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「とんでもないです」の敬語の意味とは?
ビジネスシーンで目上の人から評価されたときに、返しとして使われる「とんでもないです」。この「とんでもないです」というフレーズには複数の意味や言い回しがあります。そのため、「実はなんとなく使っている」という方もいるのではないでしょうか。
今回は「とんでもないです」の正しい使い方や言い回しについて紹介したいと思います。
「とんでもないです」の意味
ビジネスシーンで使われる「とんでもないです」には、大きく分けて3つの意味があります。それは、「予想外の事態が起きた様子」と「常識や道徳から離れたことが起きた様子」、そして「強い否定や謙遜を表す様子」です。
ビジネスシーンでは、この中の3つ目の意味でよく使われています。先述した、目上の人から評価されたときに使う「とんでもないです」も、この3つ目の意味で使われていますよ。
「とんでもない」の語源
諸説ありますが、「とんでもないです」は、「途でもないです」が変化してできた言葉だと言われています。「途」は訓読みにすると「みち」。「途」は「道筋」や「道のり」「手段」を意味しています。
「道のり」を表す「途」に、否定を表す「ない」が組み合わさることによって、「道のりがない」。つまり、「道理を外れた」という意味を持つ「途でもない」が誕生しました。
そこから、この「途でもない」が変化し、今の「とんでもない」という言葉が生まれたそうです。
「とんでもないです」の使い方の例文
「とんでもないです」には、3つの意味がありました。それぞれどんなときに使うのか、例を挙げて紹介したいと思います。
「君が作った資料を確認したが、素晴らしい出来じゃないか」→「とんでもないです」
謙遜を込めて否定をする「とんでもないです」の使い方です。ビジネスシーンでは、上司や取引先など、目上の方から褒められたときによく使われますよ。
実は、同じくらいの立場の人や後輩から褒められた場面でも使用することができます。謙虚な態度を示したいときに使いましょう。
「そんな重要な場に私が呼ばれるなんて、とんでもないです」
こちらは「思いがけないことが起こった」という意味の「とんでもないです」が使われています。語源である「途でもない」に最も近い意味での使い方です。普通では有り得ないことや、誰も予想できないようなことが起こったときに使うことができますよ。
「社運を賭けたプロジェクトの会議を無断欠席するなんて、彼の態度はとんでもないです」
「けしからぬ」「常識から大きく外れている」という意味の「とんでもないです」になります。常識では考えられないような無礼な行動に対して使うことが多いですよ。2つ目の「思いがけないことが起こった」ときの「とんでもないです」に比べ、怒りや非難の意味合いが強い使い方です。
「とんでもないです」の類語や言い換え表現にはどのようなものがある?
「とんでもないです」には、様々な意味があります。今回は、その中でもビジネスシーンでよく使う「謙遜を含む否定」の類語についてご紹介したいと思います。
恐縮に存じます
「恐縮に存じます」は、「きょうしゅくにぞんじます」と読みます。「恐縮」の意味は、「身も縮こまる程恐れ入る」。そこから、「褒めていただいて、身も縮こまるほどありがたく思います」という意味になります。
また、「恐縮に存じます」は謙譲語の堅い表現です。そのため、ビジネスシーンでも目上の方に対して使うのが一般的になります。部下など自分より目下の相手には使わないため、誤って使わないよう注意しましょう。
滅相もないです
「滅相もないです」の読み方は、「めっそうもないです」。「滅相もないです」は、「あるべきではない」という意味があります。「とんでもないです」と同様に、謙虚に否定することができる言葉です。そのため、相手に控えめな印象を与えることができますよ。
光栄に存じます
「光栄に存じます」は「とんでもないです」のような否定的な意味は持っていません。意味は、「褒められたことや、重要な役目を与えられたことに対して、名誉に思うこと」。
「とんでもないです」のように、目上の方だけでなく、目下の相手であったとしても、名誉に思う気持ちを伝えたいときに使うことのできる言葉です。「光栄です」と同じ意味ですが、「光栄に存じます」の方が、よりかしこまった印象を与えることができます。
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「とんでもございません」という使い方は間違い?
「とんでもない」という気持ちを伝えたいときに、「とんでもございません」という言い回しが使われることがあります。この「とんでもございません」は、本来正しい使い方ではありませんが使う人が多くなっており、現在は問題ないとされています※。
「とんでもない」という言葉は、それでひとつの言葉です。そのため、「ない」の部分はむやみに変更してはいけないとされています。「とんでもないです」をより丁寧に言い換えたいときは、「とんでもないことでございます」を使うようにしましょう。
※ 平成19年(2007)2月文化審議会答申の『敬語の指針』では、相手からのほめ言葉に対して謙遜しながら軽く打ち消す表現として「とんでもございません(とんでもありません)」を使っても、現在では問題ないとしている。
なお、「とんでもない」には「もってのほかだ」と強く否定する意味もあり、「とんでもないことでございます」を使う場合は注意が必要と『指針』は述べている。(引用:デジタル大辞泉より)
「とんでもないです」の英語表現も知ろう
「とんでもないです」の英語表現は、使い方によって異なります。ビジネスシーンで多い、お礼や褒められたときの返事で使う「とんでもないです」の場合は、「It’s my pleasure」や「It was nothing」などが一般的です。
また、相手からの謝罪に対する「とんでもないです」の場合は、「That’s okay」や「That’s all right」を使うことで、表現することができますよ。
「とんでもない」を適切に使おう
「とんでもないです」についてのご紹介でした。いかがだったでしょうか? 「とんでもないです」は様々な意味を持っていますが、ビジネスシーンで最もよく使われるのは、「謙遜の意味を含んだ否定」です。
目上の方から褒められたときに便利な言葉ですが、謙遜をしすぎるとかえって印象が悪くなってしまいます。適切な使い方をしっかり覚えて、ビジネスシーンで役立ててくださいね。
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