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「稀によくある」の意味とは?

「稀(まれ)によくある」は、直訳すると「めったにないのによくある」という意味。つまり、文法的には矛盾しています。
ところがこの矛盾こそがポイントで「本来は珍しいはずなのに、なぜかよく起きる」「そんなこと、あるある!」というニュアンスを、皮肉やユーモアを込めて表現する言葉として定着してきた経緯があります。
矛盾しているようで、むしろ“ちょうどいい”表現として重宝する言い回しにもなっています。
♦︎「稀によくある」の使い方・例文をチェック!
「稀によくある」は、X(旧Twitter)やLINEなどのSNSでカジュアルに使われるのが一般的です。
自虐ネタや共感を呼ぶ投稿で多く使われています。
例文:
「ダイエットを始めた翌日に会社でもらうお菓子、稀によくある」
「『もうLINEしない』って言ったのに3日後に送ってる自分…、稀によくある」
自分にツッコみを入れるような軽いノリの話題に使われやすい実態があります。
「稀によくある」が愛されている理由

「によくある」は砕けたネット表現なので、ビジネスメールや上司への報告では不向きな表現です。
使える場が限定されているにもかかわらず、このフレーズが愛されている理由を解説します。
♦︎矛盾の中に共感があるから
「珍しいけど、よくある」といった“あるある感”が絶妙に表現されている言葉なので、読んだ人の「わかる!」を引き出しやすい実態に。
日本語の文法としては誤っていても、微妙なニュアンスが届きやすい表現になっています。
♦︎自虐をユーモアで伝えられるから
落ち込むような出来事でも「稀によくある」と添えると、軽く笑いに変えることができるところも愛されている理由。
日常の“ちょっとした失敗”を、否定しつつもある意味で肯定的に受け止める言葉としても使いやすいのでしょう。
♦︎ネット文化との親和性が高いから
「稀によくある」はXやTikTokなどで広まって、ミーム的に定着しました。
ちょっとしたユーモアを交えた投稿に使いやすくフォロワーとの距離が近くなる効果も期待できることから、今では多くの人が使うようになっています。
これはNG!「稀によくある」の注意点

「稀によくある」はネットスラングとして面白い表現ですが、使い方を間違えると誤解や印象悪化につながります。
職場やオフィシャルな人間関係で使う場合に、気をつけるべきポイントを解説します。
♦︎フォーマルな場面では絶対に使わない
ビジネスメールや上司への報告、公式文書などで「稀によくある」を使うのは、絶対に避けましょう。
ユーモアやネットスラングを含むため、真面目な文章には馴染みません。
そもそも矛盾した表現であることから意味も伝わりにくく、ふざけていると誤解されるリスクが高いでしょう。
♦︎相手が理解できる場面でのみ使う
「稀によくある」の本質は、矛盾を楽しむユーモアです。
ところが相手がその面白さを理解をしていないと「意味不明」「誤った日本語」などと真面目に受け止められてしまう可能性も低くありません。
親しい友人との関係やSNSでは一般的な言葉だったとしても、初対面の相手や上司、目上の人にはNGと心得たほうが賢明です。
♦︎ネガティブな状況で使いすぎない
「稀によくある」は言葉自体が軽いので、ライトな失敗や“あるある”に使うのは許容されていても、深刻な話や人を傷つける話では不適切。
「ネイルした翌日に割れるの、稀によくある」ならばユーモアが受け入れられても「プロジェクトが失敗したの、稀によくある」では笑えず不謹慎に感じさせることも。
軽やかな日常ネタや自虐ネタに限定したほうが無難です。
ビジネスシーンで「稀によくある」を使うなら?

基本的に、ビジネスシーンでは「稀によくある」を使うべきではありません。
しかし極めて限定的ながらも、ビジネス上の人間関係で使える場面を解説します。
♦︎カジュアルな社内コミュニケーションなら許容される可能性がある
親しいチーム内のチャットや雑談のメールであれば、軽いユーモアとして使える可能性もあります。
日頃から軽口をたたきあう仲の同僚ならば、「会議の直前に追加資料が来るの、稀によくある」といった使い方で、“珍しいけど意外と起こる現象”を共感してもらいやすいかもしれません。
ただし、外部の関係者には念のため使わないほうがいいでしょう。
「稀によくある」ビジネスシーンでの好ましい言い換え

「稀によくある」を日常的に用いていると、ビジネスシーンで使うべき正しい表現を忘れてしまうことも…!?
正式な文書でも使える、正しい言い方(言い換え方)を解説します。
♦︎ビジネス上のフォーマルな場面での言い方
ビジネス文書や上司への報告では、矛盾表現を避けつつ正確に伝える表現が求められます。
例文:
「珍しいケースですが、発生することがあります」
「頻度は低いのですが、実際に見られる現象です」
「例外的に発生する場合があります」
♦︎社内でのカジュアルな場面での言い方
同僚との会話や雑談の場では、軽いユーモアや共感を交えた表現でも許容されます。
例文:
「珍しいけど、たまに起こる」
「予想外に起きることがある」
「めったにないけど、あるよね」
♦︎日常生活での言い方(言い換え方)
友達や家族との会話ならば、柔らかい表現や自虐ネタにユーモアや共感を重視した表現も使えます。
例文:
「珍しいのに、なぜか起こるんだよね」
「あるあるネタ!」
「やっぱり起きるんだよね〜」
「稀によくある」は、“余裕のあるユーモア”の言葉
「稀によくある」は矛盾を楽しむユーモア表現であって、文法的に正しい日本語ではありません。
だからこそ、“力の抜けた大人の余裕”にも通じる言葉として会話を盛り上げる役割ももっています。
失敗をしても「まあ、稀によくあるよね」と笑って受け流せれば、仕事も人間関係も少し軽やかに進められるのかもしれません。
TOP画像/(c)Adobe Stock

並木まき
ライター、時短美容家、メンタル心理カウンセラー。企業研修や新人研修に講師として数多く携わっている。シドニー育ちの東京都出身。28歳から市川市議会議員を2期務め政治家を引退。数多くの人生相談に携わった経験や20代から見てきた魑魅魍魎(ちみもうりょう)な人間模様を活かし、Webメディアなどに執筆。



