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「死せる孔明、生ける仲達を走らす」の意味と由来
「死せる孔明、生ける仲達を走らす(しせるこうめい、いけるちゅうたつをはしらす)」とは、優れた人物が、亡くなってからも生きている人々を恐れさせることのたとえです。
由来は、中国の三国時代にまで遡ります。当時の中国は、魏(ぎ)・蜀(ご)・呉(しょく)の3つの国が天下をわけていました。諸葛孔明(しょかつこうめい)は、蜀(蜀漢)の初代皇帝・劉備(りゅうび)に仕えた軍師です。
孔明は、魏の司馬仲達(しばちゅうたつ)との対戦中に、病で命を落とします。追撃をかけた仲達に対し、蜀軍は孔明が残した命令のもと、反撃の構えを示しました。
これを見て仲達は、孔明が亡くなったという知らせは、何かの策ではないのかと疑いをもちます。結局、仲達は蜀軍を攻めることなく、そのまま退陣してしまいました。
このことから、亡くなった人物の威厳が、生きる人々を恐れさせることを「死せる孔明、生ける仲達を走らす」と言うようになったといいます。
死せる孔明生ける仲達を走らす
出典:小学館 デジタル大辞泉
《「蜀志」諸葛亮伝・注から》中国の三国時代、蜀しょくの諸葛孔明しょかつこうめいが魏の司馬仲達と五丈原で対陣中に病死したため、軍をまとめて帰ろうとした蜀軍を仲達はただちに追撃したが、蜀軍は孔明の遺命に基づいて反撃の構えを示したため、仲達は孔明がまだ死んでおらず、何か策略があるのだろうと勘ぐり退却したという故事。生前の威光が死後も残っており、人々を畏怖させるたとえ。

「死せる孔明、生ける仲達を走らす」の使い方
「死せる孔明、生ける仲達を走らす」は、亡くなった人の影響が今いる人々を恐れさせているという意味で、以下のように活用できます。
・「2代目を継ぎ10年になるが、今でも父が生きていたらどうしていただろうと考えてしまうんだ」「まさに死せる孔明、生ける仲達を走らすですね」
・どれほどの努力を重ねれば、死せる孔明、生ける仲達を走らすといわれるほどの人物になれるのだろうか。
・死せる孔明、生ける仲達を走らすことを考えると、先代の教えをないがしろにすることはできない。
三国志にまつわるその他の故事やことわざ
三国時代の歴史をまとめた書物「三国志」は、「死せる孔明、生ける仲達を走らす」以外にも、さまざまな故事やことわざを生み出しました。
・白眉(はくび)
・水魚の交わり(すいぎょのまじわり)
ここからは、それぞれの意味と使用例を紹介します。

「白眉(はくび)」
「白眉」は、多数のなかで、もっとも優れている人や物のたとえです。由来は、三国志を構成する書のひとつ「蜀志」の故事にあります。
蜀の国の馬氏(ばし)には五人兄弟がおり、いずれも優秀な人物として知られていました。
なかでも、眉毛に白い毛があった馬良(ばりょう)は、抜きんでて優れていたといいます。郷里では「馬氏の五常、白眉(はくび)を最良とす」とのことわざが生まれたほど。
現代社会では以下のように、人や物を称える言葉として「白眉」を活用できます。
・今年の絵画コンクールに集まった作品はどれも秀逸だった。なかでも彼女の油絵は、白眉の出来で訪れる者の目を引いた
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「水魚の交わり(すいぎょのまじわり)」
「水魚の交わり」は、切っても切れない劉備と孔明の関係を、水と魚にたとえています。転じて、非常に親密な間柄を指す言葉です。
おもに、お互いが信頼し合い深い絆で結ばれたような関係に適しているといえます。以下のように上司や部下、友人、夫婦などの間柄を表現できることわざです。
・〇さんとは上司と部下の関係ではあるが、長年苦楽をともにし、水魚の交わりともいえる付き合いが続いている
・幼いころから本当の姉妹のように育った彼女は、わたしにとって水魚の交わりといえる存在だ
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「死せる孔明、生ける仲達を走らす」を正しく使おう
「死せる孔明、生ける仲達を走らす」は、三国志に登場する孔明と仲達にまつわることわざです。亡くなっているにもかかわらず、孔明の存在が仲達を恐れさせたことに由来しています。
三国志にまつわる故事やことわざは数多く「白眉」や「水魚の交わり」など、いずれも日々の会話で活用できます。ビジネスにおいては、新たな企画や目標が「絵に描いた餅」で終わらないような努力が求められるでしょう。
「死せる孔明、生ける仲達を走らす」を含め、それぞれの意味を正しく知り、ぜひビジネスシーンに取り入れてください。
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