傀儡とは? 読み方による意味の違い
傀儡とは、操り人形のことです。また、操り人形のように、自分の意志や主義を表さず、他人の言いなりに動いて利用されている者を指すこともあります。
傀儡は「かいらい」もしくは「くぐつ」と読みますが、読み方によって少し意味が変わることもあります。読み方別の意味や使い方を見ていきましょう。
読み方1. かいらい
「かいらい」と読むときは、操り人形や、操り人形のように言いなりに動いて利用される者を意味します。
- 小さな箱の中で傀儡(かいらい)が踊っていた
- 彼女は彼の傀儡(かいらい)だ。まったく自分の意思というものがない
- 今から振り返ってみると、幼い頃、わたしは親の傀儡(かいらい)だったのかもしれない
傀儡に、「国家」や「政治」「政権」といった言葉が続くときは、「かいらい」と読むことが一般的です。
かい‐らい
出典:小学館 デジタル大辞泉
1 あやつり人形。くぐつ。でく。
2 自分の意志や主義を表さず、他人の言いなりに動いて利用されている者。でくの坊。
読み方2. くぐつ
「くぐつ」と読むときも、操り人形を意味します。しかし、操り人形のように言いなりになる人を指して「くぐつ」と表現することはあまりありません。
また、平安時代以降、歌に合わせて舞わせる操り人形を操るなどの芸を見せながら、各地を漂泊した芸人のことも「くぐつ」といいます。傀儡の中には寺社に仕え、芸を見せながら布教に従事する者もいたようです。
芸を見せながら諸国を回る人々の中には、遊女として働いた者もいました。そこから遊女のことも「くぐつ」や「くぐつめ(傀儡女)」と呼ぶことがあったようです。
くぐつ
出典:小学館 デジタル大辞泉
1 歌などに合わせて舞わせる操り人形。でく。かいらい。
2 平安時代以降、1を操ったりして各地を漂泊した芸人。のち、一部は寺社に仕え、布教に従事した。傀儡回し。傀儡師。
3 《傀儡回しの女たちが売春もしたところから》舞妓や遊女。遊び女 (め) 。傀儡女 (くぐつめ) 。
傀儡を使った言葉
傀儡(かいらい、くぐつ)を使った言葉としては、次のものが挙げられます。
- 傀儡師
- 傀儡国家
- 傀儡政権
それぞれの使い方や読み方について見ていきましょう。

傀儡師
傀儡師を「かいらいし」と読むときは、操り人形などを使った芸を見せながら諸国を回った漂泊芸人を指します。
とくに江戸時代、首に人形の箱をかけて、その上で人形を操った芸人を指して「かいらいし」と呼びました。また、「傀儡(くぐつ)回し」や「人形使い」と呼ぶこともあります。
また、歌舞伎の舞踊を「かいらいし」と表現することも。もともと傀儡師の風俗であったものを舞踊に取り入れたことに由来し、長唄や清元節、河東節などに現在でも残っているようです。
また、陰にいて人を操る者を「かいらいし」と呼ぶことがあります。策士や、黒幕といった言葉とも置き換えられます。
- 彼一人でこのプランを立てたとは考えにくい。誰か傀儡師がいるようだ
- 彼女は会長職を引退した後も傀儡師として裏で糸を引いている
- 誰が傀儡師かはわからないけれど、誰かいるのは間違いない
傀儡師は「くぐつし」と読むこともあります。この場合は、操り人形を操るなどの芸を見せて、各地を漂泊した芸人を指すことが一般的です。
かいらい‐し
出典:小学館 デジタル大辞泉
1 人形を使って諸国を回った漂泊芸人。特に江戸時代、首に人形の箱を掛け、その上で人形を操った門付け芸人をいう。傀儡 (くぐつ) 回し。人形つかい。《季 新年》
2 歌舞伎舞踊。傀儡師の風俗を取り入れたもので、河東節・長唄・富本節・清元節などにある。
3 陰にいて人を操る者。策士。黒幕。
傀儡国家
傀儡国家(かいらいこっか)とは、別の国や団体などによって事実上支配されている国家のことです。
国家は本来、自国民の利益のために運営されますが、別の国や団体が傀儡師として君臨する場合はまるで操り人形のように言いなりになり、自国の利益を後回しにすることも。
また、傀儡師は通常、陰で操りますが、傀儡国家の傀儡師は表立って他国の政治に口を出すことも珍しくないようです。
傀儡政権
傀儡政権(かいらいせいけん)とは、形式的には独立しているものの、実質的には他国によって操られている政権のこと。政権が変わってから傀儡師の存在を強く認識するようになった場合は、傀儡国家というよりは傀儡政権と表現する方が適しているといえるかもしれません。
- 首相が変わってから、A国の言いなりになっているように思える。A国の傀儡政権と言っても言い過ぎではないだろう
- 傀儡政権が嫌なら、国力を強化する必要がある
- 世界を見渡せば、傀儡政権は珍しいことではなさそうだ
かいらい‐せいけん
出典:小学館 デジタル大辞泉
形式的には独立しているが、実質的には他国によって操られている政権。
傀儡と似た意味の言葉
傀儡と同じく、自分の意思というよりは他人に操られている様子、あるいは他人の意見をそのまま受け入れる様子を示す言葉としては、次のものが挙げられます。
- 言いなり
- 唯唯諾諾
- 人任せ
それぞれのニュアンスの違いや使い方を、例文を通して紹介します。

言いなり
言いなり(言い成り)とは、言うとおりや言うがままのことです。言われるとおりに行動し、言うがままを受け入れてしまうときは、「言いなりになっている」と表現できます。
- 彼女は彼の言いなりだ。彼女が幸せならよいが、あまり幸せそうではないのが気にかかる
- 子どもの言いなりになる親にはなりたくないと思っていたが、実際に子どもの親になると、かわいくてつい何でも受け入れてしまう
- あなたには自分がないの? 先輩の言いなりになっているように見えるよ
唯唯諾諾
唯唯諾諾(唯々諾々、いいだくだく)とは、少しも逆らわずに他人の言いなりになる様子のことです。「唯唯」とは「はい、はい」という返事のこと、「諾諾」とは「そうです、そうです」と承諾する様子のことを指します。
唯唯諾諾は素直な様子というよりは、自分よりも上の立場の人をおもねっている様子を表現する傾向にある言葉です。次のように使います。
- 彼らは誰一人として部長に意見を述べず、唯唯諾諾に従っている
- 唯唯諾諾として命令に服している様子は、見ていて気持ちのよいものではない
- わたしの部下は人前では唯唯諾諾としているが、本心ではどう思っているのかわからない
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人任せ
人任せ(ひとまかせ)とは、他人に任せきりにすることです。「言いなり」や「唯唯諾諾」は相手に言われたことに従う様子を指しますが、人任せは自分からあえて任せる様子を指します。
- 彼女は何でも人任せで、自分でする気はないようだ
- 人任せにしないで、自分たちで解決してください
- 人任せにするのもひとつの才能かもしれない
読み方による意味の違いを確認しておこう
傀儡は、読み方によって意味が異なることもある言葉です。
読み方によらず操り人形の意味を持ちますが、「かいらい」と読むときには「言いなりになって利用される者」の意味があり、「くぐつ」には「芸を見せながら諸国を回る芸人」の意味があります。意味の違いを確認し、状況に応じて使い分けましょう。
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