生理の日は経血漏れが気になったり、生理痛に悩まされるばかりでなく、ホルモンバランスの変化によって様々な不快症状が引き起こされます。
ホルモンバランスは些細な原因で乱れやすいため、生理には様々なトラブルがつきものです。
【目次】
・生理が「長い」と判断する基準って?
・生理が「多い」と判断する基準って?
・生理周期の適正は?
生理が「長い」と判断する基準って?
正常な月経期間は3〜7日
生理は約一か月のサイクルでめぐり、正常な月経期間は3~7日とされています。8日以上続く生理は「過長月経」と呼ばれ、何らかの病気が背景にある可能性も考えましょう。
そもそも、生理とは、どのような現象なのでしょうか?
生理の正体は「剥がれ落ちた子宮内膜」です。子宮の中では女性ホルモンの作用によって子宮内膜と呼ばれる細胞が増殖・脱落・再生を繰り返しています。
生理は、エストロゲンとプロゲステロンと呼ばれる2種類の女性ホルモンによって引き起こされます。女性の性周期は生理が始まった日から次の生理が来る前日までの期間のことを指します。
経血は妊娠に向けて増殖・成熟した子宮内膜が剥がれ落ちたものが血液と共に体外に排出されるものです。
生理が始まって子宮内膜が脱落すると、エストロゲンの分泌が徐々に増加して、次の妊娠に向けて子宮内膜の増殖が開始されます。
そして、約2週間すると排卵が生じ、増殖した子宮内膜を着床しやすい環境に成熟させるため、プロゲステロンが多く分泌されるようになります。
その後、さらに約2週間の成熟期間を経て、着床が成立しない場合はエストロゲンとプロゲステロンの分泌量が急激に低下して子宮内膜の脱落=生理が生じるのです。
このように、生理はエストロゲンとプロゲステロンの分泌バランスによって引き起こされています。
生理が8日以上続く場合はホルモン分泌の異常が考えられる
月経期間には個人差がありますが、8日以上続く場合は、卵巣機能不全や黄体機能不全、多嚢胞性卵巣症候群などによるホルモン分泌の異常が考えられます。
これらの異常では、子宮内膜の増殖・成熟・脱落が正常なサイクルで行われなくなるためダラダラと生理が続くことがあるのです。
また、その他にも、女性ホルモンの分泌に影響を与える甲状腺機能低下症や高プロラクチン結晶、子宮の器質的な病気の子宮筋腫や子宮内膜ポリープ、子宮がんなどが原因のことも少なくありません。
生理が「多い」と判断する量の基準って?
経血量を正確に測ることは困難であり、個人差も大きいことから医学的な異常値は定められていません。しかし、一般的には一回のサイクルで30~150mlほどが正常と考えられており、極端に多い生理を「過多月経」といいます。
昼用ナプキンが短時間でいっぱい…は注意
具体的には、血液の塊が出る・昼用ナプキンが短時間でいっぱいになる、などの状態が続くようであれば「過多月経」と考えてよいでしょう。
過多月経は、子宮の良性腫瘍である子宮筋腫や子宮ポリープ、子宮内膜が子宮内腔以外の部位で増殖する子宮内膜症や子宮腺筋症などが原因で引き起こされます。
これらの病気は剥がれ落ちた子宮内膜と共に排泄される出血量を増やすため、経血量も増加してしまうのです。
また、子宮内膜自体が過剰に増殖する子宮内膜増殖症によっても生理量が増加します。子宮内膜の増殖を促すエストロゲンが過剰に分泌されることが原因と考えられていますが、子宮がんに移行することもあるため、注意が必要です。
生理の量が多くなると慢性的な貧血を発症する危険が
このような原因によって生理の量が多くなると、慢性的な貧血を発症する危険があります。特に生理中や生理後に動悸や息切れ、倦怠感、めまい、立ちくらみなどの症状がある場合は「過多月経」による貧血の可能性が考えられます。
また、「過多月経」は経血量が多くなるだけでなく、子宮筋腫など子宮の器質的な病気が原因となっていることがありますので放っておくと悪性化したり、不妊症につながることもあります。
生理周期の適正は?
正常な生理は、25~38日のサイクル
正常な生理は、25~38日のサイクルで巡り、3~7日ほど出血が続きます。
しかし、生理の周期や期間は個人差が大きく、ストレスや疲れ、体調不良などによってホルモンバランスに異常が生じると周期や期間に乱れが生じることも少なくありません。
1、2サイクルの生理の周期や期間に異常が乱れるのみで、その後正常に戻れば特に気にすることはないでしょう。
しかし、周期や期間の異常が長く続く場合には、ホルモンバランスの異常や子宮の器質的な病気が背景になる可能性が考えられます。
放っておくと、不妊症や器質的病気の悪化につながることもありますので、なるべく早めに病院を受診するようにしましょう。
受診の際には、正常な排卵が起きているかを知るためにも、受診の際には1~2サイクルの基礎体温を記録して持参するのがおすすめです。
成田亜希子先生
一般内科医。プライベートでは二児の母。
保健所勤務経験もあり、医療行政や母子保健、感染症に詳しい。
国立医療科学院などでの研修も積む。
日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会所属。