世界でも睡眠時間が少ない日本人。量より質という噂もあるけれど…
あなたはちゃんと眠れてる!? 隠れ〝睡眠負債〟チェックテスト
無意識のうちに睡眠不足で疲れをためていないか、あなたの眠りの現状を見直してみましょう!
・電車でよくうたた寝をする
・ベッドに入ると、すぐに眠りに落ちる
・寝ている間、いびきをかいている
・朝は目覚まし時計で起きている
・パジャマが寝汗でびっしょりになっている
・起きてから4時間後に眠気を感じる
・休みの日は昼まで寝ている
・最近、よく風邪をひく
・ケアレスミスが多い
・やる気が出ない
3つ以上あてはまる人は要注意!
Oggiモデル愛甲千笑美が医学博士・医師の梶本修身先生に聞きました!
かじもとおさみ●1962年生まれ。大阪市立大学大学院医学研究科疲労医学講座特任教授。東京疲労・睡眠クリニック院長。『ホンマでっか!? TV』(CX系)などテレビ出演も多数。著書に『すべての疲労は脳が原因』(集英社新書)、『寝ても寝ても疲れが取れない人のためのスッキリした朝に変わる睡眠の本』(PHP研究所)など。
世界でいちばん睡眠時間が短い国・日本
千笑美 だいぶ前のことですが、仕事が忙しくて疲れているのに、目が冴えてなかなか眠れない時期があったんです。ついに1〜2時間睡眠で現場に行ったら心臓がバクバクして、「睡眠不足って怖い!」と思い知りました。今は、夜遅い日の翌朝は仕事をセーブしたりしてましになりましたが、毎朝起きる時間はまちまちだし、睡眠には不安を感じています。
梶本 大変でしたね、そこまでいくと結構重症なので、仕事を調整したのは正解だったと思いますよ。
千笑美 そもそも、睡眠ってなんのために必要なんですか? 眠らなくてよかったら、もっといろんなことができるのに(笑)。
梶本 人間が眠るのは、起きている間に仕事をしたり運動したり、さまざまな活動をすることで生じた疲れを回復させるためです。すべての疲れの正体は〝自律神経〟の中枢が疲れること。運動なら心拍や呼吸、体温の調整、デスクワークなら緊張の維持や目のピント調節などを行なう、その司令塔でもある自律神経の疲れは、睡眠でしか回復できません。
千笑美 日本人は世界一、睡眠時間が短いと聞きましたが…?
梶本 そのとおり。しかもどんどん短くなっています。2010年の平均睡眠時間は平日で7時間14 分。1960年の8時間13分と比べると、50年で約1時間も減っていました。ここ10年くらいはスマホの影響で、さらに短くなっているはずですよ。
千笑美 たまに、「3時間睡眠でも大丈夫」という人もいますが?
梶本 睡眠は浅い眠り=レム睡眠と深い眠り=ノンレム睡眠のサイクルを1時間30分ごとに繰り返しますが、少なくとも3サイクルは寝ないと十分に疲れがとれないとわかっています。寝つくまでの時間も入れて最低でも5時間はほしいですね。
千笑美 今は私、平均5〜6時間睡眠なんですが、少ないですか?
梶本 よく「健康のためには何時間睡眠がベストですか?」と聞かれるんですが、実はその質問はナンセンス(苦笑)。というのも、眠りは〝量×質〟が重要で、長さだけでは十分な睡眠かどうか判断できないんです。毎日6時間睡眠の人より、質がよくない睡眠を10時間とっている人のほうが寿命が短いというデータもあるんですよ。
寝ても疲れがとれないのは睡眠の〝質〟が問題…!?
千笑美 では睡眠の〝質〟を上げるにはどうしたらいいんでしょう?
梶本 寝ているときに体に余計な負担をかけず、自律神経の中枢がしっかり休まる状態を整えることです。たとえばカフェインの覚醒効果は4〜5時間続くので夕食後のコーヒーは控えたほうがいいし、寝酒も睡眠が浅くなるのでNGです。額から汗が流れるような熱いお風呂は体を逆に疲れさせるので避けてください。ちなみに僕は寝る1時間前にはお風呂から上がって、オレンジ色の薄暗い照明の中、ボーっとテレビを眺めたりします。
千笑美 寝る前にテレビを見てもいいんですか!?
梶本 液晶テレビは間近で見なければそれほど光は強くないし、番組の区切りで眠くなりやすいので、意外に悪くないんですよ。でもみなさん、睡眠について誤解していることは多いですね。最近は〝睡眠負債〟といって、睡眠不足による疲れが借金のように蓄積している人がすごく多いので、千笑美さんも「隠れ〝睡眠負債〟チェックテスト」で、今一度、睡眠の状態を見直してみましょう。
千笑美 えーと、移動中のうたた寝はよくするし、目覚まし時計で起きてるし、いびきも鼻炎のせいかよくかいてます。夏はエアコンをタイマーで切っているので、朝は汗をかいていますね。休みの日は昼までとはいわないけどいつもより2〜3時間は長く寝ていて、あてはまるのは… 5個くらい?
梶本 やっぱりちょっと睡眠不足かもしれないですね。人間は本来、時間をかけて、徐々に眠りに落ちていくメカニズム。短時間でうたた寝したりベッドに入って即寝てしまうのは、睡眠が十分でなく疲れをためているサインかもしれません。休日と平日で起床時間に2時間以上差があるのも、日ごろの睡眠不足を示しています。
千笑美 いびきもダメなんですね。
梶本 いびきは気道、つまり呼吸の通り道が狭まって酸素が不足するのを補おうと、自律神経がフル活動している状態。そのせいで睡眠の質を落とします。横向きの姿勢で寝るとだいぶ改善されるので、抱き枕を使うといいですよ。寝汗をかくのは寝ながら運動をしているようなもの。せっかく疲れを回復しようとしているのに、かえって疲れることになりかねません。
千笑美 目覚まし時計やアラームはみんな使ってるんじゃないですか? 仕事に寝坊したら困るから。
梶本 目覚ましの大きな音で「ビクッ」と起きるのは、体をリラックスした状態から急激に臨戦態勢に切り替えること。自律神経への負担が大きいので、徐々に明るくなる照明や太陽の光などで起きるのがベストです。ミスが多かったりやる気が出ない、体調がすぐれないのも、睡眠不足が原因になっている疑いが濃厚。個人差はありますが、6時間睡眠が10日以上続くと、徹夜明けと同じくらい注意力が落ちてミスが増えるといわれています。これは酎ハイを7〜8杯飲んだときの作業効率と同じくらい。また5日間睡眠不足が続くだけで、不安や抑うつが強まるという最新の研究結果も出ています。
千笑美 確かに、睡眠不足だと涙もろくなったりしますね。
梶本 ちなみに、睡眠のリズムも自律神経が司っているので、寝不足になって自律神経に疲れがたまると睡眠の質も悪くなるんですよ。
千笑美 そんな悪循環が!?
睡眠不足から回復しにくくなるアラサー世代
梶本 2〜3日の睡眠不足なら、その後じっくり休むことで取り戻せますが、それ以上続くと、生理不順などホルモン異常を引き起こすこともあります。しかも、自律神経の機能は女性の場合、30歳になると20歳のときの約¾程度にパワーダウンするんです。
千笑美 睡眠不足のダメージが大きくなるんですね。ちなみに、枕やパジャマ選びのポイントは?
梶本 枕は、頭の角度や背骨の姿勢が立っているときと同じになるものを。あごが出たりうつむいて見えるような枕は合っていません。パジャマは着心地がよければなんでもOKですが、睡眠中は足の裏から放熱することで深い睡眠が得られるので、冬でも靴下はいけません。目覚めも自律神経に余計な負荷をかけないよう、僕は起きる時刻の20分前から照明がだんだん明るくなって遮光カーテンが少しずつ開くような室内設備をプログラムしています。アロマディフューザーの香りとともに自然に目覚めると自律神経も疲れません。
千笑美 すごいシステム(笑)!
梶本 質のよい睡眠で日々の疲れをその日のうちに回復できれば、仕事の効率も上がりますし、アンチエイジングにもいいんですよ。
千笑美 トライしてみます!
【覚えておきたいキーワード】
*1. 自律神経
疲れているとき、自律神経の中枢にある神経細胞は、活性酸素が発生して酸化することで傷ついた状態に。そのため本来の機能が果たせず、さまざまな器官のパフォーマンスが低下するのが疲れのメカニズム。
*2. 睡眠負債
睡眠不足がまるで借金のように積み重なり、疲れが蓄積されたり、病気のリスクが高まったり、日々の生活の質を下げること。6月に放映された『NHKスぺシャル』でも取り上げられ、一気に注目を集めた言葉。
*3. いびき
呼吸する際の空気の通り道が狭くなっている状態。肺を大きく膨らませて酸素を十分に取り込もうとするため、横隔膜を大きく動かしたり、心拍を速くしたり血圧を上げたりと、自律神経がフル回転で働くことになる。
疲れをとってスッキリ目覚めるためのルール5
1:夏は夜通しエアコンをつけて寝る
暑さで汗をかくことは自律神経を消耗させ、質のよい睡眠を妨げる大敵。部屋は「涼しい」と感じる温度を朝までキープし、肩から下は薄めの羽毛布団などをかけて寝るのがベスト。同時に、扇風機を天井に向けて回すとさらに◎。
2:太陽の光で目覚める
自律神経が目覚めるだけでなく、セロトニンというホルモンが分泌されることで、14~16時間後に眠気を促すメラトニンが分泌され、睡眠のサイクルが整う。目覚まし代わりにカーテンを開けてくれる便利アイテムも!
3:ベッドにスマホは持ち込まない
至近距離で強い光を浴びるだけでなく、能動的かつエンドレスに興味のあるサイトに移動できるため、脳が睡眠モードになりにくい。また、人間は場所と行動をセットで記憶するので、眠るとき以外はベッドに横になるべからず。
4:鶏のむね肉を1日100g食べる
抗酸化作用のあるイミダペプチドという成分は、自律神経の疲労を軽減し回復を促す。イミダペプチドを効率的に摂取できる食品は、鶏むね肉。毎日、食べ続けることが大切だが、難しければサプリとの併用もおすすめ。
5:パートナーとは別々のベッドで寝る
夫や彼とひとつのベッドで眠るのは、相手の体温が、自分の体温を放出する妨げになったり、接触することで目が覚めたり、お互いの睡眠の質を下げるもと。心地よく感じる室温も異なることが多いので、本当は別室に寝るのがオススメ。
2017年Oggi9月号「大人になった今こそ、学びたい&知りたいコトがある! Oggi大学」より。
撮影/伊藤 翔 スタイリスト/角田かおる ヘア&メイク/コンイルミ(ROI) モデル/愛甲千笑美 撮影協力/ホテル イースト21東京 構成/酒井亜希子(スタッフ・オン)
再構成:Oggi.jp編集部