理想の睡眠時間は7時間前後
睡眠は脳や身体を休め、一日の疲れを癒す非常に重要な時間です。一日に必要な睡眠時間には個人差がありますが、7時間前後の睡眠が理想的とされています。
しかし、日本人は慢性的な睡眠不足に陥っている人が多く、20歳以上では約40%もの人が6時間未満の睡眠しかとれていないとの報告もあります。
睡眠の「質」を上げることで、睡眠不足による諸症状を改善するための方法を詳しく解説します。
【目次】
・【睡眠 質】を向上させるには?
・【睡眠 質】を上げるグッズってあるの?
・【睡眠 質】いびきをかくと質は低下する?
【睡眠 質】を向上させるには?
身体や脳の疲れを癒すには、単に長時間の睡眠をとればよいというわけではありません。私たちの睡眠にはサイクルがあり、おおよそ90分の間隔で「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」を繰り返しています。
まず、私たちが眠りに落ちると、「ノンレム睡眠」が引き起こされます。ノンレム睡眠は深い眠りで脳と身体をしっかり休める睡眠であり、45分ほど続くと次は「レム睡眠」へと移行します。レム睡眠は身体は休んでいるものの脳は活動している状態であるため、眠りが浅い状態です。
そして、45分ほどのレム睡眠が続くと再びノンレム睡眠の層に移行していくのです。このため、身体も脳もしっかり休めるには十分なノンレム睡眠をとる必要があり、朝すっきりと目覚めるにはレム睡眠の最中に起きるのがよいとされています。
医学的には良い「睡眠の質」というものは定義されていない
しかし、一般的には「速やかに寝付けること・途中で起きずにぐっすり眠ること・眠気なくすっきりと起床できること」が主な条件です。この3つの条件のいずれかに問題があると、「質」のよい睡眠とは言えません。
寝付きをよくするおすすめ法
そこでまず「速やかに寝付けること」をサポートする方法としておすすめなのは、就寝30分前頃から音楽を聴くことです。しかし、単に好きな音楽を好きな音量で聴けばよいというわけではありません。
自然な睡眠は、2種類の自律神経の中でも心身のリラックスをもたらす副交感神経を優位に働かせ、脳内で眠気をいざなうセロトニンという物質が産生されることによって引き起こされます。このため、自然な眠気を誘い、速やかな寝つきを引き起こすためにも心身がリラックスできるような音楽を聴くことが勧められるのです。
おすすめなのは、スローテンポで音の数が多くないクラシック音楽です。有名どころでは、パッヘルベルの「カノン」やラベルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」などが挙げられます。逆に歌詞がある音楽やアップテンポの音楽は脳を刺激して入眠の妨げになることもあるので避けた方がよいでしょう。
音楽は睡眠を妨げない程度の弱い音量で聴くのがポイントですが、中には気づかぬうちに寝てしまった…ということもあるでしょう。しかし、睡眠中に音楽をかけたままの状態にしておくのは、眠りの浅いレム睡眠時に目を覚ましてしまう原因になりますので、就寝前に音楽をかけるときは、タイマー機能などをセットしておくようにしましょう。
【睡眠 質】を上げるグッズってあるの?
「睡眠の質」を向上させることは、忙しく疲れがたまりがちな現代人の大きな課題とも言えます。質の高い睡眠は誰しもが望むものであり、これまでに「睡眠の質」を向上させる効果が期待されるグッズが数多く販売されてきました。
では、「睡眠の質」を向上させるグッズにはどのようなものがあるのでしょうか?
睡眠の質を向上させるおすすめグッズ
寝具
睡眠中の身体を覆う寝具は、「睡眠の質」に大きく左右することがあります。眠りが浅いレム睡眠期は、暑さや寒さなどちょっとした不快な感覚があるだけでも目を覚ます原因になります。このため、質の高い睡眠を維持するには、季節に合った寝具を用いて適温で眠れるように心がけましょう。
また、最近ではひんやりした触感のシーツやタオルケットなどが販売されており、熱帯夜のお供に人気の商品です。一方、寒い時期には足元を温める湯たんぽや首元から布団の中に冷気を入れないように工夫された掛布団まで様々なものがあります。
サプリメント
サプリメントの中には、自然な入眠を誘ったり、熟眠感を改善させるような効果がうたわれたものも多く販売されています。これらのサプリメントには入眠効果があるとされるL-テアニンやグリシンなどが含まれるものもあり、高い効果を実感できることもあります。効果は個人差がありますので、まずは気になるサプリメントを試してみましょう。
アプリ
ノンレム睡眠とレム睡眠のサイクルを上手く応用して、すっきりした目覚めを引き起こすアプリが注目されています。ノンレム睡眠はぐっすり眠っている状態のため睡眠中の胎動は少ないですが、眠りの浅いレム睡眠中は寝返りなどが多くなります。
「睡眠の質」を高めるためのアプリは目覚まし時計として使われるもので、睡眠中の体動を検知して睡眠サイクルの状態を割り出し、すっきりした目覚めが可能になるレム睡眠期にアラームを鳴らす機能が備わっています。
朝の目覚めが悪い人は、睡眠リズムの乱れが原因の可能性もありますので試してみましょう。
漢方薬
夜なかなか寝付けないという人は、自律神経の高ぶりが原因のことがあります。自律神経の高ぶりはストレスや疲れがたまった時、生理前などに起こりやすく、イライラ感や焦燥感などを引き起こす原因にもなります。
このようなときには、自律神経のバランスを整える「柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」や「加味帰脾湯(かみきひとう)」などの漢方薬がおススメです。睡眠薬は依存性や副作用が心配という人は、それらの心配が少ない漢方薬を試してみると良いでしょう。
【睡眠 質】いびきをかくと質は低下する?
「睡眠の質」の低下は思わぬ原因が潜んでいることがあります。その原因として思いのほか多いのは「いびき」です。
いびきは睡眠中に呼吸に伴って生じる雑音のことで、周囲で寝ている人がいびきをかいて起きてしまうことだけでなく、自分自身がいびきをかくことでも「睡眠の質」を低下させることがわかっています。
いびきの原因は肥満や鼻炎、生まれつきののどの異常、不適切な高さの枕など様々ですが、「睡眠時無呼吸症候群」などを発症すると慢性的な寝不足が続くことで日中の集中力や注意力が低下し、気づかぬうちに居眠りをしてしまうなど、重大な事故につながる危険もあります。
自身でいびきを自覚している人だけでなく、周囲から指摘されたことがある人や、十分な睡眠時間を確保しているものの熟眠感がないという人はいびきの可能性も考えて、できるだけ早く呼吸器科や耳鼻科で相談するようにしましょう。
成田亜希子先生
一般内科医。プライベートでは二児の母。
保健所勤務経験もあり、医療行政や母子保健、感染症に詳しい。
国立医療科学院などでの研修も積む。
日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会所属。