「諸々」とは?
「諸々」は、さまざまな場面で使える便利な言葉。会話なら「いろいろありましたよね」とか、「いろいろ大変らしいよ」などと言うようことを、相手に失礼ならないよう、丁寧にきちんと書面に記すとき、「この諸々」が活躍します。
「諸々」の意味と一文字の「諸」との違い
多くの、いろいろな、いくつかのなどの意味がある「諸々」。もともと漢字一文字でも、多くの、たくさんのという意味があり、これを重ねて使うことで、本当にいろいろある、多くのことがある、ということを強調する形になります。
ちなみにその一文字の「諸(しょ)」は、諸外国、諸説という風に名詞に付けるのが決まりです。「諸(もろ)」と読ませる場合は、諸手(もろて)を上げて、とか 諸手の刃(やいば)、という風に、両方のという意味を持つこともあります。
「諸々」の英語表現
「諸々」は、これとこれ、ここからここまで、などと具体的にするのでもなく、どこかあいまいな表現。そして当事者同士でしか通じなかったりするなど、日本的な言葉といえそうですが、実は、英語にもこれに似た言葉があります。
それは、various(ヴァリアス)。さまざまな、いろいろの、いくつかの、別種の、多角的な、多方面の、色とりどりの、互いに異なる、別々の、など多彩な意味があり、覚えておくと活用できそう。
日本語の「諸々」に近い使い方なら、
various things 「いろいろなこと」
for various reasons 「諸々の事情で」
for various other reasons「その他諸々」
due to various reasons「いろいろな事情により」
various opinions 「諸々の意見」
in various ways 「いろいろと」「何くれと」「あれこれと」
などでしょうか。
「諸々」の使い方を例文で紹介
お礼、依頼、承諾、お詫びや何気ない会話まで、さまざまな場面に使える「諸々」。シチュエーション別に例文を紹介します。
1:「諸々ありがとうございます」
「諸々感謝申し上げます」
お礼は、最もシンプルな諸々の使い方といえるかもしれません。感謝の対象が複数あるときに使います。たとえば、会場の手配や式典の準備などほぼすべてをこなしてくれた、など、いくつかのことが重なった場合に便利です。
「諸々のご対応をありがとうございます」「諸々お世話になりありがとうございます」という言い方もでき、「会場の手配から式典の準備まで、諸々ありがとうございます」など具体的に表現すればより感謝の気持ちが伝わるでしょう。
※過去のことであっても、関係を継続したい場合、「ありがとうございます」と現在形を使用したほうがいい場合があります。
2:「その他諸々よろしくお願い申し上げます」
何かメインとなる依頼をした上に、さらにいくつかのお願いをした場合の締めくくりの言葉として使います。
3:「諸々の件、承知いたしました」
諸々いくつかの依頼を受けたことに対して承諾する場合の使い方です。
4:「諸々の出来事によって彼は変わった」
いろいろなことが起こって彼が変わってしまった、という状況を意味します。
このように「諸々」は、名詞の上に付けて複合名詞にすることもよくあります。
5:「〇〇など諸々の事情で延期することにしました」
お断りや予定を変更する場合は、〇〇や〇〇など諸々の事情で、と具体的な理由を入れて、相手に失礼のないようにしましょう。
「諸々」はビジネスシーンでも使える?
例文をみてもわかるように、「諸々」はビジネスシーンでも頻繁に使われます。但し、いくつかのことを省略し、敬語ではないことは念頭に入れておき、場合によっては使わない配慮も必要です。
たとえば、目上の方には諸々は極力使わないほうがよいでしょう。「諸々ありがとうございます」ではなく、「〇〇〇や〇〇〇の件では大変お世話になりました。ありがとうございます」、「〇〇〇や〇〇〇ではお心遣いをいただき、本当にありがとうございます」など、具体的な内容を記します。
謝罪の文書でも、「諸々」で事柄を省略するのではなく、「〇〇〇や〇〇〇などの件では申し訳ございませんでした」、「〇〇〇や〇〇〇〇などの事情が重なり、〇〇〇〇〇しましたことをお詫びいたします」などと具体的に書きましょう。
「諸々」の言い換え表現を紹介
諸々と同じように、「さまざまなこと」を表し、ビジネスシーンで使いやすい言葉を紹介しましょう。
1:種々
「しゅじゅ」と読みます。種類や品数が多いことを意味し、たとえば「種々のプレゼントが届いた」というように使います。
ビジネスシーンでは、多面的な事柄、多種多様なもの、を表して使います。「種々の事情により中止の判断をしました」、「種々ご対応いただきましてありがとうございます」、「種々の商品をご用意しております」、などいろいろな場面で使えます。
2:諸般
「諸般(しょはん)の事情」という言い方をよく耳にしますね。「諸般」はいろいろの事柄、物事のさまざまな方面、という意味です。
たとえば、「諸般の事情により新商品の発表を延期いたします」などのように、「きちんと説明したいけれど、いろいろ複雑な事情が難しい」という状況を表す言葉でもあります。
3:数々
「数々(かずかず)は、数や量の多いことや、あれこれなどの意味があります。「数々の非礼」「数々のアイデア」「数々の思い出」「数々の業績」「数々のご配慮」「数々のお心遣い」など、これもビジネスシーンでよく使われます。
最後に
「諸々」はビジネスシーンでも幅広く使える言葉。一方で、送る側と受け取る側が、諸々の中に含まれる「さまざまなこと」を共通認識していることが大前提になります。そうでない場合や、謝罪、目上の方への文書では、諸々と省略せずに物事を具体的に伝えるなど、「諸々」は便利な分、シーンにより失礼のないよう丁寧な使い方を心掛けたいものです。
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