経血量の異常は良く見られるトラブルの一つです。「生理が少ない」とどういうことが起こるのか、詳しく解説します。
【目次】
・【生理 少ない】出血が少ないと不妊なの?
・【生理 少ない】でも長いのは何か問題?
・【生理 少ない】更年期を疑うべき?
・【生理 少ない】ピルを使った後は少なくなるの?
【生理 少ない】出血が少ないと不妊なの?
そもそも生理とは
生理の正体は、妊娠に向けて増殖・成熟した子宮内膜が剥がれ落ちて血液とともに排出されるものです。子宮内膜の増殖と成熟を司るのは、エストロゲンとプロゲステロンと呼ばれる女性ホルモンです。
生理が始まって子宮内膜が剥がれ落ちると、女性の身体では次の妊娠の機会に備えてエストロゲンが多く分泌されるようになります。
エストロゲンは卵子の成熟と子宮内膜の増殖を行う作用を持ち、生理開始後約二週間で排卵が引き起こされます。そして、排卵後はプロゲステロンも盛んに分泌されるようになります。
プロゲステロンには、増殖した子宮内膜を着床に適した状態に成熟させる作用があります。こうして子宮内膜の成熟が約二週間に渡って行われ、着床しなかった場合にはエストロゲンとプロゲステロンの分泌が急激に減少して生理=子宮内膜の脱落が引き起こされるのです。
量が少ないのは楽だけど…
生理の量が少ないと、経血漏れの心配もないため女性にとって楽ではあります。でも生理の正体は、成熟した子宮内膜。
生理の量が極端に少ない場合は、子宮内膜が正常に成熟できていない可能性も考えられます。その原因としてはプロゲステロンの分泌不足を引き起こす黄体機能不全や子宮の形態的な異常などが挙げられます。
生理の量が極端に少ない状態が続くときは、ホルモン分泌や子宮に何らかの異常が生じている可能性もありますので、「楽になった」と思わずに病院で検査を受けるようにしましょう。
【生理 少ない】でも長いのは何か問題?
一般的には1回の生理で100ml
正常な生理の期間は4~7日とされており、それ以上続くものを「過長月経」と呼びます。
また、生理の量には個人差があり、明確な基準は定められていませんが一般的には1回の生理で100mlほどの経血が排出されると考えられています。
生理の量が極端に少ない場合には、不妊症につながる病気が背景にある可能性については上で説明しましたね。
では、生理の量が少ないものの、生理の期間は長く続く場合にはどのようなことが考えられるのでしょうか?
ダラダラと出血が続く場合は…
まず考えられるのは、エストロゲンとプロゲステロンの分泌に異常が生じることによって排卵や子宮内膜の増殖・成熟が正常に行われず、性周期に関係なく子宮内膜が剥がれ落ちる「機能性子宮出血」です。
「機能性子宮出血」は、子宮内膜の増殖が十分でない段階で剥がれ落ちる出血であるため、通常の生理より量は少なくなりますが、その後エストロゲンの作用によって子宮内膜の新たな増殖も生じにくいため、ダラダラとした出血が続くのです。
その他にも、子宮ポリープや子宮体がんなど子宮に生じる病変からの出血によって生理が長く続くこともあります。
いずれにせよ、少ない生理がダラダラと8日以上続く場合は、何らかの病気の可能性を考えましょう。
【生理 少ない】更年期を疑うべき?
更年期とは、閉経前後5年間の時期のことです。
加齢によって卵巣の機能が徐々に低下することで女性ホルモンの分泌量も減り、ついには閉経を迎えるのです。
このため、更年期にはホルモンバランスの変化によって全身に様々な症状が引き起こされます。特に、生理の量の変化は更年期の特徴的な症状の一つです。
【更年期の生理】その変化は…
・生理の量が少ない
・生理が長く続く
・生理不順が生じ、突然出血することがある
これらはみな、女性ホルモンの分泌バランスが乱れることに起因します。卵巣の機能が低下することでエストロゲンとプロゲステロンの分泌量が減少し、子宮内膜が正常に増殖しなくなるために生理の量が少なくなるのです。
また、プロゲステロンが減少するとエストロゲンの作用によって増殖した子宮内膜を維持しながら成熟させることができなくなるため、生理周期が乱れたり、予期せぬ場面で子宮内膜が破綻して出血を生じることがあります。
このような生理の減少や周期の乱れなどが見られる場合は、更年期に突入した可能性があります。
日本人女性の更年期は45歳くらいから始まるとされていますが、個人差が大きいものです。
なかには20代後半から更年期に突入して妊孕性が低下することもありますので、思い当たる生理の変化がある場合は注意が必要です。
【生理 少ない】ピルを使った後は少なくなるの?
確実な避妊のために経口避妊薬「ピル」を服用する女性が増えていますが、実は避妊効果のある薬として広く出回っている「ピル」は生理の辛い症状を緩和させる治療にも使用されることがあります。
特に、生理の量を減らす効果があるため、生理量が多く慢性的な貧血に陥っている人に広く使用されています。
そもそも、「ピル」とは、少量のエストロゲンとプロゲステロンが合わさった薬です。これの服用を続けることで、脳の下垂体から排卵を促す性腺刺激ホルモンの分泌を抑制する作用が生じます。
「ピル」の服用によって少量のエストロゲンとプロゲステロンは体内に入り込みますが、卵巣を刺激するホルモンの分泌が阻害されることで卵巣からの正常なエストロゲンとプロゲステロンの分泌が生じないため、排卵や子宮内膜の増殖・成熟が行われなくなるためです。
このため、ピルを服用すると子宮内膜が薄くなるため、結果として生理の量も減少し、生理に伴う様々な不快症状を改善する効果が期待されるのです。
成田亜希子先生
一般内科医。プライベートでは二児の母。
保健所勤務経験もあり、医療行政や母子保健、感染症に詳しい。
国立医療科学院などでの研修も積む。
日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会所属。