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「拝啓」とはそもそも何?
「拝啓」とは「拝む(おがむ)」という動詞に「啓(けい)」を加えた言葉。
「拝む」は「敬う」や「礼を尽くす」という意味があり「啓」には「知らせる」「伝える」という意味を含みます。つまり「拝啓」は 「敬意を持ってお知らせします」や 「丁寧にお伝えします」 といった意味合いがある日本語です。
「拝啓」は「敬具」とセットで用いるのが一般的
「拝啓」は縦書きでも横書きでも、手紙や文章の形式は問わずに「敬具」とセットで用いるのが一般的です。
手紙の始まりと終わりを整えて、相手に対して一貫した敬意を表すのが目的だとされています。
【春夏秋冬】「拝啓」のあとに続く季節の挨拶例

「拝啓」を記したあとには、季節の挨拶を用いる書き方が一般的です。日本語には季節を表す言葉が数多く存在しますが、ビジネスシーンでは小難しい表現よりもわかりやすい表現を用いたほうがスマートでしょう。
春夏秋冬それぞれで使いやすい言葉を紹介します。
♦︎春の例文
「桜花の候」や「陽春の候」を用いましょう。
「桜花」は文字通り桜の時期に適していて4月上旬から中旬頃、「陽春」は陽気に満ち溢れている様子を表すので4月上旬から下旬頃まで使えます。
♦︎夏の例文
「盛夏(せいか)の候」や「猛暑(もうしょ)の候」「小暑(しょうしょ)の候」を時期に合わせて用いましょう。
ひと口に「夏」と言っても初夏から晩夏までありますが「盛夏」は7月初旬から8月初旬頃まで、「猛暑」は7月から立秋前頃まで使われます。
「小暑」は暑さが本格化してくる7月7日(七夕)頃を指すので、7月7日から中旬頃まで使用します。
♦︎秋の例文
「初秋の候」や「秋涼の候」を用いましょう。
「初秋」は立秋を過ぎてから9月上旬頃まで、「秋涼」は夏が終わり秋の涼しさを感じ始める頃を指すので9月中旬から10月中旬頃まで使えます。
♦︎冬の例文
「寒冷の候」や「厳寒の候」を用いましょう。
「寒冷」は冷え冷えとしていて寒いさまを表す言葉で、12月中と1月16日頃〜末頃に適しています。「厳寒」は厳しい寒さと書きますが、1月から2月の真冬の時期に使える言葉です。
「拝啓」を使うべきではない場面3選

「拝啓」はフォーマルな言葉ですが、使うべきではない場面もあります。
丁寧すぎる文章や手紙は、ときにマナー違反とも受け取られるために気をつけておきましょう。
♦︎親しい友人や同僚へのメール
「拝啓」はビジネスや公式の場で使われる言葉なので、日頃から親しい友人や同僚に対して使うのは不自然です。
親しい関係であればもっとカジュアルな言葉や挨拶を使うべきで、フォーマルすぎる表現は驚かれたり不可解に思われたりするきっかけになりかねません。
つまり「拝啓 〇〇さん、今日の夜はいかがお過ごしですか?」などと書くのはNGです。
♦︎カジュアルなビジネスのやり取り
ビジネスとひと口に言っても、やり取りはフォーマルなものからカジュアルなものまでさまざま。カジュアルなやり取りをしている間柄で「拝啓」を用いるのは不適切です。
同僚や日常的にやり取りをしている相手には「拝啓」は用いずに「お疲れさまです」や「お世話になっております」が適切です。
♦︎SNSやチャットでのやり取り
昨今は、SNSやチャットでもビジネスのやり取りをする機会が増えています。
しかしこれらのツールを用いたやり取りはカジュアルなやり取りである場合が多く「拝啓」を用いると形式的すぎて場違いな印象を際立たせやすいでしょう。
万能ではない!?「拝啓」を使う際の注意点3つ

「拝啓」を使う際には注意すべき点もあります。
ビジネスシーンであっても「拝啓」を用いるにあたって気をつけるべきシチュエーションを解説します。
♦︎短期間に何度もやり取りをしているときには使わない
フォーマルな関係性であっても、短期間に何度もメールのやり取りをしているときに毎回「拝啓」を用いると違和感が強い文章に感じさせがち。形式的すぎて冗長な印象も際立ちます。
最初の1通目には「拝啓」が必要だったとしても、カジュアルなやり取りに移行した段階で「拝啓」は使わないほうが無難でしょう。
♦︎軽い内容には使わない
メールを送る相手との関係性が極めてフォーマルだったとしても、メールの内容が軽いときには「拝啓」を使うとアンバランスな印象を与えます。
打ち合わせの日程変更や資料の差し替えなど短く簡潔に連絡をすれば済む内容であれば「拝啓」は用いずに、要件のみを適切に記したメールを送りましょう。
♦︎急ぎの連絡には使わない
急いで伝えたいことがあるメールでは「拝啓」を用いないようにしましょう。
迅速に情報を伝達する必要がある場面で「拝啓」を用いてしまうと、冗長な印象が悪目立ちしてしまいます。
「拝啓」を使った一般的なメールの例文は?

「拝啓」を用いた一般的なビジネスメールの例文を紹介します。
ビジネスシーンでのメールは、基本的な構成を押さえておけば状況に応じてアレンジできます。
拝啓
桜花の候、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、このたびは〇〇の件でご連絡をいただき、誠にありがとうございます。
早速ではございますが、以下についてご確認のほどよろしくお願いいたします。
まずは簡単なご案内をさせていただきます。
【内容について】
○○○○(具体的な記載)
お手数ですが、ご確認をいただけますと幸いです。
何卒よろしくお願い申し上げます。
敬具
「拝啓」は適切に使うと好印象
「拝啓」はフォーマルで丁寧な表現ですが、乱用はNG。適切な場面で使用すべき言葉です。
相手との関係性やメールや手紙の内容によって、使うべきシーンで適切に使えるよう意識してみてくださいね。
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並木まき
ライター、時短美容家、メンタル心理カウンセラー。企業研修や新人研修に講師として数多く携わっている。シドニー育ちの東京都出身。28歳から市川市議会議員を2期務め政治家を引退。数多くの人生相談に携わった経験や20代から見てきた魑魅魍魎(ちみもうりょう)な人間模様を活かし、Webメディアなどに執筆。