適者生存とは?
適者生存は「てきしゃせいぞん」と読み、環境に最も適した生物が生き残り、適していないものは滅びるという意味です。
ここでは、適者生存の意味や言葉の由来を解説します。
言葉の意味
適者生存とは、生物学における進化論の概念のひとつです。「環境に最も適応した個体や種が生き残りやすい」という考え方を指します。
「強いものが生き残る」というよりは、「その環境に合った特徴を持つものが生き残りやすい」という意味合いです。
適者生存の具体例として、「寒冷地では毛が長い動物が生き残りやすい」「乾燥地では水を効率よく保存できる植物が生き残る」といった内容があげられます。「環境に適応できるかどうかが生存の鍵になる」という考え方が根底にある言葉です。
てきしゃ‐せいぞん【適者生存】
出典:小学館 デジタル大辞泉
《survival of the fittest》生存競争で環境に最も適したものだけが生き残って子孫を残しうること。スペンサーの造語で、ダーウィンが「種の起源」で自然選択より的確な語であると述べた。
由来はスペンサーの生物進化論
適者生存という言葉は、イギリスの社会学者ハーバート・スペンサーが提唱した社会進化論に由来しています。英語では「survival of the fittest」と表現されます。
適者生存はビジネスや社会の競争環境など、さまざまな分野で比喩的に使われています。「適者」は「強者」という意味ではなく「環境に適応した者」という意味であり、適者生存は必ずしも力が強いものが生き残るという意味ではありません。

ダーウィンの進化論と関係はある?
イギリスの自然科学者であるチャールズ・ロバート・ダーウィンは、著書である「種の起源」の中で、「自然選択」と並んで「適者生存」という言葉を使っています。
「自然選択」とは、環境に有利な特徴を持つ個体が生存し、子孫を残すことで種が進化していくという考え方です。ダーウィンは、進化論の考え方をわかりやすく説明するため、その著作に「適者生存」という言葉を使ったと考えられています。
適者生存の使い方・例文
適者生存の使い方について、例文をみながら確認していきましょう。
・現代のビジネス環境は変化が激しく、対応できる企業だけが生き残る適者生存の世界だ
・時代が求めるサービスを提供できる企業は、適者生存の勝者になれる
・気候変動によって食物の供給が減ってくると、適応能力の高い種だけが生き残る「適者生存」の現象が起こるだろう
・デジタル技術の進化に乗り遅れた企業は次々と市場から姿を消し、「適者生存」の競争社会となっている
・新型コロナウイルスの影響で多くの業界が打撃を受けた中で、オンラインへのシフトに成功した企業は業績を伸ばしている。「適者生存」の好例といえるだろう
適者生存の類義語・言い換え表現
適者生存に類似する言葉として、次の四字熟語があげられます。
・生存競争
・自然淘汰
・優勝劣敗
・弱肉強食
適者生存と意味は似ていますが、それぞれ微妙なニュアンスの違いがあります。
ここでは、類義語の意味や例文をみていきましょう。

生存競争
生存競争(せいぞんきょうそう)とは、個体が次の世代を残すためによりよい環境に適応しようとし、生物同士で競争することです。特に、同種の個体間で競争することを指します。
ダーウィンの進化論の中心概念であり、環境に適応できない個体は自然淘汰されて子孫を残さずに滅び、これが進化の要因であるとしています。
〈例文〉
・現代の市場は企業同士の生存競争が激しく、常に新しい価値を提供しなければ取り残されてしまう
・市場で生き残るためには、いかに他社と差別化できるかが生存競争を勝ち抜く鍵になるだろう
自然淘汰
自然淘汰(しぜんとうた)とは、生存上の諸条件に適する生物は生き残り、適さない生物は自然に滅びていくという意味です。
これが転じて、長い期間の中で劣悪なものは滅び、優良なものだけが自然に生き残ることを指して使われます。「淘汰」とは、悪いものを捨て、よいものを取るという意味を持つ言葉です。
〈例文〉
・時代の変化に適応できない企業は、市場から自然淘汰されていくだろう
・自然淘汰されないためには、常に新しいイノベーションを追求していかなければならない
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優勝劣敗
優勝劣敗(ゆうしょうれっぱい)とは、環境に適した者や強い者が生き残って栄え、弱い者が滅びるという意味です。「優勝」とは優れている者が勝つことで、「劣敗」は劣っている者が負けることを指します。
ビジネスやスポーツなど、あらゆる競争の場であてはまる原理を表現する言葉です。
〈例文〉
・現代のビジネス社会はまさに優勝劣敗で、実力のない企業は市場から姿を消していく
・毎年多くの会社が設立されているが、その中で生き残るのはわずかなもので、まさしくビジネスは優勝劣敗の世界だ
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弱肉強食
弱肉強食(じゃくにくきょうしょく)とは、強い者が弱い者を思うままに滅ぼし、繁栄するという意味の言葉です。
もともと、弱い者の肉が強い者の食料になるという自然界の掟を表した言葉ですが、それが転じて、社会やビジネスの世界においても、実力差によって明暗が分かれる厳しい競争があることを表すときに使われます。
〈例文〉
・その業界は弱肉強食の世界で、革新を追求できない企業は市場から淘汰されていく
・弱肉強食の競争社会では、企業も個人も自ら成長する努力をしなければ生き残れない
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適者生存の意味を正しく理解しよう
適者生存は、環境に最も適した生物が生き残ることを意味します。これは「強いものが生き残る」という意味ではなく、環境にどれだけ適応できるかが生存の鍵となっている言葉です。
類似する言葉に「生存競争」や「自然淘汰」などいくつかの言葉がありますが、それぞれに微妙なニュアンスの違いがあります。正しく理解して、文脈に応じて適切に使い分けるようにしましょう。
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