「敵前逃亡(てきぜんとうぼう)」という言葉には、どこか重く、緊張感のある響きがあります。この言葉は、実際の戦場に限らず、日常の場面でも使われることがありますね。
この記事では、「敵前逃亡」の意味や背景を確認し、現代的な使い方や英語表現にも触れていきます。
「敵前逃亡」とは?|意味と読み方を確認
「敵前逃亡」は、「てきぜんとうぼう」と読みます。意味を辞書で確認しましょう。
てきぜん‐とうぼう〔‐タウバウ〕【敵前逃亡】
敵を目の前にして、戦わずに逃げること。
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
「敵前逃亡」は、文字通り「敵を前にして逃げること」を指す言葉です。

「敵前逃亡」の使い方を例文で確認
「敵前逃亡」という言葉は、戦争や軍事の場面に限らず、日常やビジネスシーンでも使われます。プレッシャーのかかる状況から逃げ出すような場面で使われることが多く、少し皮肉や批判を含む印象を与える表現です。
仕事の責任が重くなるとわかった途端、彼は敵前逃亡してしまった。
ここでは、重圧に直面した途端に姿を消した様子を表しています。責任回避の行動を、少し皮肉を込めて描いています。
最初に言い出したのは課長なのに、トラブルが起きたら敵前逃亡するとは残念だった。
率先して動くべき立場の人が、問題発生時に後退したことへの落胆をにじませた表現です。
このように、「敵前逃亡」は責任を果たさず逃げ出すような態度に対して、批判や失望を込めて使われることがあります。ただし、使う相手や場面によってはきつく響くこともあるため、用いる際には言葉のトーンに注意が必要です。

「敵前逃亡」の類語・言い換え表現
ここでは、「敵前逃亡」に近い意味を持つ表現を3つ紹介します。
戦意喪失
「戦意喪失」は、戦おうという意志や意気込みが失われてしまうことを指します。「敵前逃亡」のように逃げる行動に焦点を当てるのではなく、内面的な意欲の低下を表す言葉です。
尻尾を巻く
「尻尾を巻く」は、劣勢や敗北を認めて静かに退く様子を表す表現です。犬が恐れや服従を示して尾を巻くしぐさに由来しています。

遁走(とんそう)
「遁走」は、困難や危険から身をかわすようにその場を離れることを指します。
「敵前逃亡」の英語表現は?
「敵前逃亡」という表現は、軍事的な文脈で使われることが多く、英語にもいくつか対応する表現があります。それぞれの語句が持つ背景を知っておくと、場面に応じた理解につながるかもしれません。
desertion in the face of the enemy
“desertion”は「逃亡」、“in the face of the enemy”は「敵前」を意味します。これらを組み合わせて使うことで、「敵前逃亡」という意味になります。
bugout
“bugout” は、特にアメリカの軍事用語やスラングで使われる表現です。特に命令を無視しての敵前逃亡を指します。
最後に
戦うも地獄、逃げるも地獄という状況は、不意に訪れるものです。そんなとき、まずは自分を守るために「敵前逃亡」するのは大きな選択肢の一つなのかもしれません。
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