目次Contents
ビジネスシーンで「気にしないでください」は正しい表現?
「気にしないでください」は、どのようなニュアンスを持ち、どのような場面で適切に使えるのでしょうか。本来の意味やニュアンスから考えてみましょう。
本来の意味とニュアンス
「気にしないでください」は、相手が何かに対して恐縮していたり、気を遣っていたりする状況で、「大丈夫です」と伝えるための表現です。
ややカジュアルな響きがあるため、使う場面によっては「軽い」「馴れ馴れしい」と感じさせてしまうこともあります。口頭でのやりとりでは自然に聞こえることもありますが、メールや書面では口頭よりも慎重さが求められる場面もあるため、使う際には注意が必要です。
「気にしないでください」を使ってよい場面・避けるべき場面

言葉自体は丁寧に聞こえても、相手や状況によっては印象が大きく変わります。ここからは、実際のビジネスシーンを想定しながら、適切な使いどころと注意点を見ていきましょう。
使ってよい場面
比較的カジュアルな印象を持つこの表現は、気心の知れた関係性の中で使うと、やわらかく相手を気遣う言葉として機能します。相手の気持ちを軽くほぐしたいときや、場の空気をやわらげたいときに使うと効果的です。
1.社内の同僚との会話や口頭での気軽なやり取り
例:「昨日の確認、遅れてしまってすみません」
→「いえいえ、気にしないでください!」
気の置けない関係性のなかでは、こうしたカジュアルな表現がやり取りをスムーズにします。堅苦しさを避けたい場面にぴったりです。
2.相手の恐縮や謝罪に対して安心させたい場面
例:「ご迷惑をおかけしてしまって…」
→「どうぞ気にしないでください。こちらこそありがとうございます」
相手が恐縮している場面では、こうした一言を添えることで気持ちを軽くし、良好な関係を保つ手助けになります。社内の信頼関係を深める場面で効果的です。
避けるべき場面
一方で、以下のような場面で「気にしないでください」を使うのは注意が必要です。意図せず軽い印象を与えてしまったり、誠意が十分に伝わらないおそれがあります。
1.クライアントや目上の人との正式なやりとり
例:「先ほどの件、ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
→「気にしないでください」
外の相手に対してこの表現を用いると、「丁寧さが欠けている」「馴れ馴れしい」といった印象を与える可能性も。謝罪や配慮の意図が伝わりにくくなるため避けたほうが無難です。
2.トラブル対応や謝罪が必要な場面
例:「こちらのミスで納期が遅れてしまいました。本当に申し訳ありません」
→「気にしないでください」
先方のミスとはいえ、トラブルの内容や関係性によっては、こちらが「気にしないでください」を使うと上から目線の印象になる恐れや、責任をあいまいにしているように受け取られかねません。
相手の謝意や感謝の一言を、しっかりと受け取れるような言葉で返すのがふさわしいといえます。
「気にしないでください」の言い換え表現

ビジネスの場では、シーンや相手に応じて表現を少し丁寧に言い換えることで、より良好な関係性を築くことができます。
ビジネスにふさわしい丁寧な言い換え
「お気になさらないでください」
「どうぞご放念ください」
「ご心配には及びません」
「気にしないでください」をよりフォーマルにした表現がこれらの例です。社外や目上の相手に対しても安心して使える丁寧な言い回しなので覚えておくと、表現の幅が広がります。また、メールでは少し形式張った表現が好まれるので、「お気遣いありがとうございます。どうぞご放念くださいませ」のように感謝の言葉を添えると、さらに好印象を与えることができます。
社内向けのやわらかい言い換え表現
「大丈夫ですよ」
「問題ありません」
「お気遣いありがとうございます」
信頼関係が構築できている上司や同僚なら、このくらいの親やすい表現に言い換えてみるのもいいでしょう。「大丈夫ですよ」「気にしないでください」に、「いつも助かっています」などとプラスの言葉を添えると、より信頼関係がアップします。
「気にしないでください」は英語でどう表現する?
日本語と同様に、英語にも場面や相手に応じた「気にしないでください」の表現があります。
Don’t worry.
→ もっともカジュアルな言い回し。親しい同僚との間で使用されることが多い言葉です。
No problem. / Not at all.
→ 軽やかに受け流す印象。カジュアルなビジネスシーンでも使われます。
Please don’t trouble yourself.
→ 丁寧でややフォーマル。上司や社外とのやりとりにも適しています。
日本語ほど形式張った表現は少ないとは言え、英語でも日本語同様、相手との距離感や文脈によって表現を選び分けることが求められます。ビジネスシーンで英語を使用する人は、このあたりの言葉を覚えておくのも良いでしょう。
言葉選びで伝わる配慮と信頼。状況に合った「気遣い表現」を身につけよう
「気にしないでください」は、相手の気遣いに対するやさしい返答として便利な表現ですが、使い方を誤ると誤解や違和感を与えてしまうこともあります。
場面に応じて、「お気になさらないでください」「ご放念ください」などの丁寧な言い回しに変えたり、感謝の言葉を添えたりするだけで、相手への印象は大きく変わります。
自分らしい言葉で相手に安心や配慮を伝えられるよう、状況に応じた言葉選びを心がけていきましょう。
TOP画像/(c) Adobe Stock
コマツマヨ
WEBサイトライティングをメインに、インタビュー、コラムニスト、WEBディレクション、都内広報誌編集、文章セミナー講師など幅広く活動。