「尊い」の意味とは?
本来、崇高さや高貴さを表す言葉だった「尊い」という言葉。近年、SNSや若者の間の流行り言葉として使われていることは知っていますか? 今回は、オタク用語でもある「尊い」に着目して、新しい意味や使い方、「萌え」「エモい」などの似た言葉の意味も紹介します。
本来の意味
「尊い」は本来、「崇高で近寄りがたい」「極めて価値が高い」「ありがたい」という意味。高貴で神々しい存在や、それを崇拝する人の気持ちを表します。めったにないありがたい存在として、人々の注目を集めている偉い人や神仏などがその対象です。
「尊い」の読み方は、「とうとい」と「たっとい」の2種類あり、どちらも、「たふとし」から派生しました。一方、後述する若者用語である「尊い」は、「とうとい」と読まれるのが一般的です。
若者言葉の「尊い」
元々は、高貴な人や神仏に対して使われることが一般的だった「尊い」。ですが近年では、オタクが推しのアイドルやアニメのキャラクターを最上級に賛辞する言葉として使われています。例えば、ライブイベントで推しのアイドルと会ったときに、「推しが尊い」「尊みが過ぎる」と言って感動するのはよくあるパターン。
さらにSNSでは、「尊い」がさらにパワーアップして、「仰げば尊死」というダジャレや、歴史上の人物と混合して「尊み秀吉」と呼ばれることもあるそう。「尊い」の対象もその言葉の広がりとともに増え、アイドルやキャラクター、声優、アニメやゲーム、漫画作品など多岐に渡ります。熱烈に憧れているものやキラキラと輝いて見える、神様のような存在のことを「尊い」と言うのです。
使い方を例文でチェック!
オタク用語の「尊い」は、SNSで見かけたことはあっても、実際使ったことはないという方も多いかもしれません。定番の使い方を念のためチェックしておきましょう。
1:妹はイベント会場で、推しが尊すぎると言っていた。
若者言葉の「尊い」は、「推しが尊い」と使われることが多いです。憧れのアイドルや声優を目にして、感動のあまりジーンとしているときなどに「尊すぎる…」と口にします。
2:リスペクトしている作品への尊みが深い
「尊い」は、「尊みが過ぎる」「尊みが深い」などと言ったりします。どちらも感動の度合いが非常に高い場合に使われる言葉です。「尊い」を使うことで、自分がどれだけ対象に対して夢中になっているかが伝わるでしょう。感動を表す若者言葉には、他に「エモい」や「萌え」がありますが、それよりもさらに最上級の感動を表すのが「尊い」かもしれません。
類語や言い換え表現とは?
「尊い」によく似た言葉には、同じ若者言葉の「エモい」「萌え」や、感動を表す「琴線に触れる」があります。基本的な意味をチェックしてみましょう。
1:エモい
「尊い」によく似た若者言葉が「エモい」。「エモい」は、英語の「emotional(感情的な、情緒的な)」が語源となっており、強く心を揺さぶられた瞬間や、なんとも言い表せない切ない気分になったときに使われます。
人によって使う場面や状況が異なるのも「エモい」の特徴で、これに対して使うという決まりはありません。ただ、レトロな風景を見て懐かしい気分になったときや、メロディアスな曲を聴いてセンチメンタルな気持ちに襲われたときなどに言うことが多いようです。
・ドラマのラストシーンがめっちゃエモかった。
・「この曲すごくエモくない?」と妹が聞いてきた。
2:萌え
もはや使っている人はあまり多く見られませんが、オタク言葉の代名詞といえば「萌え」でしょう。好きなメイドや美少女キャラに対して、強い情熱や愛着心を叫ぶときに発せられる言葉です。特定の何かに強い愛情がある場合は、「メガネ萌え」「メイド萌え」とも言い、「萌え要素」とも呼ばれます。
・○○は、兄が今一番夢中になっている萌えキャラだ。
・部屋の中に萌えキャラのグッズが山積みになっている。
3:琴線に触れる
「人の心を揺り動かし、深い感動を引き起こすこと」を、「琴線に触れる」と言います。まるで、琴の糸に触れて美しい音を発するように、感動が湧き上がってくる様子が伝わってきますね。「尊い」や「エモい」などの若者言葉ではありませんが、湧き上がった特別な感情を指すという点においては、意味が似ているかもしれません。
・合奏団の演奏する音楽は、まさに心の琴線に触れるような音色だった。
・彼女の何気ない仕草が心の琴線に触れた。
英語表現とは?
若者言葉の「尊い」は、日本語特有の表現なので直訳できる英語はありません。しかし、近い意味合いなら「precious」「adore」などが挙げられます。
1:precious
「precious」は、「非常に高価な」「かけがえのない」「最愛の」などの意味がある単語です。希少価値の高い作品や、最愛の人物に対して使われることが多いでしょう。「高価」と「愛情」が含まれている点において、「尊い」とよく似ていますね。
・Every hour I spend with my family is precious.(家族と過ごす全ての時間が貴重だ)
2:adore
「adore」は、「深く敬愛する、崇める」「〜が大好き」という意味を持ちます。「love」とは少し異なる意味があり、恋愛的な愛情よりも信仰心や崇拝する気持ちが強いです。
・She adored everything about the movie star.(彼女はその映画スターの全てを崇拝していた)
最後に
好きなアイドルやキャラクターに接したときに若者が口にする「尊い」という言葉。その意味や使い方は理解できましたか? 本来の「尊い」は、神仏や高貴な身分の人に対して使われることが多いので、対象となるものは異なるものの、憧れている人を見たときの心が震えるような感情にあまり違いはないのかもしれません。ユニークな若者言葉の一つとして、「尊い」も覚えてみてくださいね。
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