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「お言葉に甘えて」は、どんな言葉?
相手の申し出や厚意・お誘いを、ありがたく受けるときの謙虚な表現です。
「そのご厚意に、遠慮せずに甘えさせていただきます」という気持ちを丁寧に伝える言い回しで「では、遠慮なくいただきます」という趣旨で使われています。
「お言葉に甘えて」が使えるシーン3例

主にビジネスシーンにおいて「お言葉に甘えて」を用いるシーンをチェックしていきましょう。
♦︎軽いお誘いを受けたとき
「これ、よかったら食べてみませんか?」などの軽いお誘いを受けたときに「じゃあ、お言葉に甘えて、少しだけ…」などと、お誘いを気軽に受けるニュアンスで用います。
たとえばビジネスシーンでは、相手から「歩くと遠いので、駅まで車で送りますよ」と申し出があったときに「ありがとうございます。お言葉に甘えて、お願いできますか?」と使うとスマートです。
♦︎礼儀をわきまえつつ厚意に感謝したいとき
「会議資料は、私がまとめておきますよ」と申し出があったときに「恐縮です。それではお言葉に甘えて、お願いできますでしょうか」などと、礼儀をわきまえつつも相手の厚意に感謝をしたいときにも用います。
「お言葉に甘えて」は、ただ厚意を受け取るだけでなく礼儀として謙虚な姿勢も示したいときに使いやすいフレーズです。
♦︎目上の人に失礼のない返答をしたいとき
目上の人から「やってあげる」という趣旨の申し出があったときに、失礼のないように返答をするにあたって「お言葉に甘えて」を用います。「やってもらって当たり前」という姿勢を出すわけにはいかない場面で、相手に敬意を表す表現です。
たとえば「何かわからないことがあれば教えますよ」と言われたシーンで「ご親切にありがとうございます。それでは、お言葉に甘えてご相談させていただくことがあるかもしれません」などと用いると適切です。
「お言葉に甘えて」5つの注意点

「お言葉に甘えて」は丁寧な言葉ではあるものの、使い方を誤ると不自然で無礼な印象を与えかねません。
このフレーズを使うときに、特に意識したい5つの注意点を解説します。
♦︎相手との関係性を考慮する
あまり親しくない相手や申し出の内容が不明瞭な相手に対して使ってしまうと、かえって「図々しい」と感じさせてしまう可能性や誤解を招く場合があります。
たとえば初対面の相手や厳格な上司に対して、簡単に「お言葉に甘えて」を使ってしまうと、厚かましい言い方だと受け取られるリスクも伴うでしょう。
信頼関係が浅い相手には、より丁寧な表現である「恐縮ですが」や「ご厚意に感謝申し上げます」を用いたほうが適切です。
♦︎相手の真意を汲み取る
「お言葉に甘えて」は、相手が社交辞令で言っているのか本心から申し出ているのかを見極めて使わないと、空気を読まない人だと思われかねません。
たとえば相手が社交辞令で「また今度ご一緒にぜひ」と言ってくれたのに対して「では、お言葉に甘えてまた明日、伺いますね」などと答えてしまえば、相手を困らせてしまうことも…。
相手の申し出の真意がわからないときには「では、また機会がありましたら、ぜひ」と曖昧な答え方をしたほうが無難でしょう。
♦︎何度も「甘える」と自己中心的に見られる
一度や二度なら友好的に受け止めてもらえても、何度も繰り返すと“甘えすぎ”の印象を与えてしまいかねません。
毎回「お言葉に甘えて…」と一方だけが助けてもらってばかりの関係になってしまえば、“都合の良いときだけ頼ってくる人”とのイメージにもつながり、自己中心的な振る舞いをしていると受け取られても不思議ではないでしょう。
仕事の都合上などで何度も甘えなくてはいけない事情がある場合には「いつも甘えてばかりで恐縮です」などと、より丁寧な言葉で感謝と自制の姿勢を見せましょう。
♦︎言い方やタイミングを誤ると無礼な印象を与える
「お言葉に甘えて」は言い方やタイミング次第では軽く聞こえ、場にそぐわない言葉だと受け取られる場合もあります。
たとえばビジネスの場で真面目な話をしているときに、軽い調子で「じゃあ、お言葉に甘えて~」などと言ってしまえば、軽率な発言だと受け取られる可能性も低くありません。
目上の人には「お言葉に甘えさせていただいても、よろしいでしょうか?」など、ワンクッション置く敬語表現を用いるほうが確実です。
♦︎厚意の受け取りっぱなしにしない
相手から申し出があった事柄だったとしても「甘える」つまりありがたく受け取る行動を取る以上は、受けた厚意に対して必ずお礼を伝えるのがマナーです。
「お言葉に甘えて」とそのまま受けっぱなしではなく、「先日はお言葉に甘えてしまい、ありがとうございました」などと後日改めて丁寧にお礼を伝える行動が信頼関係を深めます。
「お言葉に甘えて」の丁寧な言い換え・類似表現

「お言葉に甘えて」には、言い換えられる表現や類似表現があります。相手との関係性や場面に応じて、使い分けていきましょう。
♦︎「それでは、遠慮なく頂戴いたします」
「お言葉に甘えて」では軽すぎると感じる相手には「それでは、遠慮なく頂戴いたします」と丁寧な返答を心がけましょう。相手の申し出や贈り物を感謝しつつ、遠慮せずに受け取るという意思表示です。
信頼関係や日頃の親密さに応じて、どちらの言葉を使うべきか判断を。迷ったときには、より丁寧な表現を選んでもいいでしょう。
♦︎「ありがたく頂戴いたします」
何かを“いただく”場面では「ありがたく頂戴いたします」という言葉で言い換えると丁寧です。相手の行為や贈り物に感謝して敬意をもって受け取る表現で、フォーマルで改まった印象を与えます。
礼儀正しく振る舞うべきシーンで特に好まれる表現ですので、目上の方からの贈り物・申し出を受けるときにも適しています。
♦︎「では、ご厚意に甘えさせていただきます」
「お言葉に甘えて」と同じような意味合いを持ちますが「ご厚意」という語を用いるので、よりフォーマルで丁寧な印象を与えます。
相手の親切・申し出・助けなどを遠慮せず受け入れるときの表現として使え、自分からお願いしたわけではないjけれど相手の厚意に対して好意的に応じるというニュアンスです。
「お言葉に甘えて」は諸刃の刃
「お言葉に甘えて」は、相手の好意をありがたく受け取る際の便利な表現です。
ただし丁寧な響きではあっても受け入れる側の態度が軽すぎたり当然のように見えたりすると、悪い印象につながるリスクも多々あります。
使う場面や相手との関係を意識して、謙虚な気持ちを持って使っていくべき「諸刃の刃」なフレーズでもあると心得ておきましょう。
TOP画像/(c)Adobe Stock

並木まき
ライター、時短美容家、メンタル心理カウンセラー。企業研修や新人研修に講師として数多く携わっている。シドニー育ちの東京都出身。28歳から市川市議会議員を2期務め政治家を引退。数多くの人生相談に携わった経験や20代から見てきた魑魅魍魎(ちみもうりょう)な人間模様を活かし、Webメディアなどに執筆。