「嚆矢(こうし)」という言葉には、どこか重みのある響きがあります。書籍やニュースの中で見かけることがありますが、「意味や使い方はわからない…」という人は多いのではないでしょうか?
この記事では、「嚆矢」の意味や語源、使い方や関連表現まで、整理しながら紹介します。
「嚆矢」とは? 意味・使い方・語源を解説
まずは、「嚆矢」の意味や成り立ちについて確認していきます。

「嚆矢」の読み方と意味
「嚆矢」は「こうし」と読みます。意味を辞書で確認しましょう。
こう‐し〔カウ‐〕【×嚆矢】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
1 《「嚆」は叫び呼ぶ意》かぶら矢。
2 《昔、中国で戦いを始めるとき、敵陣に向かって1を射たところから》物事のはじまり。最初。「二葉亭の『浮雲』をもって日本近代小説の―とする」
「嚆矢」は、「物事の始まり」や「最初」という意味で使われています。
「嚆矢」の由来
「嚆矢」は、元々やじりに鏑(かぶら)を用いた、射ると音を立てる矢のことを指していました。古代中国では、戦いの始まりにこの矢を敵陣に向かって放ち、開戦の合図としたといわれています。
そこから転じて、「物事の始まり」や「最初」を意味するようになったようです。
ちなみに「嚆」という字には「さけびよぶ」という意味があります。
「嚆矢」の使い方を例文で確認
意味がわかっても、実際にどんな場面で使えるのかがわからないと、言葉として身につかないですよね。ここでは、「嚆矢」を使った例文を紹介します。「嚆矢」の使い方を具体的にイメージしてみてください。
「この作品は、のちの大ヒット作の嚆矢となった」
この例文では、ある作品が後に続く人気作品群の先駆けとなったことを示しています。「嚆矢となる」という表現は、注目すべき最初の存在をあらわすときに使われることが多いです。

「彼の行動は、変革の嚆矢として語られている」
この例文では、彼の行動が時代の変化や組織改革のはじまりとなったことを表しています。
「嚆矢濫觴」とは? 「嚆矢」の入った四字熟語を確認
「嚆矢濫觴(こうしらんしょう)」という四字熟語をご存じですか? ここでは、「嚆矢濫觴」の意味を確認していきましょう。
「濫觴」とはどういう意味?
まずは「嚆矢濫觴」に含まれる「濫觴(らんしょう)」の意味から確認しましょう。
「濫觴」という言葉は、もともと中国の古典『荀子(じゅんし)』にみえる孔子の言葉に由来するといわれています。
らん‐しょう〔‐シヤウ〕【濫×觴】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
《揚子江のような大河も源は觴(さかずき)を濫(うか)べるほどの細流にすぎないという「荀子」子道にみえる孔子の言葉から》物事の起こり。始まり。起源。「私(わたくし)小説の―と目される作品」
「濫」は溢れること、「觴」はさかずきを意味します。大きな川のはじまりも、最初はさかずきに溢れるほどのわずかな水であるという意味から転じて「物事のはじまり」や「起源」を指します。

「嚆矢濫觴」の意味
「嚆矢濫觴」は、「嚆矢」と「濫觴」、いずれも“はじまり”を意味する言葉を重ねた四字熟語です。意味を重ねることで“物事のはじまり”をより強調する表現となっています。
「嚆矢」の英語表現は?
ここでは、「嚆矢」に近い意味を持つ英語表現を紹介します。
the beginning
“the beginning” は、ある出来事や物語の始まりを表す表現として、広く使われています。「嚆矢」が持つ「物事のはじまり」という意味に、比較的近いニュアンスを伝える言葉です。
例文:This novel marked the beginning of a new literary trend.
(この小説は、新たな文学潮流の嚆矢となった。)
最後に
「嚆矢」という言葉にふれることで、始まりの瞬間に込められた力や象徴的な意味を少し感じられたかもしれません。ふだんはあまり使わない表現かもしれませんが、背景を知ることで言葉の印象が変わることもあります。何かの第一歩にふさわしい場面が訪れたとき、「嚆矢」という響きを思い出してみるのもいいかもしれませんね。
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