「三国一(さんごくいち)」の意味とは?
「三国一」の「三国」は、日本と中国、インドを指します。「三国一」は、そのなかでもっとも優れていることを表す言葉です。
また、祝いの小唄に登場するほか、甘酒の別名としても用いられます。まずは、それぞれの意味について簡単に見ていきましょう。
「三国」とは日本・中国・インドのこと
「三国一」という言葉は、室町時代には存在したといわれています。当時の「三国」は、日本と唐土(もろこし)、天竺(てんじく)を意味したとか。
唐土は、現在の中国のことです。天竺はインドのことで、当時はそれらが世界のすべてと考えられていたようです。
そのため「三国一」は、世界でもっとも優れているという意味をもちます。おもに新郎新婦を称える言葉として用いる機会が多い傾向にある表現です。

「三国一」は祝言の小唄の歌詞
祝言(しゅうげん)とは、祝いの言葉のことです。小唄は短い楽曲のことで、三味線をバックに歌われます。
とくに江戸末期の小唄は「江戸小唄(えどこうた)」として当時の人々に親しまれました。
祝いの席で歌う小唄の歌詞には、「三国一ぢゃ何々になりすまいたしゃんしゃん」というかたちで「三国一」という語句が登場します。
「三国一」は甘酒の別名
「三国一」が甘酒の別名として使われる理由には、富士山が関係しているようです。
浮世絵などにたびたび登場する富士山は、三国一の山として人々に崇拝されてきました。富士山にはさまざまな伝説があり、一説には大地震により地面が隆起し、一夜にしてできたとも。
甘酒もまた、米麹と水を原料に一晩ほどでできあがる飲み物です。そのため、一夜造りの甘酒の別名として「三国一」という言葉が使われています。
さんごく‐いち【三国一】
出典:小学館 デジタル大辞泉
1 日本・中国・インドの三国で最もすぐれていること。世界一。「三国一の花嫁」
「―の剛の者と言はれしぞかし」〈義経記・八〉
2 江戸初期に流行した祝言の小唄の歌詞。「三国一ぢゃ何々になりすまいたしゃんしゃん」と歌い納める。
3 《三国一の富士山が一夜でできたという伝説から、一夜造りの意で》甘酒の異称。
「三国一」の使い方
結婚式はもちろん、日常生活でも「三国一」という言葉は使用できます。おもに世界一といえるほど優れたものや人に対し、以下のように活用してください。
・今日は親友の結婚式だった。純白のドレスに身を包んだ彼女はとても美しく、新郎の母親は「三国一の花嫁を迎えられて、息子は本当に幸せ者です」と目をうるませていた
・山梨旅行で富士山を間近に眺めたが、三国一の山といわれる壮大さを改めて感じた
・担当した商品の販売数が伸び、ついに海外進出が決定した。三国一と呼ばれる日を目指し、今後も仕事に邁進したい
・お気に入りのピアニストのコンサートに出かけた。どの曲も素晴らしく、彼女の演奏は三国一だとつくづく感じた
・彼の地元には、「三国一」という名前のローカルフードがあるらしい。その名前には、富士山のように多くの人々に愛されるように、という願いが込められているそうだ
「三国一」の類語や言い換え表現
「三国一」には、以下のような類語や言い換え表現が挙げられます。
・天下一(てんかいち)
・天下無双(てんかむそう)
・世界一(せかいいち)
いずれも世界でより優れたものや、人に対して用いる言葉です。「三国一」と同様に、日常生活やビジネスシーンで活用できます。

「天下一(てんかいち)」
「天下一」は、「日本一」や「三国一」を意味する言葉です。ほかに比べるものがないほど、優れたさまを表します。
そもそも「天下」とは、全世界のこと。江戸時代には、この世を治める将軍のことを「天下様(てんかさま・でんかさま)」と呼び敬ったといいます。
また、四字熟語の「天下一品(てんかいっぴん)」も同様の意味をもちます。いずれも「三国一」と同様のニュアンスで、以下のように活用してください。
・クライアントの意向を汲みつつ、ここまで斬新なデザインに仕上げるなんて。君はまさに天下一のデザイナーだね
・いつかお気に入りのお店のケーキを味わってほしいな。パリで修行したパティシエが手がけているんだけど、天下一品の味わいだよ
「天下無双(てんかむそう)」
「無双」の「双」は、ほかと並ぶことや匹敵を意味する言葉です。「無双」とすることで、ほかに並ぶものがないほど優れていることを表します。
「天下」と組み合わせた「天下無双」は、この世に匹敵するものがないほど優れたことに対して用いる四字熟語です。
・A社の商品は、世界的なコンペティションで数々の賞を受賞したらしい。売り上げも着実に伸ばすなど、この業界で天下無双な存在になりそうだ
・上司は、優秀な技術をもち、どんなトラブルも解決する彼女を天下無双の人物だと評価した
「世界一(せかいいち)」
世界でもっとも優れた物事は「世界一」と言い表します。世界における順位が、トップであることも指す言葉です。
「三国一」も「世界一」という意味をもちますが、「世界一」の場合は三国に限らず「全世界においてもっとも優れた存在」という意味合いが強くなるといえます。
ニュースなどで見聞きする機会が多く、「三国一」に比べ使いやすい表現といえるでしょう。
・B社はヒット商品の開発を機に急激に成長し、今年度の売り上げは世界一を記録した
・我が社のサービスが世界一と呼ばれる日を目指し、今後もお客様の声に耳を傾け、問題改善に取り組んでまいります
・料理人という仕事柄これまで数々の料理を食べてきましたが、結局、母の作る料理が私にとって世界一といえるかもしれません
「三国一」は複数の意味をもつ言葉
「三国一」の「三国」とは、日本と中国、インドのことです。かつてはこれらが世界のすべてと考えられていました。
そのため「三国一」は、世界でもっとも優れたものや人を指す言葉として用いられます。また、祝言の小唄に登場したり、甘酒の別名として使われたりと、活用範囲の広い言葉です。
類語には「天下一」や「天下無双」、「世界一」などがあります。それぞれの正しい意味や活用法を知り、コミュニケーションの幅を広げていきましょう。
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