「木鐸」という言葉には、静かながら強い響きがあります。ただ、漢字の見た目からは意味をつかみにくいかもしれません。この記事では、「木鐸」の読み方や意味、背景にある由来、現代での使われ方まで、やさしく紐解いていきます。
「木鐸」とは? 読み方と意味をわかりやすく紹介
まず、「木鐸」の読み方と意味を確認していきましょう。
「木鐸」の読み方は?
「木鐸」は「ぼくたく」と読みます。日常で耳にする機会はあまりないかもしれませんが、知っていれば教養を感じさせるでしょう。

「木鐸」の意味とは?
「木鐸」の意味を辞書で確認しましょう。
ぼく‐たく【木×鐸】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
1 古代中国で、法令などを広く人民に示すときに振り鳴らした、木の舌のついている大きな鈴。
2 《「論語」八佾(はちいつ)から》世の人を教え導く人。社会の指導者。「社会の―」
「木鐸」とは、古代中国で人々に法令などを伝えるために振り鳴らした木の舌のついている鈴を指します。そこから転じて、「社会に正しい道を知らせる役割」を持つ人や存在をたとえる言葉として使われるようになりました。
参考:『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)
「社会の木鐸」とは? 現代での使われ方を解説
「社会の木鐸」という表現には、どのような意味があり、どのような場面で使われるのでしょうか? 整理していきましょう。
「社会の木鐸」の意味とは?
「社会の木鐸」とは、世の中を正しい方向へ導く役割を担う人や組織を指します。特に、新聞記者や報道機関など、公共性の高い情報を発信する存在をたとえて使われることが多い言葉です。
「社会の木鐸」の使い方を例文で紹介
例文:「新聞は社会の木鐸たれ、と教えられた」
この例文では、報道機関が単なる情報の伝達者ではなく、社会に対して責任を持ち、正義や公共の利益にかなう報道を心がけるべきだという姿勢が込められています。

「木鐸」の類語・言い換え表現を紹介
同じような意味を持つ言葉でも、少し違う表現を選ぶことで、伝えたいニュアンスに幅が生まれます。ここでは、「木鐸」と近い感覚を持つ言葉を紹介していきます。
鐘(かね)
「鐘」は、金属製の楽器で、打ち鳴らして音を響かせるためのものです。儀式や日常の中で、時刻を知らせたり、注意を促したりする役割を果たしてきました。広く響く音によって、人々に何かを伝えるという点で、「木鐸」と似た象徴性を持っています。
また、「警鐘(けいしょう)」という言葉では、危険を知らせ、注意を促す意味でも使われていますよ。
指導者
「指導者」とは、学問や技術などについて助言や導きを行う人、あるいは国家や組織を率いる立場にある人を指します。正しい方向へ導くという意味で、「社会を啓発する存在」としての「木鐸」と通じる役割を持つ存在といえるでしょう。
「木鐸」を英語でどう表す?
日本語独特の言葉も、英語に置き換えてみるとまた違ったニュアンスが見えてくることがあります。ここでは、「木鐸」に近い英語表現を紹介していきましょう。

a metal bell with a wooden striker
直訳に近い形で“a metal bell with a wooden striker”と表現することができます。これは「木の棒で打ち鳴らす金属製の鐘」を意味し、「木鐸」が本来持っていた物理的な姿、すなわち人々に知らせを伝えるために打ち鳴らす道具としての側面を表しています。
a leader
もうひとつ、「木鐸」が象徴する「社会を導く存在」という意味に焦点を当てるなら、“a leader”という表現が近いでしょう。
リーダーとは、人々を導き、正しい方向へ促す役割を担う存在です。「木鐸」が持つ「社会に呼びかけ、教え導く」という比喩的な意味合いにぴったり重なる表現だといえます。
参考:『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)
最後に
「木鐸」という言葉には、音を鳴らす道具という以上に、人々に大切なことを伝え、導こうとする願いが込められています。社会に呼びかけ、よりよい方向へと促す役割を象徴するこの言葉を知ることで、日常の中での伝えること、導くことの意味を、改めて考えてみたくなるかもしれません。
静かに響く木鐸の音のように、自分なりの想いを大切に伝えていきたいですね。
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