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LIFESTYLE

2025.11.16

【中村莟玉さんインタビュー】|新しい環境に身を置くことで見えてきた景色

歌舞伎界に新風を吹き込む若手として注目の中村莟玉(かんぎょく)さん。2024年2月より歌舞伎以外にも、活動の幅を大きく広げています。そんな莟玉さんに、念願だった大河ドラマへの出演について、そして毎年恒例の「新春浅草歌舞伎」への意気込みについて伺いました。

20代は自分中心でいることができたけれど、
今はその先に進まなければという使命感が芽生えた

江戸時代中期の文化興隆期を舞台に、江戸のメディア王・蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう/通称:蔦重)の波乱に満ちた生涯を描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(以下、『べらぼう』。莟玉さんは物語の中で、西村屋に養子に入る万次郎を演じ、蔦重のライバル的存在という重要な役どころで出演中。また、お正月には若手歌舞伎俳優の登竜門的な公演「新春浅草歌舞伎」も控えています。出演作が目白押しの莟玉さんに仕事への向き合い方から歌舞伎の楽しみ方まで伺いました。

——『べらぼう』もいよいよ佳境に入りましたが、鱗形屋(うろこがたや)の次男で西村屋に養子入りし、二代目となる万次郎役として出演されています。オファーが来たときのお気持ちはいかがでしたか?

莟玉さん(以下、敬称略):子供のときから好きだった大河ドラマに出演できるなんて光栄でした。市川團十郎兄さんが新之助のお名前時代に出演された『武蔵 MUSASHI』は欠かさず観ていましたし、歌舞伎界のスターをテレビで観られてうれしかった記憶です。そんな自分が実際に歌舞伎役者になって、こうして大河ドラマに出演させていただけるなんて、なんだか不思議な気持ちです。

——それは感慨深いですね! 莟玉さんは2歳から歌舞伎がお好きだったとか。

莟玉:歌舞伎が好きだった影響からか浮世絵も大好きでした。僕が演じる万次郎は、出版業を通じて江戸の文化を盛り上げようとする人物ですが、浮世絵師の喜多川歌麿(きたがわうたまろ)に魅せられ歌麿オタクという一面ももっていて、親近感がわきます。僕は大学時代に近世文学が専門だったのですが、黄表紙とか合巻(江戸時代後期の大衆向け娯楽読本)を学んでいたので「やっておいて良かった〜!」と思いました(笑)。ドラマの第34回に登場した『画本虫撰(えほんむしえらみ)』(宿屋飯盛/撰・喜多川歌麿/画)は、まさに大学の授業で学んだもので。ぜひ、役に生かしていけたらと思っています。

——ご自身と重なる部分もあったのですね。万次郎を演じる際には、役に対してどのような取り組みをされましたか?

莟玉:万次郎は養父や実父のように、自分も出版界でいい作品を生み出せる人間になりたいと願う男です。業界のトップランナーである蔦重を意識しつつも、同世代の仲間と共に熱い思いで仕事に取り組んでいきます。好奇心も旺盛でガッツもあって、自分から湧き上がってくるアイディアをぶつけたいという欲も強い。演出の方とも万次郎のキャラクターについてそう話し合っていました。あとは、江戸の老舗地本問屋として影響力のある鱗形屋の生まれでもあるので、どこか若旦那感というか〝ぼっちゃん感〟も残してほしいというリクエストも意識して取り組みました。万次郎が自分の〝推し〟である歌麿と初めて対面するシーンでは、憧れの人に会えて怖気づくというより、「こういうのもやってましたよね?」「あのときのあれがめっちゃ良いと思ったんです!」とオタク感丸出しで挑みました。つい前のめりになる一面は歌舞伎オタクの自分とも重なって(笑)。なんとかして歌麿を口説き落としたいという〝本気度〟を、熱量たっぷりに伝えるところは共鳴しながら演じることができました。

——映像と舞台ではどんな違いを感じられましたか?

莟玉:基本的に歌舞伎役者はひとつひとつの動きが大きい〝デカ〟モーションなので、その感覚でドラマの撮影に挑むと画角から顔が外れてしまったりして(笑)。その辺の違いを意識しながらお芝居をすることが新鮮でしたし、勉強になりました。

——『べらぼう』に出演することでより多くの方にアプローチできますし、映画『国宝』のヒットもあってOggi世代の読者も歌舞伎に興味をもつ人が増えているようです。来年のお正月には「新春浅草歌舞伎」に出演されますね。

莟玉:ぜひ歌舞伎に興味をもっていただきたいです! 「新春浅草歌舞伎」は若手の歌舞伎役者の登竜門のような公演で、新メンバーに交代して2年目になります。何事も2年目って難しくて、1年目にお越しくださった方に今回も観劇したいと思っていただくためには何をしたら良いのかみんなで考えています。演目は、せっかくのお正月公演ですし、華やかな気持ちで楽しんでいただけるものだと良いなと思っていたので、「男女道成寺」と「藤娘」をとお話しいただいたときはうれしかったです。奇しくも映画『国宝』にも登場する演目ですが、今このタイミングでやることに意味があるし、僕自身がこの年齢で勉強しておくことにも意義のある演目だと思っていて。映画をご覧になった方にも楽しんでいただけるかなと思います。

——Oggi読者に歌舞伎の楽しみ方をアドバイスいただきたいです。

莟玉:皆さんがハードルに感じる理由のひとつに「内容がわからない」ことがあると思うんです。でも、実は内容がわからなくても楽しめるのが歌舞伎。「何を話しているのかわからなかったけれど綺麗だった」という楽しみ方で全然OKなんです。なぜかと言うと、僕自身は2歳から歌舞伎の虜になったのですが、2歳ってそもそも日本語もままならないですよね。それなのに観て楽しいと思えた。ということは、ある種、歌舞伎ってノンバーバル(非言語)な部分があるのかなあって。だからこそ海外の方にも楽しんでいただけるのかなと思いますし。言葉じゃなくても伝わるもので感動できたり、日本人であればなおさら感性で共鳴する部分がきっとあると思います。「観てみようかな」と思ったときが絶好の機会なので、この記事を読んで「よっこいしょ」と腰を上げていただけたらうれしいですね。「新春浅草歌舞伎」は歌舞伎座などの公演よりお手ごろなチケット代でご覧いただけるので、ぜひ!

——今はなんでも家の中で楽しめる時代ですけれど、観劇は能動的な活動ですよね。最初の一歩を踏み出せたら世界が開けそうです!

莟玉:江戸時代の歌舞伎って今の推し活と重なる部分も多いんです。今だとアイドルを応援するときに〝推し〟の顔写真入りのうちわを持つじゃないですか。あれは江戸時代に始まったと言われているそうでで、当時は写真がないから浮世絵だったんですね。おひねりとかも今でいう投げ銭と一緒。お気に入りの役者を見つけていただくのもいいかと!

——20代最後の歳ですが、振り返ってみていかがでしたか?

莟玉:あっという間でした。生涯、歌舞伎役者として生きていくことは心に決めていたのですが、20代の最初は将来への不安がたくさんありました。いざ師匠の梅玉へ養子入りが決まった際も、名跡を継ぐことになるプレッシャーに負けそうになったりして…。そんな中、コロナ禍で舞台に出ることがままならない状況になってしまいました。そこで初めて僕たちが自分の腕を磨くことだけに集中できていたのは、先輩たちが築き上げてくれたものがあったからこそで、当たり前ではなかったことに気づかされて。劇場にお客様を呼び続けるためには、指をくわえて見ているだけではダメだった。自分のことばかり考えていればよかったのが20代前半までで、莟玉になってからはその先に進まなければならないと思い至って。そうした経緯もあって、活動の場を広げることを決意しました。

——環境が大きく変わったことでどんな刺激がありましたか?

莟玉:舞台『応天の門』(’24年12月)に出演した際、自分の腕一本で勝負されている俳優さんたちを目の当たりにして圧倒されました。自分は歌舞伎という籠を用意してもらって、その中で一生懸命に役を演じさせてもらっている感覚があって。そうした枠がない大海原で「どうぞ自由に泳いで」と言われたとき、ご自身でやりたい事と実際につかみとる仕事をリンクさせていくのって、すごく難しいことだろうなと思わされました。主演を務めていた佐藤流司さんは同世代ですが、チャンスを掴み続けるガッツみたいなものをすごく感じて。そういう方達と一緒に舞台をつくる経験ができたことは、自分の中でとても大きな経験でした。

——ひとつギアが上がった感じですね。

莟玉:そうですね。演劇をやる人間として、僕に必要な学びをいただくことができた場所でした。それに、自分も歌舞伎役者として負けたくないという気持ちが芽生えて、精神的に鍛えられた期間でもありました。

——お忙しい時期だと思いますが、お時間があるときはどんなことをしているのですか?

莟玉:家でまったりしていることが多いです。あ、でもこの間、急に「富士山を見ながら温泉に入りたい」と思い立って、休演日にレンタカーで富士山まで行きました。ところが富士山に近づくにつれてどんどん雲行きが怪しくなって、到着したらもう霧の中にいるみたいで、富士山はどこ…?という状況に。温泉に入った後にちょこっと霧が晴れて、少しだけ富士山も拝めたので、一応目的は果たせました。家でかわいいパンダの動画を見るのがいちばんかもしれません(笑)。一瞬で時間が溶けます♡

大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』

大河ドラマ「べらぼう」の劇中写真
(C)NHK

放送日
NHK総合にて、毎週日曜20:00より放送中。

ストーリー
主人公・蔦屋重三郎(横浜流星)こと蔦重は、吉原の貸本屋から始まり、喜多川歌麿や東洲斎写楽(とうしゅうさいしゃらく)、山東京伝(さんとうきょうでん)といった浮世絵師や作家ら多くの才能を見出し、江戸のメディア王として活躍。吉原の女郎たちや出版界の仲間たちと交流しながら、時代の変化や幕府の政治情勢にも巻き込まれながら、波乱万丈な蔦重の生涯を描く。莟玉さんは第42回から万次郎役で出演中です!

公式HP 

新春浅草歌舞伎

新春浅草歌舞伎のポスター画像

公演概要
期間:2026年1月2日(金)~26日(月)第1部/11:00~、第2部/15:00~
11月22日(土)チケット発売予定
※18日(日)第2部は「着物で歌舞伎」です。皆様、お着物で観劇ください。
会場:浅草公会堂
主催:松竹

キャスト:中村橋之助 / 市川男寅 / 中村莟玉 / 市川染五郎 / 尾上左近 / 中村鶴松

公演詳細 https://www.kabuki-bito.jp/theaters/other/play/951

Profile
1996年9月12日、東京都生まれ。幼少期から歌舞伎に親しみ、伝統的な歌舞伎家系ではないながらも7歳から人間国宝・中村梅玉(ばいぎょく)の楽屋に通い始める。’06年には梅玉の部屋子となり「中村梅丸(うめまる)」と名乗る。’19年に人間国宝・歌舞伎俳優「中村梅玉(ばいぎょく)」の養子となる。凛々しい立役も美しき女方もこなす、平成生まれの次世代歌舞伎俳優として期待されている。蕎麦とパンダが大好き。

撮影/田中 瞳 構成/宮田典子

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