「発条」という熟語は、あまり見かけないかもしれませんね。「はつじょう」とも読みますが、違う読み方をした方がそのもののイメージが浮かびやすいかもしれません。私たちの身近な道具や機械に関係しているものです。
まずは、この言葉の読み方と基本的な意味を確認してみましょう。
「発条」の読み方と意味|「発條」との違いも解説
「発条」という漢字は、あまり日常で目にしないかもしれませんが、実は身近な仕組みの中に使われている言葉です。まずは、読み方と意味から見ていきましょう。

「発条」の読み方と意味を確認
「発条」は、「はつじょう」の他に「ぜんまい」、「ばね」と読みます。それぞれの意味を辞書で確認しましょう。
ぜんまい【発=条/撥=条】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
弾力性に富んだ帯状などの鋼を、渦巻き状に巻いたばね。巻き締めて、そのほどけようとする力を動力として利用する。
ばね【発=条/撥=条/弾=機】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
1 鋼などの金属材料を螺旋(らせん)状に巻いたり折り曲げたりし、その弾力性を利用してエネルギーを吸収・蓄積するために用いるものの総称。スプリング。「―が弾む」
2 足腰などの弾力性。跳ねる力。「腰の―を利かせて投げる」
3 (比喩的に)行動を起こすきっかけ。「失敗を―に成長する」
「ぜんまい」と読む場合は、渦巻き状に巻かれた金属のばねを指します。時計やぜんまい仕掛けのおもちゃなど、巻いた力を徐々に解放して動力とするものに使われるイメージです。弾力のある鋼をきれいに巻くことで、その巻き戻る力を利用します。
一方で「ばね」と読む場合は、より広い意味を持ちます。螺旋(らせん)状や板状など、形や素材はさまざまですが、共通して「押せば戻る・曲げれば跳ね返る」といった弾力性を生かしてエネルギーを蓄えたり伝えたりするものを指します。機械の部品としてだけでなく、「行動のきっかけ」や「勢い」のような比喩表現としてもよく使われます。

「発條」との違いは?
「発條(※條は条の旧字)」も「発条」と同じ意味を持ちますが、現在では常用漢字としては使われにくく、古い文献や社名などに残っているケースが多い表記です。
「発条」の英語表現は?
日本語の「発条」は、英語ではどのように表現されるのでしょうか? ここでは、代表的な単語と使い方を紹介します。

spring
英語の “spring” は、「ぜんまい」や「ばね」の両方を表すことができる便利な単語です。例えば、ぜんまい式の時計を表す場合には “a spring-driven clock” という言い方が使われます。
また、ばね入りのマットレスを指すときには “a spring mattress” といった表現が一般的です。文脈によって意味が変わるため、具体的な使い方を意識するとわかりやすくなりますね。
最後に
「発条」という言葉は、日常の中ではあまり目にしない熟語かもしれません。しかし、その実態は、ぜんまいやばねといった、私たちの身のまわりに数多く存在する仕組みの一部です。表記や読み方が少し難しく感じられても、そのしくみを知ることで、見えないところで働く力に目が向くようになるのではないでしょうか。日常の動作を支える技術の言葉として、静かに息づいている表現です。
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