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「伺わせていただきます」の意味をチェック
まず、「伺う」には2つの意味があります。
ひとつは謙譲語としての「行く」「聞く」の丁寧な表現、もうひとつは相手に敬意を払いながら自分の行動を述べる表現です。
そのため「伺わせていただきます」は、相手に許可を得て自分が行動するというニュアンスを含みます。
つまり「お時間をいただいて訪問いたします」という意思を丁寧に伝えるフレーズです。
アラサー世代が「伺わせていただきます」を用いるシーンと例文をチェック

アラサー世代がビジネスにおいて「伺わせていただきます」を用いるシーンと、例文を見ていきましょう。
♦︎訪問の予定を伝えるとき
営業や挨拶まわりで取引先や顧客を訪問したいときに、「伺わせていただきます」はよく用いられます。
「行きます」ではなく、“相手の時間をいただいて出向く”という敬意を示す言葉として、相手に配慮をしているフレーズとしてもテッパンです。
例文
「明日14時に御社へ伺わせていただきます」
「ご指定いただいた会議室へ直接、伺わせていただきます」
♦︎面談や打ち合わせのアポイントを取るとき
社内外の人と日程を調整するメールでも「伺わせていただきます」は頻繁に登場します。
日程をお願いするときに「柔らかさ」や「相手への配慮」を加えやすく、相手のスケジュールを優先しつつもアポイントメントを成立させたいときに便利なフレーズでもあります。
例文
「ご都合のよろしいお時間に伺わせていただきます」
「〇〇様のご予定に合わせて伺わせていただきます」
♦︎会食・飲み会などに招待を受けたとき
相手からの招待に応じるときには、会合そのものはカジュアルになりそうな場面でも「伺わせていただきます」を使うケースが少なくありません。
社交の場に関する話題でも敬語を崩しすぎない姿勢は、アラサー世代のマナーや礼儀に通じます。
例文
「ぜひ参加させていただきたく、当日は伺わせていただきます」
「お誘いいただきありがとうございます。喜んで伺わせていただきます」
【実例】「伺わせていただきます」アラサーの失敗例と改善ポイント

敬語にはそれなりに自信があっても、うっかり誤用をしてしまうこともありますよね。
これまでに筆者が見聞きした失敗例から、アラサー世代がやりがちなNGポイントを解説します。
♦︎NG:二重敬語で過剰かつ不自然な言葉に…
失礼のないよう丁寧な言葉を選ぼうとすると、アラサー世代がうっかりやりがちなのは「二重敬語」。
たとえば「本日は〇〇様にお話を伺わせていただきたく参ると存じ上げます」など、思いつく限りの敬語を盛り込んだ言い回しは、相手によっては敬語を理解していないという評価を下しがちです。
「伺う」自体が謙譲語ですから、「参る」や「存じ上げる」などを重ねる必要はありません。
♦︎NG:回りくどい敬語で重い印象に…
相手に失礼だと思われないよう、敬語をたくさん盛り込んで丁寧な言い方を心がけたつもりでも、同じような敬語を繰り返すと、冗長で読みにくい文章になってしまいます。
たとえば「明日は14時に御社へ伺わせていただきます。その際、資料をお持ちして伺わせていただきます。終了後にはご挨拶に伺わせていただければと存じます」は、それぞれのフレーズは誤りではなくても全体の印象として重たい文章だと感じさせてしまいます。
この場合は「明日は14時に御社へ伺わせていただきます。その際に、資料をお持ちいたします。終了後には改めてご挨拶できれば幸いです」などと簡潔な敬語を意識すると◎。
♦︎NG:相手の都合を無視しているように聞こえ…
相手の都合を確認せずにいきなり「伺わせていただきます」と断定してしまうと、相手の不快感を招きがち。丁寧な言葉を使っているからといって、必ずしも丁寧な印象を与えられるわけではありません。
たとえば「来週の午後、御社へ伺わせていただきます」と日程の調整を省いて伝えてしまえば、相手からは「こちらの都合を聞かずに、一方的に来るの?」と不快に思われる可能性が高く、配慮に欠ける印象を与えます。
敬語に慣れていないアラサー世代ほど「正しい言葉を使っていればOKなはず」と誤解しがちですが、言葉だけでなく行動でも相手への配慮を示して◎。
「伺わせていただきます」の言い換え表現をチェック

「伺わせていただきます」は、別の表現に言い換えることもできます。
相手や場面に応じて、いくつかのバリエーションを理解しておきましょう。
♦︎「お伺いします」
「伺わせていただきます」と比べると、よりシンプルな言い回しです。
自然で汎用性の高いフレーズで、口頭でもメールでも相手を選ばずに幅広く使えます。
♦︎「参ります」
丁寧な印象を与えつつも簡潔な表現です。
謙譲語のなかでも端的な部類で、かつ丁寧な印象を与えることから、目上の相手や取引先への訪問時にも使いやすい表現です。
♦︎「お邪魔します or お邪魔させていただきます」
親しい取引先や社内での打ち合わせなど、少々カジュアルな場面で使いやすいフレーズです。
フォーマルなシーンには向きませんが、先輩や上司、日頃から密にコミュニケーションをとっている取引先などに親しみを表現しやすいでしょう。
「伺わせていただきます」は便利だけれど多用はNG!
「伺わせていただきます」は相手への敬意を込めて「行く」や「訪問する」を丁寧に伝える表現です。
ただし便利な一方で、使い方を誤ると「くどい」や「重たい」と感じられてしまうこともありますので、場面にそぐわない使い方や一方的な意思表示にならないよう気をつけて使うと良いでしょう。
アラサー世代にとって、言葉遣いは“ただのマナー”ではなく“信頼感をつくる武器”。シーンに合わせて「伺わせていただきます」とその言い換えをバランスよく使い分ければ、スマートな大人の印象を与えられます。
TOP画像/(c)Adobe Stock

並木まき
ライター、時短美容家、メンタル心理カウンセラー。企業研修や新人研修に講師として数多く携わっている。シドニー育ちの東京都出身。28歳から市川市議会議員を2期務め政治家を引退。数多くの人生相談に携わった経験や20代から見てきた魑魅魍魎(ちみもうりょう)な人間模様を活かし、Webメディアなどに執筆。