り脳に到達する刺激は、自然の光だけでした。
『日が昇ることで目を覚まし活動し、日が沈むことで、眠りにつく』という、本来の生き物としての生活のリズム(「サーカディアンリズム」といいます)は、そもそもは、太陽や月の光が作ってきたのです。その刺激を人間は眼から入る光の情報として脳で感じ取り、サーカディアンリズムを形作ってきました。
現代社会を生きる私達は、太陽の光や月の光以外に、朝から寝る直前まで、スマホやコンピューター画面から放たれる、ブルーライトを浴び続けています。このブルーライトは、眼から『強い刺激』として脳に伝わり、我々のサーカディアンリズムを乱しているのです。
若い人たちの多くが、『不眠』を訴えるといわれていますが、その原因の一つは、ブルーライトによるサーカディアンリズムの乱れによるものなのかもしれません」(増富先生)
朝二度寝してしまう人や眠りが浅い、眠れないという人は、ブルーライトをカットしてみましょう。
たとえばブルーライトカットのメガネを試す、寝る1〜2時間前にはスマートフォンやパソコンを見るのはやめる、など。これにより睡眠が改善し、朝スッキリ起きられるかもしれません。
【医師監修】ブルーライトは睡眠の質を下げる? 皮膚の老化も? 光と脳は関係していた!
夏は夜通しエアコンをつけて寝る
医学博士・医師の梶本修身先生によると、夏の暑さは自律神経を消耗させ、睡眠を妨げる大敵になると言います。
部屋を涼しいと感じる温度を朝まで保つことが大切で、肩から下は薄めの羽毛布団をかけて寝るのがベストだそう。
同時に扇風機を天井に向けて回すとさらにGOOD!
太陽の光で目覚めることが理想
太陽の光で目覚めると、自律神経が目覚めるだけでなく、セロトニンが分泌されることで14~16時間後に眠気を促すメラトニンが分泌され、睡眠のサイクルが整うのだそう。
目覚まし時計ではつい二度寝をしてしまう人は、目覚ましの代わりにカーテンを開けてくれる便利アイテムを使用してみるのも○。
鶏むね肉を一日100g食べる
鶏むね肉には抗酸化作用のある「イミダペプチド」という成分が含まれています。
このイミダペプチドには自律神経の疲労を軽減し、回復を促す効果が。毎日食べることが大事ですが、難しいようならサプリとの併用でも良いそうです。
漢方薬を活用する
成田先生によれば、漢方医学で用いられてきた漢方は直接的に睡眠を誘う作用はないものの、良質な睡眠がとれるような体質を取り戻す作用を持っているそう。
服用を続けることで、少しずつ体質改善が期待できると言います。
おすすめの漢方は以下。
柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
「精神的な不安を感じやすく、それが原因となって『不眠』を引き起こしている方におすすめです。とくに血圧が高めの方、便秘がちの方に適しているとされています」(成田先生)
黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
「気持ちが落ち着かず、イライラするといった症状を和らげる効果があります。また、ストレスによる動悸や胃もたれ、胃痛などを改善する効果もあるとされています。気分が高ぶって眠れないという方に特におすすめです」(成田先生)
加味逍遙散(かみしょうようさん)
「ストレスによる頭痛やめまい、不安、そして不眠などを改善する効果のある漢方薬です。心の不調による不眠に悩まされている方におすすめで、また女性ホルモンの乱れや更年期障害などによる症状の改善にも有用とのこと。生理前などに不眠になりやすい方にもよいでしょう」(成田先生)
抑肝散(よくかんさん)
「精神の高ぶりや怒りやすさ、イライラといった症状を緩和する効果が知られており、乳児の夜泣きなどにも用いられています。気持ちが落ち着かず寝つきが悪い方におすすめです」(成田先生)
低血圧の人は朝目覚めたら血の巡りを良くする
増富先生曰く、低血圧でどうしても朝が苦手、という人は朝目覚めたとき、手足を動かし血の巡りを良くすると良いそう。
他にも摂りすぎは注意ですが塩分をちゃんと摂ること、血管内に水分を引き寄せるヨーグルト、チーズなどの乳製品、肉、魚、大豆などのタンパク質をちゃんと食べること、心臓のポンプ機能を補助する筋肉を使って運動することなどが、血圧を維持するために大切だと教えてくれました。